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妖精少女物語  作者: 赤城ハル
3章

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24/40

送り出し

 夜、晩御飯を食べた後で母から、


「実はお父さんが魔物調査に参加することになったの」

「魔物調査?」


 父は頷き、


「ここ最近魔物が活発化しているらしくてな。第3ラインまで調査に行くことになったんだ」


 この前、チノが魔物の活発化と言っていたのは本当だったのか。


「第3ライン?」

「北はテーフォン山脈、東はトロネ草原、南はベスチ高原、西はフェルダン川が第3ラインなんだ」

「遠くない?」


 どれもがここから遠く、地図の端にあるところです。そこに辿り着くまでいくつもの町や森を越えなくてはいけません。


「第3だからな」

「第3ってことは第1とかあるの?」

「もちろん。第1は……そうだな、今度ミウ達が遠足で行くトラバス山あたりだな」

「ええ! そこが第1なの? それじゃあ、私達の遠足って危険なの?」

「あはは。第3ラインで魔物が少ないんだから第1ラインは大丈夫だよ」

「ふうん。で、その第3ラインに魔物が沢山いるかもしれないから調査しに行くってこと?」

「そうだよ」

「でも魔物って時たま強いのが遠くのとこにいるって聞くけど」


 ユーリヤの森やその周辺にはいませんが遠い地域にはいると聞きます。


「そういうのははぐれって言うんだ。問題なのは巣を作ったり縄張りをもった魔物なんだよ」

「もし第3ラインでそういう魔物がいたら倒すの?」

「倒すわけないでしょ」


 と口を挟んだのは母でした。


「調査なんだから。ねえ?」


 母は父に肯定を求めます。


「ん、んん。そう、だね」


 父は歯切れ悪く答えます。

 それに母は険しい顔をして、


「あなた分かってるわよね? 調査よ。調査。駆除とか考えたら駄目だからね」

「分かってるって。俺が戦うわけないだろ」

「魔物が活発化した原因って何?」

「それも調べるのさ」

「どうせ誰かが人間界に向かったのでしょ?」


 母がやれやれという感じで言います。


「人間界に行くと魔物が活発化するの?」

「人間界に繋がる入口付近には魔物の巣が多いんだ」


 父が肩を竦めて答える。


「どうして魔物の巣が多いの?」

「むやみに人間界に行けないようにしたら、自然とその周辺に魔物が増えてしまったのさ」

「人間界の入口は第3ラインより向こうなの?」

「そうだ。ずーと向こうさ」

「ついでに人間界の入口は調べないの?」

「ないない。調べるのは第3ラインだけだよ。そんな遠くまで調べないよ」

「でも、その第3ライン全てを調べるのも大変じゃない?」


 東西南北全てを調べるとなると大変な距離になります。


「全部じゃないさ。お父さん達の班が調べるのは西のフェルダン川周囲だけだよ」


 それでもここからはかなり遠いです。


「班ってことは他の班もあるってこと?」

「そうだよ。他の町や村からも沢山の人が参加するんだ」

「元は町の役所や専門家がライン調査をしてたのよ。それなのに手伝えって」


 母が刺々しく言う。


「フェルダン川か。1日でいけるの?」


 私の問いに父は首を振る。


「何日かはかかるだろうね」

「どこかに泊まるの?」

「テントだ」

「いいな。キャンプだ」


 私がどこか羨ましそうに言うと母が、


「ミウ! 遊びじゃないんだから」

「あ、うん」


 叱られました。

 何もそこまで怒らなくてもいいのに。

 なぜか今日の母は不機嫌です。


「いつ出発?」

「……それが明後日の朝からなんだ」


 父が苦虫を潰したように言います。


「本当、勝手よね」


 と母が言います。けれど、それは父にではなく別の誰かへのようです。


  ◇ ◇ ◇


 母が入浴中に父から、


「ミウ、お母さんのこと頼むよ」

「うん」

「あまりお母さんに迷惑かけてはいけないよ」

「迷惑なんてかけないよ」


 どうして急にそんなことを言うのでしょうか?

 第3ラインの調査が関係しているのでしょうか?

 母は説明の間、ぴりぴりしていましたし。


「もしかしてお母さんは調査に反対なの?」


 父は驚いたように目をぱちくりさせ、


「ミウは鋭いね。そうだな。お母さんは急なことで反対しているんだよ」


 そう言って父は苦笑いします。


  ◇ ◇ ◇


 父及びユーリヤの森からの調査隊を見送るということになりました。


 それでユーリヤの森の待ち合わせ場所に参加者及びその家族が集まっています。


 今は早朝です。


 説明の時に出発は朝というから勿論朝に起きれば問題ないと考えていたら、実は朝に村出発でユーリヤの森の待ち合わせ場所には早朝集合でした。


 ですので私は朝の6時に叩き起こされました。


 ユーリヤの森からは父の他にも7名も参加者がいました。その中にはセリーヌさん、そしてチノの父親もいました。


 セリーヌさんがいることに私は驚きました。

 調査隊の面々は30代から40代がで構成されているなかで唯一の20代です。


 全員集まっていますが、まだ出発しないらしく、皆はそれぞれ雑談をしていました。


 私はチノに挨拶をかけました。


「おはようチノ。チノのお父さんも参加するんだね」


 チノは眠たそうな目を動かして、


「……おはようミウ。眠いな」

「うん。眠いね」


 チノは話しかけて欲しくなさそうで視線を逸らします。

 私も眠いので挨拶はそこまでにして調査隊が出発するのを待ちます。


 しばらくして調査隊が出発することになりました。私は母に呼ばれて父に向かいます。


「行ってくるよ。ミウ、留守頼むな」

「うん。気を付けて」

「あなた無茶しないでね。絶対よ」

「分かってるよ」


 そして調査隊はユーリヤの森を出て行きます。

 私達はその背が消えるまで手を振りました。

 私はもういいのではと思うのですが皆はずっと手を振っています。眠くて動かしずらい腕を無理に振ります。


 調査隊が見えなくなり、それぞれの家族は家に戻ろうとします。


「それじゃあね、チノ」

「ふあ~。ああ、じゃあな」


 チノはあくびをしながら言いました。


 私も帰ったら寝よう。すごく眠い。


「ふあ~」

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