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6-(5)

 その後、荒茶を選別し、魔法を使って火入れ作業をする。『製茶』の中で最も魔力を使うのがこの工程だ。だから、この作業には魔力を多く持つ者が配属されることが多い。最後に薬草と配合してお茶ができあがる。一連の作業は立ち仕事であり、魔力も必要とされることから大変な作業とされているのだ。特に魔力の少ないファンヌが火入れ作業を一人で行うと、次の日は生活魔法すら使えなくなることすらあった。


 だから、茶葉と薬草の配合率を指示するのがファンヌの役目であったし、その配合率を決めるのがファンヌの研究でもあった。


 これから寒い冬本番を迎えようとしているため、工場で『製茶』されているお茶は、身体を温めて眠りやすくしてくれるお茶が(おも)だ。また、リヴァスも雪は降らないが朝晩は冷え込む気候となる。どうしてもこのお茶が今は一番必要とされる季節なのだ。


「皆さん、不便なことはありませんか?」


「はい、今のところは」


「何か困ったことがありましたら、遠慮せずに私か責任者のルイにまで言ってください」


 工場で働く作業者たちの顔色は良さそうだ。


 ファンヌは一通り工場の作業者たちの顔を確認してから、研究室へと向かった。


 今、ファンヌが取り組んでいる研究は、肩こりで悩んでいるカーラの症状を和らげるお茶であった。彼女の話を聞く限りでは、血液の循環の悪さと睡眠不足が原因として挙げられそうだ。だから、今、大衆向けに『製茶』している身体を温めるお茶の効能をもう少し強めたお茶を『調茶』しようと考えていた。


「う~ん」


 結局、ファンヌは今もエルランドの研究室にいる。リヴァスにいたときから共に研究をしていたためか、同じ空間で研究することが当たり前になっていた。


 リヴァスの学校の研究室は、ファンヌたち学生たちがいる研究室とエルランドの研究室は扉で仕切られていたが、エルランドはいつでも学生たちが相談しやすいようにとその扉を開けっ放しにしていた。それはマルクスからの助言でもあったようだ。お互いの研究室を行きやすくすることで、研究に煮詰まった時の相談が気軽にできるように、と。


 だが、それでも学生たちはなかなかエルランドの研究室に足を踏み入れようとはしなかった。研究者としては優秀なエルランドであるのだが、どうも一言二言多いようで、ファンヌ以外の学生はちょっとだけエルランドを苦手としていた。だが、研究者としてのエルランドに惹かれた者がその研究室への配属の希望を出すのだが。


 配属されてから彼らは気づくのだ。エルランドの人柄に。それでもエルランドの元で研究したいという学生がいたのは、ファンヌの力もあったのかもしれない。


「エルさん。ちょっと相談なんですけど」


 ファンヌは行き詰っていた。


「なんだ」


 エルランドは自席から立ち上がると、ファンヌの隣に座る。一人で座る分には充分な広さを持つソファだが、二人で座ると一気にその距離は近くなる。


 今まで何も感じなかったその距離を意識し始めたのはいつからだろう。それでもファンヌは『調茶』のことを必死になって考える。


「こちらが、一般向けに『調茶』している茶葉と薬草です。これの効能を高めるお茶を考えたいのですが、こちらの薬草は一日の摂取量が小指の爪程度のものですよね」


「そうだな。それ以上、摂取すると中毒症状を起こす恐れがある」


「この薬草ですが。身体を温める効能を高める効果もあり、こちらの茶葉と合わせて調茶しているのですが」


「お茶に淹れるのはどのくらいだ?」


「一般向けのお茶には摂取限度量の百分の一程度に薄まります。なので、お茶を百杯飲まなければ、特に問題はありません」

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お読みいただきありがとうございます。
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