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56 子供という副産物




「――っていうことなんだけど、え、これって話してよかった奴だよね?」

「はあ~~~~傑作だな。おい。つか、何だよ、結局は、子供が欲しかったってか?」

「アルベド、いい方気をつけた方がいいよ。これは、デリケートな問題だから」

「家族ってよく分からねえよな」




 次の朝、朝食を一緒に取るということで、フィーバス卿の待つダイニングルームへと向かい最中、アルベドと昨日の話をしていた。話して良いないようだった気がしたから話したけれど、変な風にアルベドが捉えたりしないかだけが不安だった。まあ、大丈夫だとは思うけれど。

 フィーバス卿がパパって呼ばせようとして失敗して、お父様と呼ぶことになったと言うことだったり、アルベドが変わったなあといっていたよっていうことだったり、兎に角色々。色々といっても、大体二つ。アルベドは話半分に聞きながら私の前を歩いていた。


 アルベドに、家族の話をするのはどうかと躊躇ったけれど、伝えられる内容というのがそれくらいしかなくて、話したら、案の定、そこまで気がないようで、サラッと受け流されてしまった。アルベドだけじゃなくて、攻略キャラは基本、ダズリング伯爵の双子以外は、家族仲があまりよろしくない。アルベドなんかとくにそうで、父親との関係はどうか知らないけれど、兄弟ですれ違っている。だから、話すのは少し気が引けた。

 アルベドも、リースも皇帝と仲が悪いし、ブライトもファウダーとの関係をどうにかしようとしているけれど上手くいかなくて、グランツも半場家族に裏切られたような形でここまで流れ着いたし。攻略キャラは、家族と仲が悪くないといけない設定なのか、呪いにかかっているのかと思うくらい家族仲がわるい。だからこそ、ヒロインに愛されることで、真実の愛を見つけるのかも知れないけれど。




「まあ、そんなところ」

「上手くやっていけそうか?」

「上手くは……分からないけど、悪い関係にはならなさそう」

「なんかされたら、俺に言えよ?」

「何にもされないって」




 娘に手を出したら、それこそ最低だ。フィーバス卿はそんなことしないだろう。アルベドは気にしすぎだ、と私はフンといってやれば、アルベドは「そーかよ、へいへい」なんて適当に返していた。

 でも、私も、実際家族とはどういうものなのか分からない。友達ですら、前世、リュシオルしかいなかったのに、家族となったらまた話は違って。




「アルベドは、お父さんと仲良くないの?」

「寝たきりだから分からねえよ。それに、闇魔法の……それも貴族の教育の仕方は、間違ってるってよく言われるしな」

「え……」

「えってなんだよ」




 アルベドは、サラリと言ったが、彼は今自分で闇魔法の……と、断言した。あれだけ、差別を嫌っているくせに、それはいうんだと、私は不思議に思ったのだ。けれど、実際、闇魔法と光魔法が違うんだろうなって言うのはよく分かる。




「闇魔法は、人の魔力を吸う事が出来るだろ?」

「う、うん……」

「自分より強い子供が生れれば、最後はそいつに、魔力を吸い取られることも珍しくねえ。痕は、多く子供を産んで、自分の魔力に変換するとかな」

「……っ」

「そういうのが出来るんだよ。闇魔法は。嫌われる理由は十分だと思うぜ?」

「ねえ、じゃあ、もしかして、アルベドのお父さんって……」

「ラヴァインが魔力を持っていったな。まあ、いうて、少しだけどな」




と、アルベドは答えてくれてた。光魔法と闇魔法の違いについて、また一つ詳しくなったのだが、それにしても、惨すぎると思った。金魚とかも、間違って自分の卵を食べるけれど、自分の魔力を高めるために、魔力を子供から吸い取るなんて非道だと思った。けれど、そうしなければ、自分の魔力は衰えるばかり。仕方ない、という言葉では到底すませられないけれど。




(それにしても、ラヴィが持っていったって……)




 アルベド的にはそれはどうなのだろうか。彼が、自分の父親に対してどんな感情を抱いているか分からない。でも、前に聞いた話が本当なら、生き残った方が、公爵家を、爵位を継げるといっていた。もしかしたら、レイ公爵は、自分の命を吸いわざと吸い取らせて、生き残った方に爵位をわたすきなのだろうか。確かに、それは教育としてどうなんだといいたくなる。アルベドはそんなところで生活してきたから、私や、一般的な考えと違うのかも知れない。そんなことを考えてしまった。

 光魔法と闇魔法の明確な差。埋めるに埋められないその差は、これからも大きな溝としてのこり続けると思う。闇魔法が、そんな教育の仕方だとして、光魔法が全員いい家庭というわけではないだろう。貴族社会なんて、生き残るのが大変だから、厳しく教育されるかも知れない。だから、どっちに生れても、いわゆる親が茶に成功しなければ、結局の所、生きづらいと。そんなこと考えたくもないけれど。




「何か、ほんとデリケート……」

「家族に幻想でも抱いてたんだろ。ステラのことだから」

「だから……うんまあ、そうだね。でも、家族って良いものじゃないかもっていうのは、ずっと前から、うん」

「……」




 アルベドは何も言わなかった。もしかしたら、私がこの世界の人じゃないって気づいているのかも知れない。けれど、何も言わない。前世を信じないからとか、色々理由はあるけれど。自分も家族と上手くいっていないから、何も言えないとかそう言うのかも知れない。

 だからこそ、私は、フィーバス卿の養子、娘になったけれど、その実感が湧かなくて、少し苦しい。あの人は、家族が欲しかった、娘が欲しかったと言っていたけれど、私は、フィーバス卿の娘として適任なのか、とか考えてしまう。考えるだけ無駄だと分かっていても。




「まあ、家族にこれって言う決まった形はねえんじゃねえ?だから、そこまで気負う必要ないと思うけどな」

「そう、だけど」

「嫌なら、逃げだしゃいいはなしだろ」

「それって、あんまりにもその、薄情じゃない!?」




 サラッとそんな言葉が出てくるところは、アルベドらしい。でも、今逃げたら負けな気がするし、私も、家族だっていってくれる人の元で暮らしたいっていう思いもある。モアンさんとシラソルさんと暮らしていたとき、娘みたいだといわれたけれど、あれは、おばあちゃんと孫の関係だった気がする。否定するわけじゃないけれど、少し年が離れすぎているような気がしたから。でも、温かくて、家族ってこういうものなのかもなとか思った。

 だから、フィーバス卿とも家族になれないわけじゃないと思う。心の持ちようというか、私自身の問題。私が、踏み出さなきゃいけないと思う。




「大丈夫、逃げない」

「お前は、本当に強いな」

「強くないし!だって、不安ばっかりだし、今、第一歩目を踏み出した所なんだから」

「そーかよ」




 興味なさそうな声。アルベドのゴールはここじゃないんだろう。だからこそ、私がここで止っているのを鬱陶しく思っているのかも知れない。わたしだって、ここがスタートラインだと思っている。貴族という身分を手に入れて、リースに近付く。そして、エトワール・ヴィアラッテアの野望を打ち砕いて、それで元の世界に戻す。

 戻ったら、この関係も全て清算されてしまうのかも知れないけれど、それでも、今を全力で生きないことによっては何も変わらないと思った。

 私は、ダイニングルームに続く扉の前で立ち止まった。昨日とは、フィーバス卿と私は、関係が違う。父と娘。どんな顔すればいいのか、挨拶とかは? 色々考えてしまう。でも、自然に、家族らしく、私はフィーバス卿に接しようと思う。それが、上手くいくかどうかは別として。

 ギィ、と重そうな音を立てて開いた扉。既に、料理が並べられた縦長の机、その一番奥にフィーバス卿は座っていた。




「お、おはよう、おはようございます。ふぃー……お父様」





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