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129 情報収穫なし




「ステラ様!」

「ステラ様ああ~~もう、いきなりいなくならないで下さいよ。探したじゃないですか」

「ご、ごめん……」




 会場に戻れば、ノチェと、アウローラが慌てた様子で私に近寄ってきた。多分、ノチェもアウローラも、アルベドとフィーバス卿に、私をしっかり見ているようにって言われたのに、私がいなくなったからびっくりしたのだろう。それはとても申し訳なかったと思ったし、ブライトと話しているときから、彼女たちの気配が消えたので、後ろの方にいったのかな? とこっちも思っていた。多分、あの時から、ベルが魔法をかけていて、私が彼女たちに見え無いようになっていたのだろう。魔法を使ってもバレないのはベルぐらいだし、彼奴がやったとしか思えなかった。それは良いとして、もの凄く心配してくれたみたいだったので、本当に申し訳ないことをしたな、と感じた。私は二人に謝りながら、続けてアルベドにも謝った。




「ごめん……その、防御魔法のことすっかり忘れた」

「本当にしっかりしてくれよ。もし、また毒におかされたりでもしたらどうにもならねえからな。のこのこついて行くのも、ほんとお前変わってないよな……」

「あはは……キモに免じます」




 結構怒っているなと言うのが伝わってきて、私は、ここで変に謝るとまずいと思い、普通に誠心誠意謝っておいた。後からのことも考えて大人しくしておいた方がいいと。




「で、さっきの事なんだけど、アルベドは何で、べ……ラアル・ギフトに違和感を覚えたの?」

「あ?んなの、魔力がちげえなって思ったからだよ。いや、元からああだったかも知れねえし、そうじゃなかったかも知れねえけど。俺もよく分かんなかった……だから、聞こうと思ったが、彼奴の魔力……やっぱり、前と違って底知れなくて、そこで追求するのやめたんだよ」

「まあ、危険だしそれが正しいかも」

「だから、お前が勝手にいなくなって、危険なやつと会ってたら、心配するだろうが」

「だって、アルベドが戻ってくるの遅かったんだし仕方ないじゃん」

「俺のせいかよ」

「そうです。アルベドが悪いんです!」




 私がそう言えば、強く言い返せないのか、ぐぬぬ……と、アルベドは唸ることしかできなかった。こういうとき、おれてくれるんだ、とおもいながら、事実だから認めたのか、とか色々考えてしまう。まあ、私が一番気になっているのはそれではないので、置いておいて。




(……まあ、アルベドぐらいになれば、ベルの魔力に気づくこともあるかも。底知れない魔力っていうのはあながち間違いじゃないし。悪魔の魔力って相当危険なのかもね)




 本当にキモに免じて、これからはベルであっても、他の仲がいい人であっても警戒を解かないようにしようと思った。いや、この世界に戻ってきたからは、大分そうだったはずなのに、アルベドや、他にも優しくしてくれる人と関わっていく内に、また人を信用するって……いいことなんだけど、警戒が解けてきて。そこにつけ込んでくる人の危機察知というか、それができていないようにも感じた。いつも誰かを疑う……なんてこと、本当はしたくないけれど、それでも、誰が敵で、味方か分からない状況ではそれが正解だって、知っていたはずなのに。




「それはそうと、アルベド。エトワール・ヴィアラッテアと何を話したの?」

「あーいや。お前が欲しいような情報は」

「だから、何を話したのって聞いてるんだけど。内容が有益なものか不利益なものかはどうでもいいから、話して」

「へい」




と、アルベドは諦めたように肩を落とした。その後ろで「アルベド様が尻に敷かれています」、「ステラ様には、とことん弱いんですね。アルベド・レイ公爵子息様」と、ノチェとアウローラが口々に呟いている。尻に敷くとか、そんなつもりなかったのに、周りからはそう見えるのか、と衝撃を受けた。


 アルベドは確かに、優しいというか、私の話に対してはシュンとなるけれど、他の人に対してはオラオラまっしぐらだし……と、対私と、その他に対してのアルベドって確かに違うな、と客観的に見たら思った。

 まあ、私が欲しいのはそういう周りからの視線ではなくて、エトワール・ヴィアラッテアの情報なのだ。




「で?」

「……いや、世間話だよ。つか、お前の時みたいな、綺麗な瞳の色してなかったぞ?」

「瞳の色?もしかして、目で洗脳するタイプとか?その、目を見たとき、ぐわんぐわんしたとかない?」

「そんな感じじゃ……なかったな。だが、話を続けようとはしていたみたいだな。それに、お前と違って、お淑やかだったし」

「は、はあ!?」




 アルベドは、ポツリとそう零したが、その一言が聞き捨てならなくて声を上げてしまった。さすがに、周りの人はこの声には気づいたようで私達の方を見る。ノチェとアウローラは、もう、みたいな顔で私を見ていて、すみません、と身体を小さくして、アルベドの方による。アルベドも呆れてていたが、それ以上は何も言わなくて、私の方を見ていた。




(瞳の色が違うって、姿形……というか、身体そのものを持っていかれたのに、変わることってあるの?何だか不思議……)




 聖女の瞳の色が、純白……透明……でも、力を使うときは色付くみたいな話は前から聞いていたので、それかも知れないと考察する。しかし、その目の色で何か魔法に影響が会ったらと考えるともう少し注意深く見るのも必要かも知れない。まだ直接対面したことはないけれど。




「これは別に、お前への悪口とかじゃなくてだな……その、なんつーか。ちげえなって。顔も声も一緒で、元がお前だったから、そりゃ、戸惑ったぜ?でも、違うんだよ。そうじゃないって」

「まあ、私はここにいるし」

「中身が違うだけで、こんなにも違うんだなって思ったって話だよ。やましいことなんて何もねえし。それに、そのお淑やかっつうか、演技しているところが気持ち悪かったんだよ。やっぱり、俺の知っているエトワールは、お前しかいねえって」

「あ、ありがとう」




 誉められたのか、信じていると言われたのか。どっちの意味でも何だろうけれど、そういって貰えたことは嬉しかった。アルベドは、騙されていない、洗脳されていない。きっと、エトワール・ヴィアラッテアは洗脳するつもりで話しかけに行ったのだろうが、それは失敗に終わっている。失敗に終わっている理由がなんなのか。それも確認しなければならないけれど、今はできそうにない。ただ、戻ってきてくれたことだけを、喜ばないと。




(にしても、全然、エトワール・ヴィアラッテアとリースの姿が見えないけど)




「今、彼奴らは席外してるぞ?」

「エスパー?私の心読んだの?てか、その……やっぱり、二人は一緒にいるの?」

「ああ、お前からしたら、胸くそ悪いかも知れねえけど、一緒にいるな」

「そっか……一番、洗脳が強いのはリースなんだろうね」




 リースは、私の処刑シーンを一番近くで見て、その後誰よりも絶望していたことだろう。だからこそ、その開いてしまった心の隙間につけ込まれて、私との記憶に蓋をおかれて、洗脳に強くかかってしまったと。深く潜り込まれた、その洗脳魔法は、簡単に解けそうにない。だからといって、そんな弱っているリースに嘘の恋心を植え付けるなんてどうかしているとおもっった。許せない……グッと、拳を握り込み、顔を上げられずにいれば、軽快なワルツが流れ始めた。




「ステラ、今日来た目的忘れんなよ?」

「りー……皇太子殿下に会いにいくことだけじゃなくて?」

「まあ、視察もだが、せっかく今日のために練習してきたんだろ?練習の成果みせてくれよ」

「れ、練習って……あああ、足、足踏んだらごめん」

「しゃーねえなあ。自信無いのはいつもの事だし、今回は許してやるよ。婚約者だしな」

「何それ」




 差し出された手を取って、私は顔をあげる。色々考えてもどうしようもない。いまできることからやる。それしかないのだ。




「ステラ」

「いこう。アルベド」




 一歩踏み出すには、十分な自信、勇気はここにある。





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