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117 お転婆娘と世話焼きな父親




「最近は、随分と励んでいるそうじゃないか。ステラ」

「あはは、ありがとうございます。お父様から直々に、治癒魔法を施して貰えるなんて」

「全くだ。ステラ……頑張るのはいいがほどほどにしろ」

「きもに免じます」




 足が痛い。パンパンに乳酸がたまっている感じ。馬鹿みたいに練習していたら、足を痛めてしまって、本末転倒……見たいな事になっちゃった。その様子を、フィーバス卿にみられ、アルベドから引き剥がされて今に至る。本当に恥ずかしいことこの上ないのと、フィーバス卿に足をみせるとかいう意味の分からないプレイ……じゃなくて、ことをしていることに、年齢も相まって、穴があったらはいりたかった。

 それでも、フィーバス卿はそういう目線でみることもなく、私に治癒魔法を施してくれた。どれだけいい人なんだ! と叫びたいが、また変に思われるのも嫌で何も言わなかった。取り敢えず、足はどうも内容で、フィーバス卿も安心しているらしい。何かあったら不味いのは全くそうなのだが……




「本当に、ステラには毎回驚かされるな」

「お、おてんばですみません……自分でおてんばっていうのもあれですけど」

「……落ち着きがないのか」

「ひぃ……ごめんなさい、お父様」




 まさかの悪口。いつもの調子で言われるものだからたまったものじゃないと、私は目に涙を浮べながら謝った。それに気づいたのか、フィーバス卿は別にそう言うことではない、と何処かばつが悪そうに、申し訳なさそうに頭を掻いていた。そう、別に、フィーバス卿が悪いわけでも、私がわる……いんだろうけど、そんな感じで。心配かけたのはその通りだった。

 フィーバス卿は治ったぞ、動かしてみろ、と私から離れていく。

 フィーバス卿に言われたとおり、足を動かしてみれば、確かに痛みも引いていて、綺麗な足がそこにあった。ステラの足って靴を履くより裸足でみせた方が綺麗なんじゃないかってくらい綺麗な形をしている。というのはどうでもよくて、取り敢えず、治ったことに感謝をいわなければと立ち上がる。しかし、治してもらったばかりで、バランスが取れず、そのまま倒れそうになったところを、何とかフィーバス卿に受け止めて貰った。大きな腕の中に居ることで、安心感と同時に、羞恥心が湧いてきて、私はバッと離れた。




「すすすすすす、すみません!」

「いや、気にするな。倒れなくてよかったな、ステラ」

「おおおお、お父様が支えて下さったので。ほんとお恥ずかしい限りです」




 この年で倒れそうになって、父親に支えて貰うって何!? と思ったが、別に、人助けは年齢問わないよなあ、何てことも思った。まあ、それもどうでもよくて、フィーバス卿が心配そうに見るので、それもまた恥ずかしくなって、顔を覆ってしまう。どの行動も幼稚に見えて、フィーバス卿を驚かせているんだろうなと思うと、もう何も言わずに座ったままの方がいいのかも知れないと思ってしまう。フィーバス卿が実際どう思っているか分からないけれど。




「ステラといると毎日退屈しないな」

「ええっと……それって、悪い意味で?」

「いや?何故そうなる。いい意味に決まっているだろう。この屋敷は、ステラが来るまで、氷のように冷たかったからな。まあ、その理由が俺であることは知っていたが、冬の氷が溶けたように、ステラが来てから温かくなったのは事実だ」

「そ、そうなんですか……私は、そんな」

「ステラの存在が大きい。アウローラも変わったしな。一皮むけたみたいだ」




と、フィーバス卿は感慨深そうにいう。長いこと、ここにいたフィーバス卿だからこそ、俺を感じられたのだろう。私は、引っかき回してばっかりだなあと思っているのだが、周りから見たらそうでもないと。そう思うと、何だか嬉しいなと思うけれど、これでいいのかとも思う。


 私はフィーバス卿の肩を借りながら立ち上がり、もう一度足を確認した。光魔法同士の治癒魔法は何の障害もない。けれど、闇魔法とはまだ一枚以上の壁がありそうだと。そこをどうしていくかは、これから私達の課題だろう。




「ありがとうございます。お父様」

「ああ。まあ、ほどほどにするんだぞ」

「はい」

「あとは……だな。少し、気になることがあるんだ」

「な、何でしょうか」




 改まって言われたので、私はまた何かしでかしたんじゃないかと自分の胸に手を当ててみる。でも、あまりにも該当するものが多すぎるせいで、何をやらかしたのか、逆に分からなくなってきた。でも、目に見えた、花瓶をわったとかはない……はずなのだ。となると?

 などと、色々思って見たが、私がソワソワしているのに気がついたのか、フィーバス卿のほうが申し訳なさそうにため息を吐いた。それだけでも、身体が反応して微醺となってしまう。やはり、やらかしてしまったのだろう。




「ああ、あの、また、私何か」

「いや、そんな構えるな。いいにくくなるだろう……はあ、違う。ステラ。パーティーに行くんだったよな」

「は、はい。そのためにダンス練習を」

「パーティーにいく理由……この間話してくれたものとはまた違う理由があるんだろう?」

「え……えっと」




 やばい、また何か疑われている?


と、身体が反応してしまう。今度は何が引っかかったのだろうか。フィーバス卿はめざといし、理由をしっかり話した方がいいような気もする。しかし、婚約者がいるのに、皇太子殿下を一目見たくてーなんていう理由が通じるとは思っていない。となると、それは言わない方がいいとして、かといって嘘を言ったところでバレるのは目に見えている。


 私が汗を掻きながら、フィーバス卿を見ていれば、彼は、はあ……と大きなため息をついた。




「別にどんな理由が合ったとしてもいい。お前が、危険な事に巻き込まれなければ」

「あはは、危険な事には……多分、巻き込まれないと思います。多分」




 フィーバス卿の心配を聞かなかったことにはできないし、これだけ心配してくれる人に対して、多分なんて失礼だと思った。でも、フィーバス卿も大分踏み込んでこなくなったから、それが不思議と、距離を取られているというようには思えなくて。




「でも、心配してくれているんですよね」

「ああ」

「その……心配してくれている理由とか、何故そう思ったのかとか聞いていいですか。お父様が、いきなりそんなことをいう人間には思えないので。何か理由があって、根拠合って心配してくれているんじゃないかと」

「別に。浮かれているというよりかは、心配、不安といった感情が感じられたからな。楽しみにしているはずのパーティーなのに、お前の顔は優れない」




 フィーバス卿はそういってもう一度私を見た。透明な青い瞳を見ていると、見透かされているような気がして、恥ずかしくなる。その一方で、この人を欺かなければと躍起になってしまったりもする。

 しかし、彼が何の根拠もなしに言う人でないことは、私にだって分かる。フィーバス卿の顔も、ただパーティーに行く娘を心配しているような顔じゃなかったから。

 私がそう聞くと、フィーバス卿は驚いたように目を丸くした。私が反論してくるとは思いもしなかったのだろう。もしかしたら、自分の胸騒ぎ、とか自分のただの感、と思っていたのかも知れない。




「そう、ですね。顔色が優れないのは事実だと思います。足も治してもらったばかりで、まだ不安もありますし」

「そうではなく」

「分かってます。お父様、この間、庭を直してからいくといっていましたが、あの時何かありましたか?」

「……ステラ?」




 何故それを、みたいな顔をしている。当たっていたのだろう。

 少しだけ違和感があった。フィーバス卿が、アルベドの様子を見てくると私が言った後、遅れてきたときのことを。きっと、何かあったんだって、私は予想している。その予想が当たっているなら、彼が心配している理由もそこに繋がるのだろうと。

 フィーバス卿は、何処かいいにくそうに、顔を歪めていた。




「お父様?」

「分かった。いおう。だが、これもにわかには信じられない話だが――」




 そう言ったお父様の口から飛び出したのは、衝撃の言葉だった。






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