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171 気になる点多数




「酷いよ、ステラ。俺のこと甘やかしてくれる流れだったじゃん」

「いーや!いや!流されるところだった。アンタのやってきたこと忘れたわけじゃないから!」

「確かにそうかもだけどさ。ね、本当に、俺疲れてるし反省してるの!」

「疲れてるって、アンタ達さっきまで兄弟喧嘩してたじゃない!自業自得よ!アルベド、ヘルプ。お願い、助けて!」

「仕方ねえなあ、婚約者様がそう言うなら助けるしかねえよな」

「い、言い方!」




 嫌な言い方をしたものの、アルベドはしっかり私を助けてくれ、ラヴァインを私から引き剥がしてくれた。ようやく、身体にまとわりついていた重みから解放され、私はふう、と一息をついて立ち上がる。ラヴァインはというと、ふて腐れたように頬を膨らましていたが自業自得だろう。まあ、それは良いとして、この時代の彼は、ヘウンデウン教と繋がりがある訳で、先ほど考えていたように、彼に裏で動いて貰える方がありがたい……し、そうして貰いたい所なのだ。




(――エトワール・ヴィアラッテアに気づかれずに、彼女のやろうとしていることを掴むことができれば、こっちも優位に動けるわけだし)




 やっていることは、エトワール・ヴィアラッテアと変わらないかも知れない。ラヴァインは、完全な光でもないし、どちらかといえば、ブラック……ヘウンデウン教側の人間だ。まあ、この時代の――という話ではあるが。だからこそ、そんな人間と手を組むということは、エトワール・ヴィアラッテアがやっていることと同じことをするということで、少し気が引けてしまう。しかし、そうしなければ、彼女の足取りを掴めないというのなら、仕方ない。そうするしかないのだ。私は、手段を選んでいられるほど、余裕がない……から。

 それにいち早く気がついたのか、アルベドが「肩の力抜けよ」と私の肩を叩いてくれた。ポンと優しく。暫く離れていたのもあって、久しぶりに会う感じがし、何だか嬉しくなった。それをまた、恨めしそうにラヴァインが見つめる。ラヴァインからしたら、今記憶が戻って、それまで、私達が色々とやってきて、兄は婚約者になって……と、飲み込むまでに時間がかかるのは容易に想像がつく。それに、恋愛感情なのかは分からないが、私に対して色々言ってくれていたところを見ると、目的があるとはいえ、アルベドと婚約者になったことに関して思うことがあるのだろう。私に好きな人がいることはラヴァインも知っているわけで、もしリースの記憶が早めに戻って、この状態の私達を見たら発狂してしまうかも知れないと……ふとそう思ってしまうのだ。




「まあ、いいけどさあ……どうせ、ステラは兄さんのものに完全になる訳じゃないし。俺のものにもなってくれないんだろうから。星は、手の届かないところにいるから、星なんじゃない?」

「う、うん……よく分からないけど、そう……なのかな」

「もうずーっと混乱しているけど、何となく分かってきた。さっきも言ったけど、叩くなら早いうちに叩いた方がいいね。偽物様のことは。これだけ、魔力を使っているんだ。消費量も相当だと思うよ」

「それは、そうなんだけど……まだ、エトワール・ヴィアラッテアの味方が多い状態で、彼女にぶつかっていっても……って、無謀なんじゃって、アルベドも、そうだよね」

「俺に聞くなよ。だが、まあ、いわんとしていることは分かるし、俺も同感だ。簡単に攻略できる相手なら、とっくにやってる。だが、お前も敵だった状態で、あっちには、皇太子殿下と、魔法を切ることができるやつがいるんだ。それに、ブリリアント卿もあっち側……こっちに勝算はないだろうな」

「……確かに。今のは言い過ぎたかも。頑張って、後ろから責めていっているのは分かったけど、これ以上は、踏みとどまっていられないかもね。偽物様の、目的は……ステラは、何となく分かっているみたいだけど、何をしでかすか分からないっていうのは、俺も同感。ヘウンデウン教の動きについては教えてあげられるかもだけど、他の所で力になれるかは分からないね」

「……ラヴィ」

「でも、大丈夫。もう、記憶は戻ったし、ステラ達の味方だから。そこは心配しないで」




と、ラヴァインはにこりと笑った。敵だと厄介だけど、味方だとこの上なく頼もしい。彼の記憶が戻ったことは、大きな戦力であり、エトワール・ヴィアラッテアの足下をすくえるかも知れない切り札だ。彼が、ヘウンデウン教の幹部である今、私達が動ける範囲というのも変わってくるだろう。しかし、バレてしまってはいけない。




(エトワール・ヴィアラッテア自体、ラヴァインには興味内っぽかったし、ラヴァインも、記憶が戻る前から、エトワール・ヴィアラッテアのことは眼中になかった……隠しキャラだから、働いたイレギュラー……いや、普通のルートなのかも知れない)




 けれどまあ、ラヴァインが敵だとやりにくいのは全くそうなので、これでよかったといえる。

 次に、記憶を取り戻して貰えるなら……やはり、グランツを狙うしかないだろう。彼が、私達の動きを阻害する人間になりかねない。けれど、さっきあんなふうに別れてしまって、グランツの好感度が下がったような気がしてならないのだ。もし下がってしまっていたら……と考えると、彼に合わせる顔がない。




「そ、そのさあ……さっき、村の襲撃あったんだけど、復興に時間がかかるっていってた。国から援助して貰えないかもって」

「あれだけ、壊れたらね……」

「まあ、アンタが少し関わってたんだから、どうにかして欲しいところだけど」




 そう、私が睨み付ければラヴァインは、記憶が無かったから仕方ないじゃん、とアルベドの後ろに隠れた。それで許されるのなら、誰でも許されているだろうと睨みたくなったが、ここで過去の事をいっても仕方ないと踏みとどまる。




「……仕方がなかったってことにはしたくないけど…………あの後、エトワール・ヴィアラッテア……偽物の、私の身体を奪ったヤツが現われたの。そいつが、あの後何したか……復興に手を貸したのなら、グランツの記憶を取り戻すのは難しくなってくるかも」

「だろうな……彼奴は、依存しやすい性格しているからな」




と、アルベドが口を挟む。的を得ているそれに、私も頷くことしかできなかった。攻略しやすい相手、それは裏を返せば、依存しやすいともいえる。好感度は上がったものの、停滞が予想されるし、あの後エトワール・ヴィアラッテアが、自分の望むことを叶えてくれたとしたら、きっとグランツはさらに彼女に心酔するだろう。


 エトワール・ヴィアラッテアが、どこまで、グランツに干渉するかにもよるけど……




「そこらんへんは分からないわけ?その、さっきのばしょをもう一回干渉するとか……」

「できねえよ。追跡魔法をつけているのはお前だけだし。さっきもいったが、あれはそこまで便利なもんじゃねえし。気になるっつうのはいたいくらい分かるからよ。まあ、そこまで気負いしなくてもいいと思うぜ?」

「そう、だといいんだけど……でも、やっぱりって」




 心配性だな、といわれ確かにそうなんだけど、と言い返せなくなった。一回気にし出すと気になってしまうものなのではないかと。

 でも、私のことを分かってくれているアルベドは、自分も気になると付け足した上で、ラヴァインの方を見た。




「……はあ、この空間も長く持たねえだろ。お前の魔力消費も心配になってきた。一旦、魔法を解け、ラヴィ」

「に、兄さん!?」




 気遣ってくれたことに驚いたのか、それともたんに嬉しいのか、ラヴァインは耳の上にかかっている髪をぴょこんと飛べないひよこのように動かし、笑顔で、その魔法を解いた。瞬間、空間が歪み、見慣れた公爵邸の姿に溶けていった。




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