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【本編完結】乙女ゲームの世界に召喚された悪役聖女ですが、元彼は攻略したくないので全力で逃げたいと思います  作者: 兎束作哉
番外編 ~巡廻~

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09 未成熟な子供





 ラヴァインとアルベドの関係はどうだったか。


 私はよく知らないし、アルベドが気にかけていたけれど、殺したいほど憎い相手。アルベドにとって人間不信を植え付けた願人がラヴァイン。というのだけ、私が知っている情報だ。それ以外、何があったのかとか、本当はどうだったのかとかよく分からない。確かに、血のつながりがあって、でも、レイ公爵家はこの二人のせいで勢力が二分割されているとか。どっちが、時期公爵にふさわしいかともめているともいった。


 そもそもに、二人の思想が違う。


 自由で欲に従順なラヴァインと、光にも闇にも拒まれながら自分の正義を貫くアルベドじゃ、相反する存在なのだ。だからか、私はアルベドの思想に惹かれたというか、生き方に惹かれたわけだけど。




(最初こそ、一番危険人物!とは、思っていたんだけど)




 それが、いつの間にか一番信用出来る人間になっていて、自分でも驚いている。人に信頼を寄せること何てあまりないものだから、本当にアルベドは特別なんだと、自分でも思ってしまう。だから、早く彼の居場所を突き止めたいと。そう思ってしまうのだ。




「大切な人がいた気がするって本当?」

「うん、まあね。記憶喪失だから、分かんないけど」




と、ラヴァインはサラリと言う。そんな、自分から記憶喪失なんですーなんていうと嘘っぽく聞えるがそこはスルーしておこう。話が進まない。


 まあね、とか、分かんないけど。といっているから、きっと、思い出したところで、そういう曖昧な思いを抱き続けるんじゃ無いかなあとか思った。ラヴァインにとってアルベドは、言語化できない大切な存在だと、つまりそういうことなのだ。

 何だか、どっちも不憫に思えてきた。




「エトワール?」

「ああ、ごめん。一人で考えゴトしてた」

「酷いなあ、目の前に俺がいるのに。俺の話は聞いてくれないって言うの?」

「あーもう、そういう言い方嫌いなの。やめて鬱陶しい」




 事実、言葉通り。私をイラつかせないで欲しい。と言う意味で言ったのだが、それが面白かったのか、ツボに入ったのか、ラヴァインはケタケタと笑っていた。まあ、勝手に笑っていれば良いのだが、此奴の笑い方はむかつく。

 アルベドと比べると、笑い方が若干子供のような。子供が年上をからかおうとして、つまんないことをいうみたいなあれだ。アルベドは、年上が後輩を虐めるみたいな何というか、そういうノリで……

 自分でも言い表せないのが笏なのだが、兄弟とはいえど、年が離れればそれなりに対応が違うというか、雰囲気は違うワケで、イマイチ、ラヴァインの乗りについて行けなかった。




「えーっと、で、ら……ヴィは、何にも覚えていないんだったよね」

「そうだよ。何回もいってるじゃん。エトワールの方が記憶喪失なの?」

「もう、何も教えてあげないからね」

「ああ、待って。ごめん、謝るって」

「全然心がこもっていないから嫌よ」




 見て分かる。


と、私が言えば、ラヴァインは気まずそうにしていた。こうなることが分かっていても、その好奇心というか、イタズラ心は止められないのかと、自分に節制できない人間なのかと呆れてしまう。かという、私が言うことではないのかも知れないけれど。




「大切な人……ほら、エトワールは、俺に兄がいるみたいな感じで話してなかった?」

「聞いてた?」

「いや、言われた気がして……いや、いった!」




と、ラヴァインは押し切っていった。


 いったかも知れないし、いわなかったかも知れない。それこそ、ラヴァインのいう記憶喪失みたいなところが私にある……いや、これはただのボケである。

 それは良いとして、ラヴァインが好奇心に溢れた目で見てくるので、私は彼にラヴァインの兄について語るべきか迷ったのだ。




(ここで思い出してくれたとしても、アルベドが今どうなってるか分からないし。そもそも、アルベドがきっかけで記憶喪失とかになっているとしたら……)




 色んな可能性を加味して、いうべきか、いわないべきかと悩んでいた。

 けれど、ラヴァインの目を見ていると、教えてあげたくなってしまったので仕方がない。




「いたわよ。いたわ……というか、多分今もいる」

「何で疑問系なの」

「……」

「言えないこと?俺に隠し事?」




 そう、ラヴァインは詰め寄ってきたけれど、私には答えようのないことだった。多分、最後に一緒にいたのはラヴァインだし、アンタが覚えていないなら、アンタが知らないなら私が知るはずもないことだった。此奴が、唯一アルベドを探す手がかりだというのに。

 私は、詰め寄ってきたラヴァインを押しのけながら、「隠し事ではない」ときっぱり言った後、呼吸を整えた。苛立っても仕方のないことだから。




「いっておくけど、意地悪しているわけでも、隠し事しているわけでもないか」

「じゃあ何?」

「本当に知らないのよ。アンタには、色んなこと聞かせて、思い出させるのが手っ取り早いし、その方が良いとは分かってる。でも、アンタの……前のアンタのことを知っているから、安易に教えられない」

「前のって、記憶喪失になる前の俺の事」

「そうよ。それしかないじゃない」




 少し、強い言い方になってしまったが、今の自分は無害ですみたいなかおをするもんだから苛立って仕方なかったのだ。此奴がこれまでやってきたことは許しがたいことで、私も思い出すだけで、言語化できない怒りがわき上がってくる。それでも、こうやって彼と向き合えているのは、アルベドの弟だから、という理由だけ。それがなかったら、敵だった奴に、何か言おうとは思わない。危険すぎる。

 ラヴァインは私の表情を見て察したのか、ごめんね、と離れていった。満月に雲がかかったみたいに、寂しそうな暗い目を擦るので、言い過ぎたかと思ったが、撤回する気は無い。

 記憶がなくなったとしても、こちらに記憶がある限り、そして、犠牲者を出している限り、此奴の罪が消えるはずもない。人殺しを何とも思わない、彼だからこそ、私は警戒を解けずにいるのだ。




「記憶喪失になる前の俺が嫌われていたから、今の俺はエトワールに嫌われているって事?」

「そうなるわね」

「そっか」




 案外あっさりと認める物で、私は、違和感を覚える。本当に何でそんなに悲しそうな、傷ついた、見たいなかおをするのか分からない。本当は、好かれたいけれど、好きなこは虐めちゃう系の小学生かと思える、その態度に私は何て言うべきか迷った。

 もしかしたら、早くにそういう汚い世界を見たせいで、心が成長していないのかもと。

 ラヴァインが時々見せる子供のような無邪気な顔は、そこからきているんじゃないかと思えるぐらいに。




(もしそうだったら……でも、アルベドはそれでもしっかりと……)




 兄という意識が彼にあったから、しっかり育ったのかも知れないけれど、そうやってしっかりしなきゃと進んでいく兄を追いかけて、追いつけなくて子供のまま止ってしまったのがラヴァインだったとしたら。そしたら、彼らの間にずれが生じても可笑しくないと思った。

 これは、私の気のせいじゃ無いと思う。





「でも、今のアンタは嫌いじゃない」

「え?」

「今のアンタは、前のアンタじゃないわけだし。まあ、かといって記憶が戻ったら今のアンタがいなくなる可能性もあるかも知れないけど、覚えている可能性もあるわけでしょ?前のアンタは、酷かったけど、今のアンタはまだ酷いことしてないし……ああ、何て言ったら良いのか分かんないけど、そんな捨てられた子犬みたいな目をしないで」




 そう言うと、ラヴァインはふはっと笑った。それはもう、嬉しそうに。

 嫌いじゃない、と言われたからだろうか。それとも、今の自分を肯定されたから?

 理由は分からないけれど、兎に角嬉しい、が顔全体に広がっている感じだった。




(何だ、そんな顔出来るの……)




 見れば見るほど、何かアルベドに似ていて、兄弟なんだなあと改めて感じて、何故か私はラヴァインの頭を撫でていた。ふわっとした髪の毛は、撫でると意外とサラサラとしていて気持ちが良い。




「は、へ……エトワール?」

「何よ」




 今度は、顔に困惑と、恥ずかしい、見たいな物をくっつけて私を見ているラヴァイン。こんなに表情がころころと変わる奴だったのかと、また彼の一面を知れた気がする。敵同士だったら、きっと見えなかった表情なんだ。




(追加攻略キャラ……全然未だに掴めていないのよね)




 思えば、此奴も攻略キャラで、ヒロイン……エトワールにだって好意を向ける可能性があった奴なんだ。そういう可愛いところ、萌えポイントはあるはずなのだが。それが、これだというのだろうか。

 どっちでもいいけれど。




「ゆっくりで良いんじゃない。アンタが、焦っていないなら、脳にもダメージいくだろうし、記憶はゆっくり思い出せば良いのよ」

「……そう、かもだけど」




 その目が、焦っているのはエトワールの方でしょ? 見たいなものを含んでいるように見えて、私は目をそらす。

 確かに、アルベドの事を考えると、ラヴァインに早く取り戻して貰う方が良いのだろうが、かといって、一気に思い出して、脳にダメージがいったら、またその期間待たなければならないのだ。



 それに――――




(ラヴァインのことを知りたい。今度は、ちゃんと向き合ってあげたい)




 攻略キャラを救うのが、向き合うのがエトワールストーリーの肝だとリュシオルに聞いたから、それを実行するチャンスじゃないかと。私は、一人の人間として、不完全なラヴァインと向き合ってあげたいと、そう思ったのだ。絶対に、そんなこと口にはしてやらないけれど。




「私なら大丈夫よ」




 そうやって笑うのは、強がりじゃない。





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