コレクトギア②-魔女-
モチコ
「お前、スチムって言うのか
ヘンテコな名前だな」
男
「うるさいな」
モチコ
「わっちはモチコって言うんだ、イイ名前だろう?」
男
「…そうだね(お前の方がヘンテコな名前じゃないか!)」
モチコ
「おばぁがな?付けてくれたんだ
わっちは力持ちだから、力持ちにちなんで
"チカラ モチコ"なんだって
かっこいいだろ?」
男
「あはは、そうだねかっこいい!(何つーネーミングセンスしとるんだ、そのばあちゃん!)」
スチムはバイクを走らせて目的地へと向かう
ーーー
しばらくして村にたどり着くスチムとモチコ
スチム
「探知機の反応によれば
この辺りにあるはずだが…」
モチコ
「山から離れたところにこんな村があったんだな…」
村を見渡すモチコ
村人
「はて?客人かな?」
ー
村人
「さぁさ、召し上がってください」
モチコ
「飯だー!!」
スチム
「ど、どうもすみません…」
村人
「いえいえ、客人なんて久々ですからね
どうぞ遠慮なさらずに」
村人からご馳走を振る舞われるスチムとモチコ
モチコ
「うまぇ〜…!」
涙と鼻水でグショグショになりながら
飯を頬張るモチコ
スチム
「お前どんだけウマいもん食わなかったんだ?」
モチコ
「食ってたさ!でもこれは今までのより数十倍うめぇ…!!」
スチム
「(白米で感動してる…今までどんなもん食って生きてきたんだこいつ……)」
村人
「おかわりもあるから遠慮なく言ってくださいね」
モチコ
「やったー!!」
スチム
「おい、あんまり厄介になるな
少しは遠慮しろ」
モチコは美味しくご飯を平らげた
スチム
「…しかし、この村、よく見ると女の子ばかりだな」
村人
「魔女です…」
スチム
「魔女?」
村人
「魔女がこの村の少年たちをさらっていったのです」
ーーー
村人
「魔女は突然村にやってきて、村の財産と少年を要求してきました…要求が飲めなければ村を滅ぼすと」
村人
「みなは久しぶりの客人だと
大喜びでしたが、まったく…とんだ客人です…」
スチム
「よく俺たちのことを受け入れたな」
村人
「あなた達はそんなに悪い人には見えませんでしたから」
スチム
「そ、そうか?ま、まぁ、俺はたしかにいい奴だからな。これも日頃の行いってやつだ。わっはっはっ!」
モチコ
「ヒゴロノオコナイって食えるのか?」
スチム
「うるさいんだよお前は」
村人
「奴は何でもお菓子やオモチャに変えてしまう、恐ろしい魔法を使うのです」
モチコ
「魔法って食えるのか?ウマいのか?」
スチム
「あぁ、ある意味めちゃくちゃウマい
なんでも思い通りにできる。人類の憧れだな」
モチコ
「憧れ…?栗の事か」
スチム
「…お前はもう黙っとれ」
スチムと村人がしばらくやり取りを続けていると
村の奥から大きな声が聞こえてくる
村人
「大変だ!!魔女だ!!魔女が来たぞ!!」
ー
魔女
「はっはっはー!お前達!!
約束のものは用意できたか?」
村の正門に魔女が立ち塞がる
スチム達は家の中からそれを観察していた
スチム
「あ、あれが魔女?!思ったより綺麗だな」
村人
「見た目は美人ですが、恐ろしい奴です」
魔女は大声で叫ぶ
魔女
「おいどうした!約束のものはまだか?
早くせんとこの村を灰にしてやるぞ」
村の女
「ピッケルちゃん…!急いで!」
ピッケル
「ま、ママこわいよ…」
村の女が男の子を魔女に捧げる
村の女
「私の息子、ぴ…ピッケルです…ど、どうぞ」
魔女
「ごくろう、お前は下がって良いぞ」
魔女は女を下がらせピッケルという男の子と2人きりになる
スチム
「自分の子供を生贄に?」
村人
「む、村を救うにはもうそれしか方法がないのです…」
怯える男の子をじっと見つめる魔女
魔女
「ふっふっふ、安心せい
すぐにお前も天国へ連れていってやるぞ」
ニヤッと笑う魔女
そこへモチコが近寄ってくる
モチコ
「よっす!」
ピッケル
「……?」
スチム
「げっ!アイツいつの間に…!」
魔女
「なんじゃ貴様は?」
モチコは魔女そっちのけでピッケルに話しかける
モチコ
「お前、女?男?」
ピッケル
「…?男だけど…」
モチコ
「お前ハンサムか?」
ピッケルはモチコの質問に戸惑う。
そこへスチムが駆け寄る
スチム
「こら!こっちに来なさい!
ど〜も、すみません!!」
スチムはモチコを抱えて急いで家の中へ避難する
その一連のやり取りに魔女も呆気に取られる
魔女
「なんじゃあいつら…?」
魔女はしばらく考えたあと
「まぁいっか」となって話を元に戻す
魔女
「さぁ、ピッケルくんよ
君を私の城へ招待しようじゃないか」
魔女はそう言うと舌をジュルッと出して
ピッケルの腕を掴む
ピッケル
「や、やだ…離して…!ま、ママ〜!」
村の女
「うっ…うっ…ピッケルちゃんごめんなさい
ママはどうにもしてやれない…」
泣きながら魔女に連れていかれるピッケル
スチム
「お、おい…いいのか?」
村人
「くっ……」
魔女が正門へ差し掛かったところで
2人の戦士が飛びかかる
戦士
「魔女め!覚悟!!」
魔女
「こしゃくな」
魔女は戦士達に向けて手のひらを向ける
戦士
「ぬお!?」「ぐあっ!」
手のひらから吹雪のようなものが出て
戦士達はそれにかかり、みるみると姿が変わっていく
スチム
「人をお菓子に変えた…!」
村人
「あれが魔女の魔法です…」
魔女はニヤッと笑う
魔女
「ふん、他愛もない」
帰ろうとする魔女の後ろから「なぁ」と声をかけるモチコ
魔女はふりかえる
魔女
「…なんじゃ、またお前か?」
モチコ
「お前さ!めっちゃ強いな!?」
目を輝かせるモチコ
魔女
「ふん、ガキに用はない、おうちに帰れ」
魔女は適当にあしらう
モチコ
「なぁなぁ!モチコと勝負しようよ!」
モチコの急な要求に魔女はしばらくポカンとする
魔女
「…妙なガキだ、私と勝負だと?」
モチコ
「うん!いつでも来ていいぞ!
モチコはガバッと構える
魔女はため息を吐く
魔女
「…よくわからんが、邪魔をするなら容赦はせんぞ」
魔女が両腕をそれぞれゆっくりと回して
魔法を使う構えを取る
モチコ
「よぉし!いくぞ!」
モチコは「とりゃーっ」と拳を前へ突き出す
魔女
「ほごぉっ…!?」
ー
魔女の股間をパンチするモチコ
魔女
「あ、あぐぅえ〜…!」
魔女は舌を出してしゃがみ込む
モチコ
「うん、やっぱり男より
苦しんでないな!」
魔女
「何すんじゃボケェ!カスゥッッ!!」
モチコ
「復活も早い!やっぱり女は強い!ふふん♪」
モチコは嬉しそうな顔をする
魔女
「貴様〜!許さんぞ!グオオオオ!!」
魔女はヨロヨロと立ち上がり、ドラゴンに変身する
魔女
「はっはっはー!どうだ!?これでは手が出せまい!!」
モチコは「おお〜…」と関心して見上げる
魔女
「お前を地獄の炎で焼き消してくれるわ!泣いて謝ってももう遅いんだからな!!」
そう言ってモチコを大きな手で掴む
モチコ
「?」
魔女ドラ
「はっはっはー、どうだ?逃げられまい!」
グググっとモチコを締め上げるが
彼女はキョトンとしている
スチム
「お、おい!やめろ!バケモノ!!」
スチムが飛び出す
魔女ドラ
「…?貴様は誰だ?」
スチム
「俺はスチム!冒険家だ!今すぐその子を離せ!」
魔女ドラ
「スチム…くん?う、う〜む…(中々悪くないルックスだな…いやしかし、今は小さい子が優先なのだ…)」
モチコ
「ほい」
魔女が悩んでるところで
モチコが魔女の手をあっさりどける
魔女ドラ
「…!?し、しまった!!」
モチコは着地して、魔女を見上げる
魔女ドラ
「く…つい目の前の若い男に目がいってしまって
手の力をゆるめてしまった…!」
スチム
「モチコ、無事か!?」
モチコ
「へっちゃらだ!」
魔女
「ふん、強がりおって!今度こそそうはいかんぞ!」
モチコはグッと構えて魔女に反撃しに行く
モチコ
「とりゃーーー!!」
魔女
「ひ、ひぃ!」
魔女はドラゴンの姿を解き、蹴りが空ぶったモチコはバランスを崩す
モチコ
「おっとっと…!…?」
着地したあと、モチコは魔女の方を見る
魔女
「っと…反射的に避けてしまった」
村は呆気に取られる
モチコ
「どうした?なんで元に戻ったんだ?」
モチコが動揺してるとスチムが叫んだ
スチム
「そうか、わかったぞ!
あいつ、モチコにビビってるんだ!」
それを聞いてギクッとなり、必死に言い訳をする魔女
魔女
「そんなわけあるかい!
ちょっと、お化粧が乱れたので
直そうと思っただけだよ」
スチム
「な、なんて苦しい言い訳なんだ…
おい!モチコ!そいつはお前を恐れてる
ギッタギタにぶちのめしてしまえ!」
魔女
「お調子にのるんじゃない!グオオオオ!!」
魔女は再び変身する
「シュロロロォ…どうだ?怖いだろ?貴様を締め上げて丸呑みにしてやるぞ」
魔女は大蛇の姿になってモチコを驚かそうとする
モチコ
「へへっ♪よぉし!いくぞ!」
モチコは気にせず魔女に飛び上がる
魔女
「ひ、ひぃ!まっ、待って!!」
モチコのパンチが魔女の腹にめり込む
魔女
「ごほぉっ!?」
変身が解除され
魔女は白目を剥きながらその場に倒れる
ーーー
魔女
「ふぎっ…ひぎっ…」
泣きながら大きな絆創膏を腹に貼る魔女
モチコ
「うーん、思ったより大した事ないな…」
村人
「すごい、あの魔女を倒すだなんて
あなた方は一体…」
スチム
「ふふ、我々にかかればざっとこんな物です」
何故か得意げになるスチム
スチム
「さぁ!魔女よ!攫った少年達の元へ案内してもらおうか!」
魔女は力なく返事をして村人達を城へ案内する
城の門を開くとそこには
ひれ伏す白い集団がいた
少年達
「おかえりなさいませご主人様!!」
スチム
「な、なんじゃ!?」
それらは全てメイド服を着た村の少年たちであった
魔女
「うっ…うっ…うあーん…ハーレム帝国の夢がぁッッ!!」
魔女が泣き出す
魔女
「せっかく集めたのに…メイド服、ナース服、チャイナ服どれもとっても可愛かった…」
スチム
「あ、悪夢だ…」
スチムは色んな意味で血の気が引いた
ーーー
村人
「ありがとうございました!
あなた方のおかげで村は救われました!
ぜひ、奪われた宝石の中から好きな物を
持っていってください!」
スチム
「え、いいんですか…!?じ、じゃあお言葉に甘えて…」
スチムは鼻の下を伸ばしながら宝石に手をかける
すると何やらゴツゴツしたものに手が触れる
スチムはそれを見て驚く
モチコ
「どうしたんだ?」
スチム
「み、見ろ!宝石の中に…!!」
モチコ
「あ!歯車だ!!」
スチム達は宝石の中から青い歯車
ブルーギアを見つける
スチム
「あ、あの!これも貰ってもいいんでしょうか!?」
スチムが村の人に尋ねると村の人は快く答えた
村人
「貰ってください、私たちは子供が無事戻ってきてくれただけで幸せです」
スチム
「うはー!やったぞ!これであと残り4つだ!」
嬉しそうに持ち物に歯車を入れるスチム
モチコ
「ははっ!良かったなっ!!」
嬉しそうなスチムに喜ぶモチコ
村の少年たちは無事、魔女から解放され
それぞれの親元へ帰還した
村人達がスチム達を見送る
村人
「もう行ってしまわれるのですか?」
スチム
「あぁ、歯車を欲しがる奴は俺以外にもいるんだ
もたもたしてたら横取りされてしまうからな」
モチコは「じゃあなー!」と言ってスチムと共に村を後にする
ーーー
スチム
「探知機によると次は海を超えた先にある町にあるようだ。この地点は港町ウォストランドだな」
スチムがバイクに手をかざすと
バイクが変形し、羽の生えた球体状の乗り物に変化する
モチコ
「おぉ!?」
羽が忙しなくパタパタしてる
スチム
「次は海を渡るからな」
モチコ
「しゅ、しゅごい…!!」
モチコは目をキラキラ輝かせ、
それを見ていたスチムはどこか誇らしげな顔をする
早速2人はその乗り物に乗る
スチム
「よぉし、ウォストランド目指し…発射!!」
モチコ
「ははっ!わーい!」
次の目的地を目指し、2人は飛び立つ
コレクトギア②(完)