⭕ 部屋に居た 2
今日は久し振りに友人と合い、映画を観た。
映画観賞の後は、カフェに入って遅めのランチを済ませ、色んなテナント店に立ち寄り一通りショッピングを楽しんだ。
友人と解散した後、バスの時間まで本屋で時間を潰し、帰宅した。
高校時代は寮生活だった事もあり、就活も寮のある職場を探して面接を受けた。
就職の出来た職場には寮があり、私は寮生活をしながら近くの職場へ通い、甲斐甲斐しく働いている。
因みに寮室は1人部屋だから有り難い限りです。
他人と同室だったら、完全にアウトだったよね…。
いやね、「 何で居るん?? 」って大声で叫びたかったけど──、此処は寮だから、叫べないから、私は叫びたい言葉をグッと堪えて呑み込んだ。
私の部屋には絶対に置かない場違い過ぎる白くて丸いアンティーク風のテーブルの上には見慣れないティーセットが並んでいる。
明らかに私の物じゃない。
私の部屋には絶対に置かない高価そうな西洋風の椅子に腰掛けて、ティータイムを満喫している真っ白い人物。
頭の天辺から爪先まで真っ白い。
光の加減でキラキラと銀色に見える長くて軽くウェーブが掛かっている白い髪──。
私がイメージしている吟遊詩人と同じ神秘的な真っ白い衣装──っていうかコート。
神秘的でお洒落な真っ白いブーツ。
コートとブーツを身に付けて上品に紅茶を飲みながら寛いでいる場違い過ぎる長身の美麗で美丈夫な青年──。
明らかに現実世界には不釣り合いな容姿と格好をしている人物に対して、私は声を掛けた。
「 ………………えぇと…………どちら様ですか?? 」
見れば分かる容姿と衣装を着ているから、「 どちら様ですか? 」は違うと思うけれど、ほらっ、何か、一応??
大体の見当は付いてはいるんだけどね──、多分そうだと思うんだけどね──、ほらっ、万が一にも違っていたりしたら、気まずい事になるだろうし的な感じ??
だからって訳じゃないけど、間違いじゃないか確かめる為に、取り敢えず「 どちら様ですか? 」って言ってみたんだけなんだけど──。
肌以外の全身が真っ白い人物は私の方に顔を向ける。
人間離れした美しく整った顔がニコリと笑みを浮かべた。
「 第一声は、それですか?
貴女の息子に対して、あんまりではないです?
お母さん 」
“ お母さん ” だと?!
今、私の事を “ お母さん ” って言った??
お母さん…………私が…………。
いや、間違ってはない。
うん、間違ってない。
容姿のモデルはいるけど、私が生み出して名前を付けたキャラクターなんだから、私が “ お母さん ” なのは間違ってはないよね!!
「 貴方みたいな大きな息子を産んだ記憶はないです……。
私は未だ独身ですし、未婚者ですからね!! 」
思ってる事と違う言葉が口から出ちゃう!
まぁ、でも、いきなり “ 息子 ” だとか “ お母さん ” って言われたら、先ずは否定しちゃうよね?
独身だからね!!
「 未だ呆けないでください、お母さん。
ワタシは貴女が生み出した吟遊大詩人のセロフィート・シンミンです 」
「 ……………………でしょうね!
非現実的な美貌と容姿と衣装の人間が現代社会に居る訳が無いもんね!!
……………アタシの部屋に居るのは何で??
目の前に居るのは何で??
何で流暢に日本語を喋ってんの?? 」
「 呆けの次は質問です?
忙しいで人ですね 」
「 紅茶なんか飲んでないで答えい!
それより、先ずはテーブルと椅子を消しんさい!
邪魔だから!! 」
「 ティータイムの途中ですけど? 」
「 疑問系で答えない!
見れば分かるから!
唯でさえ狭い部屋が更に狭くなるでしょ!
消して、直ぐに! 」
「 お母さんは我が儘さん~~♪ 」
「 歌わなくて良いから! 」
「 はいはい。
座布団は……出さないと無いですね 」
セロフィートはテーブルと椅子をパッと消すと、私が普段使っている折り畳みテーブルが代わりに現れる。
テーブルの上にはティーセットが並ぶ。
私の部屋に無い筈の座布団が2組も敷かれている。
「 ………………ねぇ、もしかして……その座布団は〈 テフ 〉で構成して出したの?? 」
「 はい?
そうですけど?
因
「 ………………嘘ぉ……。
出来るの!?
此
此
何
「 ワタシに聞かれても困ります。
出来るものは出来るのです。
古代
「 嘘だぁ~~!
魔法が使えない現実世界だよ!!
何
「 使えますね 」
「 な…何
「 ワタシに聞かれても困ります。
使えるものは使えますし 」
「 ………………コレ、夢じゃないよね?? 」
「 夢…です?
両膝の皿でも砕いてみます? 」
「 恐い事を言わないでよ!
両膝の皿を砕くとか──、物騒過ぎるから!! 」
「 回復魔法で治せます♪ 」
「 止
それより、どうやってアタシの作品から抜け出て来
主人公を放置しといて良
「 ワタシに言われても困ります。
作品から出た理由はワタシにも分かりません。
ワタシが理解しているのは、ワタシを生
「 アタシと暮らすって事ぉ? 」
「 そうでしょうね。
今夜からお母さんの介──いえ、御世話をさせていただきます。
宜しくお願いします、お母さん 」
「 今、“ 介護 ” って言おうとしたよねぇ?
アタシの老後は未
「 直
人
「 嫌
セロフィートは老
「 “ セロ ” と呼んでください、お母さん。
ワタシは〈 御人形様
人間の様
「 そうだったね。
セロは〈 久
セロが現実世界に現れたのは〈 久
「 はて……詳しい事情は分かりません。
お母さんと暮らせる様
お母さんも嬉しいですよね? 」
「 まぁね!
チートのセロと暮らせるって事は、死ぬまで悠
嬉しいに決まってるじゃない♪ 」
「 お母さん、この部屋は狭いです。
広くして良
「 古代魔法を使うの?
だったら序
防音魔法もね!
寮部屋の壁って意外に薄いから… 」
「 はいはい。
お母さんの部屋に不法侵入した不届き者の始末はどうします? 」
「 始末って……。
吟遊詩人が物騒な言葉を使うんじゃないの! 」
「 お母さん、吟遊大詩人です。
言い間違えないでください 」
「 “ なんちゃって ” でしょ!
その格好で出歩かないでよ。
職質されたら面倒だし 」
「 コスプレ…とやらで誤魔化せません? 」
「 何
「 お母さん、ワタシはこ
「 は?
手品師??
その格好で? 」
「 はい♪
吟遊大詩人が手品を披露します。
手品師の衣装としてなら着ていても職質とやらはされないでしょう? 」
「 どうかな~~?
まぁ、セロなら手品だろうと奇術だろうと、マジックだって楽勝なんだし、良
アタシの息子として暮らすなら〈 テ
「 もう作ってます。
抜かりはないです♪ 」
「 そりゃ良