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2-(5)

 その後、屋敷を出て他の場所へと向かうのだが、どうやらその先にエルランドの家族が住んでいるらしい。


 だが、その先が近づくにつれ、ファンヌの顔は曇り始める。


「先生」


 半歩前を歩くエルランドを呼んだ。


「なんだ」


 彼は歩調を緩め、ファンヌの隣に並ぶ。


「この先に見えるのは、王宮なのですが」


 Lの字の建物の外壁はキャラメル色。東側には尖塔が建っている。どうやら礼拝堂になっているらしい。またLの角の部分は物見の塔となっており、他よりも一際高く黒い屋根が目立っていた。


「ああ。両親はそこにいる」


「え」

 ファンヌは思わず立ち止まってしまった。だからエルランドも「どうした?」と立ち止まる。


「先生……。質問です」

 ファンヌは右手を胸の高さまで上げた。質問があるときは手をあげましょう、という学校の教えが身体に沁みついているためだ。


「なんだ?」


「先生のご両親は、一体、何をされている方なのでしょうか」


「そうだな……。この国の代表という表現がしっくりくるだろうか」


 王宮にいるこの国の代表。即ち。

「もしかして、ベロテニア王国の国王とか、そんなオチではないですよね……」


「さすがファンヌだな。オレの父親はそう呼ばれている。ほら、皆が待っているからさっさと行くぞ」


 エルランドはファンヌの右手首を掴むと、彼女を引きずるようにして歩き出した。

 ファンヌは驚いて足元がおぼつかない。


 それでもなんとか王宮の中に入り、いつの間にか応接室にまで案内されていた。

 ファンヌにはここまでどうやってきたのかの記憶が無い。気が付いたら、ここにいた。

 そして目の前には、エルランドの両親と思われるベロテニア王国の国王と王妃、その脇に角度を変えて王太子と第二王子が座っている。


「ご無沙汰しております、父上、母上」


 あのエルランドの口調とは思えない程、穏やかな声。

 ファンヌはぎょっとしてエルランドに顔を向けるが、その表情はいつもの彼だった。


「ああ、お帰り。エルランド。後でオスモのところにも顔を出してやれ。お前が戻ってくると話をしたら、喜んでいたぞ」


「はい……。早速ですが、彼女を紹介しても?」


 エルランドの言葉に、そこにいる全員が身を乗り出してきたように見えた。


「彼女は、ファンヌ・オグレン。私の共同研究者兼教え子です」


 エルランドの言葉に合わせて、ファンヌも深く頭を下げた。


「それだけ、か?」

 目の前の国王が驚いたように、目を丸くしていた。


 やはりエルランドと親子ということがよくわかる。丸くした目はエルランドと同じ碧眼であり、後ろに撫でつけた髪は黒い。ところどころ白いものが混じっているようにも見えるが、それがいい意味でのアクセントになっている。


「はい……」


「エル……。あなた、きちんと彼女には伝えたのかしら?」

 透き通るような凛とした声の主は、王妃だ。茶色の髪はすっきりと結い上げられ、アイスグリーンの瞳はじっとエルランドを見つめている。


 だが、肝心のエルランドはその視線から逃れようと、必死に視線を逸らしていた。

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お読みいただきありがとうございます。
ピッコマノベルズ連載中のこちらもよろしくお願いします。

人の顔がすべて『∵』に見えるので、この子の父親は誰だかわかりません!


こちらは新刊です。

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