06 解釈違い
「解釈違いなのよ! そんなふうに笑わないで!」
「何故だ? お前の好きなキャラ……」
「違うのよ! 今アンタが言ってるのは、推しキャラのコスプレをしてるコスプレイヤー本人も好きになるかってこと。なるわけないじゃない! 好きなのはあくまでキャラでコスプレイヤーじゃないの!」
私がギャンギャン叫び散らすと、リースは両手で耳を塞いでうるさいと言うように顔をしかめた。
「兎に角、アンタはリースであってリースじゃない! ってこと」
「いや、どう考えてもリース・グリューエンだろ。ラスター帝国の皇太子にして第一皇子」
「中身が違うって言ってるのよ! 耳腐ってんの!?」
私は、イラッときて怒鳴った。それでも尚、理解できないというように小首を傾げるリース中身元彼。
すると、彼の頭上の好感度がピコンという音共に1上昇した。
(今の会話の何処に好感度上がる要素あったっていうのよ――――!?)
私は、もう既に泣きたい気持ちで一杯になった。これって、完全にリースルートに入っちゃってるよね。
何てこったい。
そして、またあの機械音が鳴り響き、目の前にシステムウィンドウが現われる。
【リース・グリューエンの好感度が70%を越えたよ】
(だ――――ッ! 初めから越えてるっつぅの……)
私は消えたウィンドウを呪う勢いで睨み付け、その後大きなため息をついた。
「やはり、召喚で疲れているんだな」
「アンタと喋って疲れてるのよ」
そう言うと、彼は少しだけ寂しげに眉を下げた。
幸い好感度は上がりも下がりもしなかったが、これ以上上がったら困ると私は彼と極力会話をしないようにした。
付合ってた当初から訳の分からない男だったから……彼は。
「……それで、何でアンタがここにいるわけ?あ、因みに私はいつも通り召喚聖女をプレイしててうっかりエトワールルートをタップしちゃってこうなっちゃった訳だけど」
「俺も、召喚聖女ラブラブ物語をプレイしようと思ったらこの様だ」
そう、サラッとリースは答えた。
あのリースから『召喚聖女ラブラブ物語』何て単語が聞こえてきて私は頭が痛くなった。リースが、あのリースがラブラブとか言ってるよ! 本来なら絶対言わないのに!
リースは、相変わらずキラキラした笑顔を私に向けてくる。やめて、その笑顔が眩しいの。
「……へ、へえ。アンタも……というか、アンタあのゲームに興味あったっけ?」
私達は、お互いがお互いに顔を見合わせた。
どうやら同じゲームをしていて、私はエトワール、彼はリースに転生憑依してしまったようだ。
というか、ほんと何で彼が召喚聖女をやっているのか不思議でたまらない。
そう私が疑問に思っていると、私の心中を察した彼が口を開いた。
「お前が好きなゲームだったから……プレイしたらお前のこと分かると思って」
「え……」