自由の網
-----だ。ボクはそう思いながら、自由の底に落ちていった。
目が覚めると、またあの場所にいた。変わっているのは辺りが少し暗くなったことだろうか。そしてボクは自らの体が動かせないことに気づいた。動かせない。そう、字の通りに動かせないのだ。ピクリともしないボクの体は深い深い眠りにつこうとしていた。ボクはそれに反することも出来ないまま、また瞼が閉じていた。
ボクが目覚めたのは辺りがすっかり暗くなった頃だ。今度はボクの体も自由に動く。手足も指先も。体の至る所までの主導権をいま、ボクが握っているのがわかる。今日は何処に行こうか。昨日どこかに行こうとしていたような気もするが、もう忘れてしまった。ボクの記憶力は良くないのだ。そう考えながらももうボクの体は動き始めていた。辺りは静まり返った夜。真っ暗だ。でもボクは夜目がきく。そこら辺の人間よりもね。セミやらの声が飛び交っていたがボクはそれも気にしない。ボクの耳に入っていいのはボクが好きなものだけだ。ボクはボク。そのほかはそのほか。ボクは他とは違うんだ。そしてボクは自分のやりたいようにできない人生が一番の苦しみだった。でもボクはこれまで苦と思ったことがあまり無かった。それは周りがボクのことをほかっているのか、はたまたボクはみんなに捨てられたのか、のどっちしかない。こんな難しいことを考えていたら、ボクのすきな崖のそばまで来てしまった。ここは僕の一番のお気に入りの場所だ。ちょっと危ないけどその危険さが美しさを倍増させている。綺麗なものには刺がある的なやつだ。そして崖の向こうには澄んだ海。また、今の季節は夏。時刻も夜。環境が最高すぎる。昼間は人で賑わっているが今は誰もいない。ボクだけだ。こんな綺麗な風景なのに誰もいないのが不思議に思えてしょうがない。でも誰もいなくて助かった。僕はこれから旅に出る。体も思うように動かなくなるし、息もすぐ切れる。こんな人生はもう終わりだ。ボクは自分の好きなところで、すきなまま終わるのだ。一切苦しみたくは無い。でもボクは人より脳みそがちっこいから難しいことを考えるのは苦手だ。しかもボクは考えたらそれを実行しないとダメな性格だ。ボクがここで何もしないと明日のボクが怒るだろう。楽しかった。来世でも、あの世でも、ボクは自由でありますように。絶対苦しみませんように。ありがとう。そしてまたね。ボクの生きた世界。ボクは自由だ。




