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128 違和感を抱いて、疑問を抱く




「あ、アルベド……!?」

「何だよ、そんな驚いた顔して。それとも、密会中失礼したか?」

「密会じゃないし……てか、戻ってきたなら、戻ってきたって言ってくれればいいのに。後ろから……びっくりするじゃん」




 へいへい、と全く謝る気が微塵も感じられない返事をし、私をベルから引き剥がすと、ベルト私の前に立ちふさがった。アルベドは大きいから、前に立たれると、ベルの顔が見えないなあ、と不満げにアルベドを見れば、また苛立ったように満月の瞳を細めて私を睨み付けた。

 怖い、何かしただろうか。てか、なんで怒っているのだろうか。

 ほったらかしにされて、一人で待っていたのは私の方なのに、何処かに行ったまま帰ってこなかったアルベドが私に何か言えるとでも言うのだろうか。ここで、とやかく言うつもりはないし、いったところで口論になりそうだし。グッと我慢して、私はアルベドの動向を伺った。




「ああ、お久しぶりです。アルベド・レイ公爵子息様」

「久しぶりじゃねえよ……てか、よく顔出せたな、おい。ラアル・ギフト卿」

「熱烈な挨拶、ありがとうございます。久しぶりだとは思うのですが。それとも、アルベド・レイ公爵子息様は、わたしのことをずっと監視していたというのですか?」

「するわけねえだろ。こっちも暇じゃねえんだから。だが、他人の婚約者に手を出すのはどうかとおもうぜ?」

「ステラ嬢から、誘惑してきてでもですか?」

「あ?」




 もの凄い勢いで、私の方を振向いたアルベド。額に欠陥浮いていて、怒っていることはそれだけでも伝わった。いや、そんな顔初めてではないけど、久しぶりに見た。これまた、怖いし、恐ろしいし、私がそんなことするわけないじゃん、と訴えたかったが、すごい凝相で睨まれたため、蛇に睨まれたカエルのごとく動けなくなっていた。ぷるぷると、ライオンを前にした兎かも知れない。本能では逃げろといっているけれど、身体が動かない的なヤツだ。




(どどどっどど、どうしよう!めちゃくちゃ怒ってるんですけど!?)




 私がそんなことできるわけないのに、アルベドは冷静さを欠いているのか、私を睨んでいる。いや、寧ろ、これは自分に――




「ステラ」

「ははははは、はい!何ですか!?」

「誘惑したのか?此奴を?危険だって分かっておきながら?」

「なわけないじゃん。てか、私に色気というものがあると思ってんの!?ハニートラップ?出来る訳無いじゃん。する理由もないし、私のタイプ外の男だし!」

「……だよな」

「だよなって、またそれもそれで酷くない!?何か、もっと、色気はないけど、可愛いとか……ああ言われてもびっくりするからあれだけど!」




 自分でいっていて何が何だか分からなくなってきた。要するに、擁護して欲しかったというか、否定するところは否定して欲しかったというか。難しい。

 アルベドは、落ち着いたようで、「すまねえ」と小さく謝った。はじめから疑うなんてことしなければいいのに。彼も彼で焦ったんだろう。ベルが悪魔だと知らないだろうけれど、ラアル・ギフトという人間が危険なのは、前の世界からだし。今は、さほど危険じゃないと私は思っているのだが、アルベドからしたら、その危険度は振り払えないわけで。

 アルベドの紅蓮の髪は夜風になびいて綺麗だった。黙っていれば、美形というか、イケメンなのはいつもの事だが、やはり彼は夜色に映えるなと思った。




「悪ぃって。遅くなっちまったな」

「何、そのヒーローみたいな臭い台詞」

「ヒーローにはなれねえだろ。なんなら、ダークヒーローだろ」

「ヒーローの自覚があるのが驚きなんですけど!?まあ、何をしていたか、後で聞くとして、本当にベ……ラアル・ギフトとは何もなかったから。アンタも、煽り耐性低すぎ……」

「はあ!?俺は心配して飛んできたっていうのに、そのいい方はないだろ」

「どうせ、挨拶してまわってきたんでしょ。エトワール・ヴィアラッテアには会ったの?」

「あ、ああ……」




 アルベドは歯切れ悪そうに言う。彼が帰ってくるのが遅かった理由はやはりそうだったのだ。洗脳されている感じはしないし、大丈夫だったのだろう。それについては、一安心できた。しかし、やはり、エトワール・ヴィアラッテアと接触したことで、何かしら、彼女側も気づくことがあったラだろうし気は抜けないわけで。




「あの、お二人さん。わたしのこと忘れていませんか?」

「あ……」

「部外者だろ黙ってろよ。つか、ほんと、テメェまで、ここにいるってどうなってんだよ。今回のパーティーは」

「何か他にもあったの?」

「いや、此奴がいるっていうのがまずおかしいんだよ。闇魔法の家門で呼ばれてるのは俺だけだし、此奴が来ている理由が分からねえ」

「そう……」




 アルベドには、ベルの洗脳は通じなかったのだろうか。それとも、同じ闇魔法だからこそ、感じる違和感があったのだろうか。ベルに答えを求めたが、彼はにこりと笑うばかりで、その答えを教えてくれなかった。好きに捉えてくれていい、というようなものを感じて、私は小さく舌打ちを鳴らす。敵でもないが、味方でもない。その体現だと思う。




「とにかく、私は、婚約者が戻ってきたので、これで失礼させて頂きます。ほら、アルベドいくよ」

「……いや、ちょっと待て」




と、アルベドは、私が背中を押したのにもかかわらず、その足を止めた。まだ何か突っかかるきかと不安になりながら、私は動向を見守っていれば、アルベドは、ベルの方へ近付いていき、上から下までじっくりみたのち、目を細めた。




「お前、本当に、ラアル・ギフトか?」

「え?アルベド?」




 その言葉に衝撃を受けたのは、ベルも同じだった。彼の魔法は完璧に聞いていたはずなのに、アルベドは、不思議だと、そう疑問を持ったらしい。これには、ベルも私の方を見た。助けを求められても何も出来ないというのに、困った人だと思う。人じゃなくて、悪魔か……とどっちでもいい考えを抱きながら、私はベルに首を横に振る。

 色々と起こったイレギュラーがかみ合わさってできた歪みといったところだろう。




「いや、ほんと俺はラアル・ギフトッスよ。どこからどう見ても。貴方が嫌いな、ラアル・ギフトでしょ?毒魔法の使い手の」

「……そうだよな。そう思うのが普通だし、テメェのむかつくツラ見てたら、俺の勘違いかも知れねえって思うさ。だが、何かやっぱりしっくりこねえだよ」

「……」

「ねえ、ねえ、アルベド。いいじゃん。あんまり関わらない方がいいんじゃない?一応、皇宮っていっても、ラアル・ギフトだし、魔法を使ってきたら危険じゃない?」

「防御魔法はかけてる。つか、お前はかけてねえのかよ。ステラ」

「あ……はいっ、すみません。忘れてました」




 しっかりしろ、といわんばかりに睨み付けられ、私のメンタルは傷ついた。確かに、彼がほんとにラアル・ギフトであれば、それ相応の対策を行って話しているだろう。でも、彼がベルだから私は防御魔法をしなかった。おそわれないという可能性だってないわけじゃないのに。




(だから、アルベドは疑ったのかも知れない……)




 私が、過去に、ラアル・ギフトにやられていることを知っているからこそ、無防備な私に対して、怒りのようなものを抱いているとか。そのせいで、ラアル・ギフトが、本来のラアル・ギフトではない、というように感じたのかも知れないな、と。それでも、ベルだってバレル法が、色々とリスキーな気がしたので、私はアルベドの服を無理矢理引っ張った。




「いてえって、ステラ」

「もういいの。水掛け論になるから。帰ろう。お、お邪魔しました~」




 私はそう勢いでその場を離れた。振り返り様、ベルはふりふりと手を振っていて、笑っていた。本当にイライラする。そう思いながら、駆け足で、会場の中へ戻った。





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