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149 狙いは逆ハーレム?




「こっちに来るなんて珍しいな。喧嘩でもしたのか?フィーバス卿と」

「そういうわけじゃないし。アンタにばっかりこっちに来て貰うのが何だか申し訳なかったから、こっちに来ただけ。それに、フィーバス卿の……辺境伯領の転移魔法って、光魔法にしては優れていて、瞬間移動みたいにシュン!ってできるから、便利だと思って」

「何だそりゃ。まあ、要するに俺を気遣ってってことだろ?素直じゃねえなあ」




 ニマニマと、アルベドは、私を見つめ笑っていた。その笑顔が何となくむかついて石を投げるところだったが何とか踏みとどまり、出して貰ったローズヒップティーに口をつける。思った以上に酸っぱい紅茶だったため、私はべっと舌を出してしまった。それがまた彼のツボを刺激したようで、ケタケタと笑っていた。品性の欠片もない。




「子供舌だな」

「煩いわよ。砂糖入れたら飲めるから」

「それに、砂糖入れるのはオススメしないな。つか、香りを楽しめよ。そしたら、少しぐらいは、酸っぱいのも気にならねえよ」




と、アルベドはスッとカップに口をつけ、ローズヒップティーを飲む。そういう姿は様になるのに、彼の口から飛び出してくる言葉は、刺々しくて、煽っているようにしか聞えない。別にそれが不快だというわけではなくて、彼が貴族でありながらも、貴族らしく振る舞わない自由な性格であることがやっぱり他とは違うと。いつ見ても、アルベドだけ異質だと思う。悪い意味ではなく、勿論いい意味で。


 この間、フィーバス卿は調べ物が終わったようで、夕食にはしっかりときてくれた。その安堵感から、また柄にもないような、変な話をしてしまい、フィーバス卿を驚かせたのは言うまでもない。そして、その内容を全く覚えてないないというポンコツぷりに、自分が情けなくなってきた。その後は、いつも通り、辺境伯領地で過ごしたが、何も進展なし。疲れも取れてきたところで、レイ公爵邸を訪れることにした。

 フィーバス卿は、あれから調べ物をする頻度が多くなり、でも何を調べているのかまでは教えてくれず、私も気を遣って何も聞かないようにしていた。そのせいで、少し距離ができてしまったなとも感じていて、親子の距離感がまだイマイチ掴めていない。ひいてはよせる波のようで、人との距離感というのが上手く取れなかった。そんなことを気にせずに喋ることができるアルベドは、私の救いでもある。




「しっかし、本当にあの偽物が何をしたいのかわからねえな」

「分からないって、アンタを洗脳して、自分に好意を向けさせようとしているんだって!前にも話したと思うけど」

「それが、意味分かんなくねえ?俺じゃなくても……」

「ううん、多分、闇魔法の人間でも虜に出来る私って魅力あるーてきなことをアピールしたいんじゃない?この世界の男皆虜にする計画的な」

「それをして彼奴に何のメリットがあるんだよ」

「愛されている自分って幸せ……とか、自己肯定感のため?」

「最低な野郎だな」




 女に対して、野郎ってと、思いつつも、確かに今の説明では、そんなふうにしか聞えないだろう。でも実際、やっていることといえばそんなようなことだし……と、私は酸っぱいお茶を飲む、やはり酸っぱい。確かに、逆ハーレムを作って何をするかといったら、その後何をするか分からない。逆ハーレムを形成したところで、一人としか結ばれないし、一夫多妻制ならぬ、一妻多夫制……みたいな。いや、それは無理か。と、多分関係無いことをアレコレ考えつつ、逆ハーレムの先を私は想像したことなかったのだ。

 エトワール・ヴィアラッテアは、偽りの愛を注がれてそれで満足なのだろうか。皆が自分をちやほやして、好きだ好きだと言って貰えて、その後は? 全てを手に入れて、その後彼女は何をしたいのだろうか。エトワール・ヴィアラッテアのことだから、その人たちを殺す……何てことは無いだろうし、手放すこともしないだろう。じゃあ、自分をかけてバトルロイヤル……デスゲームでもするつもりだろうか。これは想像が突飛すぎるか。でも、100%やらないわけではないだろう。生き残った強く、愛に溢れた男を、自分の生涯の伴侶とするとか?




「何がしたいんだろう……ヘウンデウン教とも繋がっているのに」

「本当にそうだな。前の世界と一緒であるなら、混沌を倒すために聖女としての役割を果たす方が、よっぽど自分の名前をよに売り出せるっていうのに、それもしない。ただ、怠惰に貢がれる日々を送ってるってだけか……それだけのために」

「そう……でも、ヘウンデウン教と繋がっているのが凄く怖いというか。それを、周りの人は知らないわけだし。知ったとしても、彼女への盲目的な愛が冷めるわけでもないだろうから……かといって、ヘウンデウン教の人達も、偽りの愛を注ぐための道具だとも思っていなさそう……じゃあ、やっぱり?」

「やっぱり……?何だ?」

「え、ああ、ううん。何でもない。ちょっと思うところがあって」

「話してみろよ。案外それがあってるかも知れないだろ?」

「うーん、それでも。まあ、このはなしは置いておいて」

「おくなって」




と、アルベドに突っ込まれたが、私は苦笑いで返しておいた。


 逆ハーレムを作った後、飽きて、ヘウンデウン教と帝国を争わせる。そして、戦争を起こして、世界を滅亡させ、また一から……そう、それは繰り返し遊べるゲーム見たいな事をするのではないだろうか、と一瞬思ったのだ。彼女が、エトワール・ヴィアラッテアが、この世界がゲームの世界であると認識しているかしていないかにも寄るけれど、彼女は、誰かの命を糧にして、この世界を巻き戻す方法を知ってしまった。私がいないから、世界を再び巻き戻すことは不可能かも知れないが、他の方法を見つけてそれを繰り返すつもりなら?

 ゲームをプレイしてたときは、クリア後はもう一度楽しむためにリセットするけれど、現実でそれをやられたら――と考えると恐ろしくて仕方がない。積み上げてきたものを更地に戻して、また積み上げていく。前と同じように積み上げられるわけでもないのにそんなことをするなんて。前の世界にも前の世界なりの思い入れがあるだろうに。

 ただ分かることは、アルベドまで、自分の支配下に置こうとしていること。これだけは止めなければと私は、次の策を練ろうとした。一番は彼女に会わないことだろうが、身体を取り戻すという目的を忘れているわけではないため、彼女に近づかないという方法はとれない。堂々巡りのまま事態は進まない。正面突破できるとするのなら……私がもっと魔法を上手く使いこなせるようにならなければならない。




「はあ……」

「どうしたんだよ。ため息なんてついて。ノチェにでもあっていくか?」

「後で会うことにする。というか、ノチェとアウローラすっごい仲悪いから、ノチェがこっちにきて働くってなると、相当荒れるだろうなあって」

「まあ、でも、珍しいな。ノチェがあれだけ感情をむき出しにするなんてよお」

「感情をむき出しに……まあ、怒っているっていうのは分かるんだけど」




 アウローラと違い、顔に感情が出るタイプではないので、怒っているのは分かっていても静かに怒るタイプなんだなと思った。彼女たちが、二人で私の周りのお世話をするとなると、本当に喧嘩が絶えないだろうなと思う。陽キャタイプが嫌いながらも、アウローラとは上手くやっているし、ちょっと怖いけどしっかりしているノチェとも仲良くできた。けれど、そんな少し苦手同士に挟まれ、喧嘩が絶えないと思うと胃に穴が開きそうだ。




「うぅ……でも、ノチェが来てくれるのは嬉しいかも。でも、アルベドは?」

「俺のメイドじゃねえしな。それに、俺は基本単独行動だ」

「ちょっと危ない気が……だから、アンタは公爵子息でしょ?一人で動いても大丈夫なわけ?護衛とかはつけなくて……」

「俺を守れるようなやつがいると思うか?守っても、命を引き替えに守られるなんてごめんだぞ、俺は」

「確かにそうかも……あっ」

「あって、何だよ」




 メイドや護衛の話をしていて思いだした。私の二人目の護衛であったアルバ、そして侍女のリュシオル……彼女たちの居場所についても調べたいと思っていたんだ。




「ちょっとお願い聞いてくれる?アルベドの家の力もかして欲しいというか……私の……私の、前の世界の親友、侍女のリュシオルを探して欲しいの」





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