コレクトギア①-はじまり-
『歯車のありかを掴んだ!!』
『あれを手に入れたらいよいよ
俺様達の時代が来るぜ、やろう共!!』
((うぉぉぉ!!))
『まずは前進だ!!
世界を我が物にするためにッッ!!』
ーー
ーーー
ある山奥でひっそりと暮らす1人の少女がいた
「とりゃあーッッ!!」
彼女はモチコ、戦闘好きの変わり者だ
今日も山で1人、修行を楽しむ
「やはりわっちは最強だ!!」
少女はニィっと笑うと
修行を終え、帰宅する
モチコ
「食料も手に入った!火を焚く薪も。
へへ!帰るのが楽しみだ♪」
少女は荒っぽい鼻歌を奏でながら山を降りていった
ー
モチコ
「よいしょとー」
ボロボロの小屋に着き、手製のテーブルに食料を置く少女
モチコ
「ふぃー、さぁて、風呂わっかぁ!!」
焚き火をつけて、大きな鍋をその上乗せて
水を入れ、お風呂にする
モチコ
「いい湯加減だ」
風呂に入る前に下ごしらえとして
食料をその鍋に放り込む少女
モチコ
「よぉし、出来上がるまで寝るかぁ」
少女はボロボロの小屋に入り、石造りのベッドで寝る
ーーー
数時間経ち、起床する少女
飯がどうなったか確認しに行く
モチコ
「おひょ〜よう焼けとる!!」
焦げて真っ黒になった飯を前に少女は興奮する
モチコ
「はむ…むしゃむしゃ…うめぇ〜…!」
「わっちは何でこんなに料理上手なんだろうか…!なぁ?おばぁ!」
少女は飯を平らげると服を脱ぎ
鍋に浸かる
モチコ
「うひー、ええ湯だぁ」
満足してうたた寝する
ーーー
その頃、山のどこかで
何かを探す男が1人
男
「この山のどこかにあるはずだ…」
男の進む道の先には少女のいる小屋があった
ー
鍋風呂から上がり、服を着て
夜飯の調達に向かう準備をする少女
「日没までには戻らねぇとな
大物取ってくるで、今日も!」
少女は鼻歌を奏でながら
山奥に出かける
ー
〜数時間後〜
男
「この辺かな?」
男は少女の小屋の前までたどり着く
男
「間違いない、この辺に歯車があるはずだ」
男がしめしめとしていると背後から怒鳴り声が響き渡る
「やいやい!何だお前は!!」
男は驚き、手をあげる
振り向くとそこには男を睨む少女の姿が。
男は慌てて弁解する
男
「待った!俺は怪しいやつじゃないぞ」
モチコ
「なんだお前…変わった"女"だな!
何者だ!!」
警戒する少女に男は冷静に返す
男
「女ァ?!…俺は男だろどう見ても」
モチコ
「男ォ?お前男か!」
少女は警戒を強める
モチコ
「死んだおばぁが言ってたんだ
"男を見たら警戒しろ"とな」
男
「やれやれ、まいったな…」
困った顔をする男に少女は続ける
モチコ
「お前、ハンサムか?」
男
「何ぃ?」
唐突な質問に困惑する男
モチコ
「おばぁはこうも言ってた
"男は警戒すべし、ただしハンサムは優しいから無害だ"と」
「お前、ハンサムか?」
男
「なんだその難しい質問は…。
まぁ俺は結構モテるからな。
ハンサムなんじゃないか?知らんけど」
男の返答に「そうか」と言って警戒を解く少女
モチコ
「なら、いいぞ」
「"ハンサムには優しくしろ"とおばぁも言ってたからな」
男
「そりゃどうも?(助かったのか…?)」
男はとりあえず解放された事にホッとする
モチコ
「それで、いったい何の用だ」
男は戸惑いつつも少女に事情を説明
ーーー
男
「俺はロンデ・ポルタという町から遥々やってきた冒険家だ」
「この世界のどこかにある
7色の歯車を探しに来た」
「その不思議な歯車は7つ揃えると
魔法の時計になり、なんでも願いを一つ叶えてくれるらしい」
「この山にその歯車があるらしいが、君、何か知らないか?」
モチコ
「?」
少女は不思議そうな顔で男を見上げる
冒険家
「おかしいな、探知機によると
この辺りにあるはずなんだが…」
妙な機械を手に、そう呟く男
冒険家
「悪いが、少し調べさせてもらうぞ」
そう言って辺りを散策する男
冒険家
「お?反応が…!」
探知機から機械音が激しく鳴り出す
男は機械の示す場所までゆっくりと前進
小屋の中に入っていく
冒険家
「ん?…あっ!!」
男は何かを発見する
冒険家
「これだ!これが7色の歯車の一つ!!カラーズギアだ!!」
歯車を手に取る男
冒険家
「色が赤い、こいつはレッドギアだな!!」
男が歯車をリュックに詰めようとしたところで
激しく駆けてくる少女
モチコ
「おい!!なにをするんだ!!そいつはおばぁの形見!!」
冒険家
「これだ、これが俺が探してた物
カラーズギアだ。これを集めると願いをなんでも叶えてくれる、ほら、見ろ」
男はそう言ってリュックからもう一つ歯車を取り出して少女に見せる
モチコ
「おばぁのが二つ…?」
男は深く頷く
冒険家
「あと五つ集めれば何でも願いが叶う時計が完成する、すまんが貰ってもいいか?どうしても必要なんだ」
男がそう懇願すると少女は少し考えた後
「…いいよ」と答える
モチコ
「おばぁがハンサムのお願いは素直に聞けと言ってたしな…」
冒険家
「ありがとう(おばぁナイス!)」
男はリュックに歯車を詰めた
冒険家
「それじゃあ俺はこれで失礼する
世話になったなお嬢さん」
そう言って立ち去る男
ーーー
冒険家
「……」
男が何やら困った顔をしながら歩く
冒険家
「…あのぉ、何か用かな?お嬢さん?」
モチコ
「?」
少女が男の横をついていくように歩いていた
冒険家
「お兄さんもう、ここに用はないから帰るとこなんだけど…」
モチコ
「うん、だからこうして歩いてるんだ」
少女は何食わぬ顔でそう言うと
男は戸惑いながらも少女に返す
冒険家
「悪いんだけど、ついてこないでくれるかな?
俺は一人でいたいんだ」
モチコ
「おばぁがな?"ハンサムは悪い女に食われるから
体を張って護衛しろ"と言ってたんだ
だからわっちはな?お前を守らないといけない」
冒険家
「(孫に何変なこと教えてるんだ、ばあちゃん…)」
呆れつつも少女を説得する男
冒険家
「とにかく冒険家ってのは一人でやるもんなんだ
ロマンだよ、キミにはわからないだろうが」
モチコ
「マロンは好きだぞ」
冒険家
「俺も好きだが、ロマンはマロンとは違うぞ」
モチコ
「そうなのか、どんな栗なんだ?」
冒険家
「夢だ、憧れの栗だよ」
男はそう返すと、そそくさとその場を離れる
モチコ
「なぁなぁ、男って栗が好きなのか?女と同じだな女も栗が好きだぞ」
冒険家
「ぐぅ……!」
男は小走りで少女から距離を取る
モチコ
「男は変な歩き方をするな?」
モチコ
「なぁなぁ、男って修行好き?」
モチコ
「なぁなぁ」
しつこい少女にピタッと立ち止まる男
冒険家
「あのねー…頼むからついてこないでくれるかな??」
怒りながらも優しく少女にお願いする男
冒険家
「俺は冒険家なんだ!この先は危険がいっぱいなんだ!キミが危険な目にあったら俺はとても悲しい気持ちになるんだよ、わかるかな?」
ニカっと白い歯を見せて少女を納得させようとする男
モチコ
「大丈夫!わっちは強いからな!!お前を全力で守るぞ!!」
冒険家
「(ひー、誰か助けてくだひゃい…!)」
男は涙を流しながら、少女に構わず前進する
ーーー
「ピギィーーーーッッ」
しばらく進むと空を飛ぶワイバーンに遭遇
冒険家
「何じゃありゃ…!?」
男は驚き、足を震えさせる
モチコ
「ワイバーンのバンくんだ、元気そうだな」
少女は平気な顔でそう言う
冒険家
「妙な所だ、早く降りよう」
男が足を前に出すと、下半身に違和感を覚える
モチコ
「なんか生えてるぞ?なんだこれ、あ…硬くなった」
男のズボンの中をまさぐる少女
冒険家
「やめんか!」
男は少女を引き剥がす
モチコ
「男って変だな、棒なんか生やして」
冒険家
「ほっとけ」
モチコ
「わっちにはそんなの無いぞ」
冒険家
「脱ぐな!」
服を脱ごうとする少女を制止する男
冒険家
「なんなんだこいつは…男女の隔たりを知らんのか」
男はため息を吐きつつ急いで山を下山
やがて川までたどり着く
冒険家
「俺が来た方角は確か…?」
地図を広げる男
モチコ
「なんだそれ」
冒険家
「うわぁ!?」
男は驚いた拍子に地図を川へポチャンと落とす
冒険家
「いきなり肩にのるんじゃない!!」
地図が流れていく
冒険家
「あ〜あぁ…どうすんだよ、道分からなくなったじゃん」
男が項垂れてると突然
「ピギィィィ」
川の奥から小型の恐竜が男たちを見つけ、興奮しながら走ってくる
冒険家
「いぃ!?」
モチコ
「あ、ラプトルくんだ」
男は急いで、そいつから逃げ、
高台からジャンプ
冒険家
「!?!?」
着地した所に出っ張った岩があり
そこに股間をぶつける男
冒険家
「ぐぇ〜…?!」
叫んだ後その場に崩れ落ちる男
冒険家
「ふぐっ…んぐぐっ…」
モチコ
「どうした!?」
悶絶する男に駆け寄る少女
冒険家
「た、玉…いわにぶつけ…」
途切れ途切れに言う男
モチコ
「そ、そんなに苦しむほどの衝撃だったか?!」
ようやく立ち上がる男を心配そうに見つめる少女
冒険家
「(くそ…!悪夢のような痛さだった…!)」
腰をトントンと叩く男
モチコ
「男って脆いんだな…あ!」
少女は何かを閃き、男の股にしがみつく
モチコ
「こうすれば安心だ」
冒険家
「やめんか!!」
男は少女を引き剥がす
ー
モチコ
「なぁ平気なのか?そんな弱い部分を晒して」
冒険家
「ほっとけ!」
モチコ
「な、何怒ってるんだ…?」
男の反応に困惑する少女
モチコ
「男って難しいな…」
少し歩いた先で少女は何かを見つけ、男を制止する
モチコ
「ちょっと待ってろ」
そう言ってすっ飛び、
出っ張った岩を蹴り飛ばす少女
モチコ
「これで大丈夫だ、ぶつける心配はない」
男は少女の力に驚く
冒険家
「なんなんだこいつは…この山はどうなってるんだ一体…」
ーーー
モチコ
「男を守るのって結構大変だな…」
少女が腕を組んで難しい顔をしながら歩く
冒険家
「こいつはいつまで着いてくるんだ…?」
男は横目で少女を見て、呆れながら歩く
と、その時
「ピギィーーーーーーッッ」
大きい何かの鳴き声が山の奥から聞こえてくる
冒険家
「次はなんだ…?」
ワイバーンが男ら目掛けて飛んでくる
ワイバーン
「ギュイイイーーーッッ!!」
冒険家
「ぎえー!?」
ワイバーンは男の頭上を通過する
冒険家
「あッッ!?ギアがッッ!!」
口からリュックを垂らしながら飛んでいくワイバーン
冒険家
「リュックを取られた…!!」
モチコ
「ちょっと待ってろ!」
少女は飛行するワイバーン目掛けてジャンプする
モチコ
「とりゃーーーー!!」
ワイバーン
「グエッ」
ワイバーンの腹を蹴り、リュックを口から吐かせる
リュックは山のどこかに落ちていく
冒険家
「うわーッッ!!リュックがぁ…!!」
リュックが落ちていった崖下を見て叫ぶ男
モチコ
「大丈夫だ」
冒険家
「何が大丈夫なんだ!!」
モチコ
「ほれ」
少女の手にはギアがあった
モチコ
「これだろ?」
男は呆然とする
ーーー
何とか下山し、地上に到着した男
冒険家
「リュックは奈落に落ちてしまったが
まぁいい…ギアが無事ならそれで…」
男はギアを小型のバッグに入れる
冒険家
「妙な目にあったが、ようやく下山できた
もうこの山は二度と登りたくない」
「さて次は三つ目だ!」
ウキウキでバイクに跨る男
冒険家
「…ところで、なぜ君が乗っているのかな?」
男の後ろに当たり前のように座る少女
少女は首を傾げながら返す
モチコ
「言っただろ?守るって」
男は涙を流しながらバイクを走らせた
コレクトギア①(完)