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【本編完結】乙女ゲームの世界に召喚された悪役聖女ですが、元彼は攻略したくないので全力で逃げたいと思います  作者: 兎束作哉
第十章 誰もが欠けないハッピーエンドを

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43 夢から覚める鍵





 ――――朝霧遥輝。


 いいや、クラスは一緒だったよな……違ったような……あまり覚えがないけれど、その顔というかオーラですぐに彼が誰だか分かった。

 赤い瞳をこちらに向けて、見下ろしているのか怒っているのかよく分からない表情で私を見ている。




「蛍」

「何、巡」

「朝霧遥輝だよね」

「朝霧君よ」




と、蛍は、私の言葉に対して返した。いや、遥輝なのは間違いなかった。でも、この時の私と彼って面識あったっけと思ったのだ。




(……あったっけ……というか、何で私遥輝のこと知ってるんだろう)




 そもそも、遥輝呼びなのも可笑しいと言えば可笑しいのかも知れない。私が、高校時代仲良かったのは、蛍だけだし、そこに廻が追加されているだけだって。




「ど、どうしたんですか、わわわ、私に何か用ですか」




 驚きすぎてそんな変な言い回しになってしまった。遥輝は私を見るなり、去りに眉間に皺を寄せた。何を言われるんだろうか。そう思っていると私の手を掴む。




「ひぇ」

「悪い、驚かせた。だが、ここでは話せない。ついてきてくれないか」

「ええ、でも、授業始まっちゃうし……というか、何で私?もっと、可愛い子居るじゃん」

「俺が、そういう目で見てるって言いたいのか?」




 うわ、睨まれた。

 蛇に睨まれたカエルってこんな感じなんだろうなあ、何てぼんやり思いつつ、私の発言によって、彼が嫌なかおをしていることは確かだった。でも、それ以外の理由が考えられないのだ。




(というか、静かにひっそり暮らしていたいんだけど……) 




 遥輝って言ったら、学校で一番もてるとか言われている人だしそんな彼が私みたいな陰キャオタクに何のようかと思ったのだ。ここでは話せない。その内容も気になるところだが、本当に何故私が? の方が強い。

 私は蛍に助けを求めるために、彼女の方を向いたが、彼女は遥輝の出現にも驚かず、ついていった方が良いみたいなかおをしていた。どういうことなのだろうか。

 もしかして、遥輝もこの異変に気づいているとか。




(……さっきまで、これを現実だって受け入れようとしていたけど、矢っ張りコレは夢で、この夢から覚める方法を教えてくれようとしているのかも知れない)




 そうして、タイミングの良いところでチャイムが鳴ると、遥輝は何処かへ消えてしまった。もう少し話していたいと思ったのは、胸の奥にしまっておこう。




(調子狂うよなあ……)




 怖い顔していたけれど、私を心配するようなその顔が、頭から離れなかった。授業が全く入ってこないぐらいには。




「蛍……朝霧遥輝ってどんな人」

「どんなって、そうねえ……人間不信、かしら」

「人間不信……」




 昼休みが訪れ、私は一番先に蛍にそんなことを聞いた。蛍は、何のためらいもなく、朝霧遥輝は人間不信だと応える。なら、何で私に……という先ほどの疑問が蘇ってくる。けれど、先ほどの遥輝はそんな風に見えなかったのだ。もっと何というか、さっぱりしていたというか、そういう人間不信みたいなめをしていなかった。まあ、これは私の感じ方なんだけど。




「どうして、そんなことを聞くの?」

「え?どうしてって、話にいくから……その、知っていた方が良いんじゃないかなって相手のこと……知ってる方が良いって」




 私は、如何してと聞かれて、そう答えたが、何というか、蛍より遥輝のことを知っているような気がしたのだ。大事なところは抜け落ちているけど、断片的に記憶を覚えているというか。この世界が夢であるからこそ、そう思えているんだろうけれど。




「私に聞くよりも、巡のほうが朝霧君のことしっているんじゃ無い?」

「矢っ張りそう?」

「矢っ張りって、貴方何か思い出したの?」




と、蛍は私に聞いた。


 知っているなら教えて欲しいのに、何でそんなまどろっこしい言い方をするのだろうか。私は、頬を膨らましながら蛍を見た。蛍はそんな私を見ても、表情一つ変えなかった。こういう所は、蛍らしいと言うか、いつもと変わらなくて安心するというか。

 安心、というよりかは、誰かが作った蛍の像、じゃなくて、私の中にある蛍という人間を体現している感じで良いというか。

 これは、私の夢じゃなくて、誰かが夢見た世界なんだろうって、薄々思っている。その正体も。




「思い出してないよ。でも、何となくそんな気がするの。遥輝のこと知っているのは私だって。まあ、全部知ってるわけじゃないよ。考えていること全てが分かるわけじゃないしね……けど、遥輝のことなら一番知っているというか」

「それって、恋?」

「恋?」




 蛍の言った単語を自分の中で復唱する。

 その人のことを一番知っていたら恋、なのだろうか。いいや、違う。蛍が言いたいのはそういうことじゃないんだろうけど、何となく、これを恋なんて言葉で片付けてはいけない気がするのだ。




(恋……か、恋ね……)




 引っかかる部分はあるけれど、『遥輝』でないことは確かだ。




「恋じゃないって。どうして、そんな言葉が出るの?」

「いいや、そういう風に見えたから。巡は朝霧君の事になると必死になるというか」

「必死になった事なんてないんですけど!?」




 もしそうだったら、今頃遥輝は両手を万歳して喜んでいるくらいだろう。私からの愛はもらっていない、愛して欲しいとか言ってきた男なのに。




(え、待って……)




「巡?」

「矢っ張り、これは夢だよね」

「夢よ。貴方『たち』が見てる、都合の良い夢じゃない。今頃思い出したの?」

「ようやく言ってくれた。いや、確証がなかったというか……蛍も気づいていたんならいって欲しかったなあ。何か、遠回りした気がする」

「自分で気づかなきゃいけないのよ。今、私は、外から力を少し送っているだけの残像に過ぎないし……私ですら、この夢を見せている張本人が作ったオブジェと変わらないわ」




と、蛍は言う。 


 操られているんじゃなくて、そういう物なんだと、シナリオ上、与えられた役割なのだと言う。

 けれど、蛍が言ってくれたことで確証に変わる。

 これが夢なんだと、覚めないといけない夢なんだと。

 さすが、わたしの親友だと思った。夢でもはっきりと意識がある。彼女は、自分は作り物だと言ったけれど、その創作者の思い通りにならない存在なのだと。ヒントをくれていた。もし、このシナリオから、夢から、蛍が除外為れていたとしたら、きっと気付けずにいただろう。




(じゃあ、遥輝は?何で、彼はここにいるの?)




 何故、蛍をこの夢の登場人物として採用したのか。蛍なら、邪魔しないと思ったからだろうか。なら、一番邪魔だと思うはずの遥輝を何故、この夢の中に登場させているのか。不思議だった。大体誰がこの夢を見せているか分かった今、遥輝がここにいるのは不自然なのだ。


 もしくは――――




「蛍」

「何、巡。まだ何かあるの?」

「遥輝……って、もしかして、この夢の世界の人間じゃない?」

「さあ、それは応えられないわね。私には、そう設定されていないから」

「そう……じゃあ、そういうことなんだ」




 夢の世界として遮断されたこの空間。普通なら外部の人間は入ってこれないはずなのだ。でも、遥輝はきた。何かしらの方法を使って、私の夢を覚まさせるために。




「もう、起きる時間じゃない?」

「蛍……私は、アンタともう一回高校生やり直してもいいって思った」

「……」

「でも、もう過ぎ去った時間は戻らないし、私ももう一回高校生やろうってきにもならない。私の青春は過ぎちゃったし、どうせ、また陰キャを極めるだけだし。でもね」




 此の世界で、妹がいて、家族との仲も良好で、そんな世界が合ったらいいなとは思ったよ。

と、私は蛍に告げた。


 そうして、彼女にお礼を言って教室を飛びだす。

 遥輝が何処にいるかは知らないけれど、あの屋上へ続く階段に行けば会える気がした。彼と出会ったところだから。何となく、そこにいる気がして。




「遥輝!」

「……巡」




 ほらいた。



 屋上へ続く、階段の一番上に遥輝はいた。私を見ると、その赤い瞳を輝かせて私を見る。

 私は、全速力で階段を駆け上がった。彼が、この夢から覚めるための鍵。そう思って、手を伸ばす。




「遥輝……ううん、リース!」

「エトワール」




 彼の名前を呼んだ途端、学生だった遥輝の姿は、一瞬にして私の大好きな推しの姿へと変貌する。今の彼の姿に。




「やっと目を覚ましたか。エトワール」

「アンタ、強欲すぎ。夢にまで出てこないでよ」




 飛び込んだ私を抱きしめて、愛おしいものを見るかのような瞳で私を見つめて、リースはフッと微笑んだ。





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