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【本編完結】乙女ゲームの世界に召喚された悪役聖女ですが、元彼は攻略したくないので全力で逃げたいと思います  作者: 兎束作哉
第十章 誰もが欠けないハッピーエンドを

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21 戦況を変える策




「エトワール。何か、良い策でも思いついたのか?」

「うん。というか、凄い早さで戻ってきたけど、大丈夫なの?」

「これくらい、耐えれないようでは、ヘウンデウン教おろか、混沌とは戦えないだろう」

「……何だか心配になってきた」




 私が名前を呼んだ途端に、すっ飛んできたリースに怖さを感じつつも、呼んだのは自分なんだからと、心を落ち着かせることにした。まあ、来なかったら来なかったで、次の作戦に映るだけなのだけど。

 アルベドとブライトには私の声が聞えていないのか、レヴィアタンと戦っている状態だった。まあ、それぐらい真剣に戦っててくれた方が良いんだけど。




「それで、お前の策とはどういうものなんだ?」

「手、かして」

「何故?」

「良いから手!」




 私のいきなりの行動に、目を丸くしたリースは、中々手を出さなかった。いきなり言われたんだから仕方ないし、私から手を繋ぐなんてことしなかったから、これに驚くのは仕方がないことだと思う。でも、この状況下、これくらいしか私の出来ることは無かったから。




(……聖女の魔力を分け与えられた、攻略キャラは覚醒する。それは、ブライトとグランツで実証済み)




 私から考えたことじゃなくて、教えて貰った事ではあるけれど、この方法なら、リースの力を引き出せるのではないかと思った。気を抜くと、持っていかれそうになるけれど、これも、制御出来るようになってきたのだ。

 大丈夫だと、私は言い聞かせ、リースに早くを出すんだと念を押す。

 リースは渋々といった感じで私に手を差し出した。私は、その手を掴んで、魔力を注ぎ込む。どうしても、この感覚には慣れなかったが、魔力がだんだんとリースに行き渡っていくのが自分でも感じられた。




(……量を間違えたら、私の魔力は残らないし。後は、ブライトにもアルベドにもあげようと思ってるから、これくらいで良いかな)




 私は、そう一人で結論付けて手を離す。リースは名残惜しそうにはなれていく私の手を見ていた。繋ぎたかったからじゃない。と言うことは、リースも分かっているだろうが、そんなかおをされると、こちらが傷つく。




「何よ」

「いいや。こういうことだったのかと思ってな」

「こういうこと以外何があるって言うの」

「積極的だと思ったんだ。まあ、そういう策なんだろう」




と、リースは、色々べちゃくちゃといったが、フッとその瞳を開き、爛々とルビーを輝かせた。先ほどよりも赤色が濃くなっている気がする。




「どう?」

「ああ、大分変わったぞ。身体が軽くなった感じだ。それに、うちから温かいものを感じる。これが、お前の魔力なんだな」

「聖女の魔力って凄く貴重だからね!」

「分かっている。ありがとう」




 フッとリースが微笑むと、ぶわりと内側から熱い何かが込み上げてきた。それは、リースのいった魔力じゃなくて、もっと違う何か。

 顔が熱くなるのを感じながら、再度お礼を言って走り去っていったリースを見送った。私は呆然とその背中を見送りながら、このままじゃいけないと自分に活を入れる。




(見惚れてちゃダメ。まだまだ、やることは一杯あるんだから!)




「アルバ。私達ももっと前に向かおう」

「ですが、エトワール様」

「大丈夫。私は平気。それに、近くに行って大きいのぶっ放してこないと」




 あの二人を見つけて、魔力を分け与え、覚醒して貰いつつ、私も大きな一撃を食らわせようと思った。そのためには、レヴィアタンの近くに行く必要があると。

 不安げなアルバを安心させつつ、私は甲板の銭湯へと向かう。




「ブライト!」

「エトワール様、何故ここに?」




 その道中で、宙を舞いながら、レヴィアタンに攻撃をしているブライトの姿を見つけた。魔道士は、船に残って、船を守るものと、空中からレヴィアタンに攻撃する二つの部隊に別れていた。それはきっとブライトの指示なんだろう。綺麗に別れていて、どの船も防御魔法で守られていることから、守備も良いらしい。

 ブライトは、私を見つけると、すぐに隣に降り立ち、ここは危険だからと言わんばかりに、私の肩を掴んだ。だが、すぐに離し、すみませんと頭を下げる。

 見れば、捕まれた肩のところが少しだけ赤くなっていた。ブライトの手のひらには血が滲んでいるようだった。




「見せて」

「これくらい平気なので。ですが、エトワール様は何故ここに?」

「えっと、良い策を思いついて!」

「しかし、ここにいては危険ですよ。先ほど、殿下がもの凄い勢いで走って行くのを見えましたが……その殿下のおかげで、少し戦況は変わりましたけれど。あれも、エトワール様が?」




 察しが良いブライトは、リースに私が魔力を分け与えたことを勘付いたようだった。そして、私がここに現われた理由もすぐさま理解する。




「エトワール様、魔力は大丈夫なんですか?」

「平気、平気。聖女だよ?舐めないでよね」




 私がそうやって笑えば、ブライトは「エトワール様らしいですね」と、少しだけ困ったように笑った。私の意思が曲がらないってそう感じ取ったのだろう。ここにきてから、長いこと付合って貰ってきたブライトだからこそ、私の性格をよく理解しているのだろうと。

 私を理解してくれている人が一人でも多くいることがこれほどまでに嬉しいと、私は心が温かくなるのを感じた。

 私は、ブライトの手を握って魔力を注ぎ込む。先ほどよりも少なめを意識して、ブライトに魔力が渡っていく感覚に身を委ねる。しかし、意識まで持っていかれないようにと踏ん張りを利かせて。


 次に目を開ける頃には、ブライトの黒髪の毛先が、少しだけ紫色になっているのが見えた。綺麗なアメジスト。魔力を分け与え、覚醒した証拠だった。




「ありがとうございます。エトワール様、これでもう少しだけ、頑張れそうです」

「もう少し?」

「はい。エトワール様のおかげで、戦況が変わったので。殿下も、僕も、これだけ魔力があれば、レヴィアタンも……」

「そう?それなら良いけど」

「どうかしましたか?エトワール様」




 ブライトはもう少しといった。それほどまでに、レヴィアタンの体力が削れていると言うことだろうか。それとも、私を落ち着かせる為にわざといったのだろうか。そこの所を、しっかりと知りたかった。

 レヴィアタンを倒せるか、倒せないかで、アルベドにまで魔力を分け与えるかどうか決まるから。少しでも、魔力を温存したいとは考えているから、私の出る幕があるかどうか、そこだけ気になったのだ。




「本当にもう少しで倒せるの?」

「はい……とは、言い切れませんけれど、かなり削ったと思います」

「でも、凄く強いんだよね。レヴィアタン」

「そうですよ。並大抵の人間には倒せません。ですが、今回は、混沌を倒すために選ばれた選りすぐりの人ばかりですから。レヴィアタンよりも混沌の方が強いですから」

「それは、分かるんだけど……じゃあ、もう私はいなくても大丈夫って事?」




 そう聞くと、ブライトはどう答えたら良いか分からないといった表情で私を見た。

 まあ、「大丈夫なので、下がっていてください」と、魔力を分け与えられた後に言えるかどうかも問題なのである。何か、捨て駒じゃないけど、魔力供給要因みたいに扱うことになってしまうのではないか、とブライトは心配しているのだろう。そんな心配はしなくても良いのだが、ただ、本当にレヴィアタンにもう少しで勝てるかどうか。ただそれだけを知りたかった。




「ブライト、どうなの?」

「……それは、やってみないと分かりません」

「だったら、私はまだいる。と言うか、私がとどめを刺すから」

「え、エトワール様がですか?」

「凄い吃驚してるけど、そんなに驚くこと?」

「い、いえ……ただ」




と、ブライトは言葉を詰まらせた。


 私のことを知っている、理解してくれるようになったとはいったが、こうやって突拍子もないことを言うと、エトワール様ってそんな人だったのか、見たいな顔をするから面白い。少し失礼にも思うが、レヴィアタンを完全に倒すためには、私が大きな一撃を食らわせた方が良いのではないかと勝手に思ったのだ。

 それで、戦況が崩れてしまう場合は、何もしないけれど。




「分かりました。では、引き続きこのまま」

「分かった。ブライト、気をつけてね」

「ありがとうございます。エトワール様。エトワール様もお気を付けて」




 そう言って、ブライトは申し訳なさそうに飛んでいってしまった。

 二人に魔力を分け与えたが、まだ魔力は残っている。最近、自分でも魔力を持て余してしまうほどなのだ。しかし、魔力というものは、一定の量まで達すると、それ以上増えない傾向があるらしい。子供から大人へ。成熟したらそれ以上は魔力は増えないのだとか。だからこそ、最近魔力が増えていくこの身体はどうなっているのかと不思議だった。聖女だから、人とは違う仕様なのだろうかとか。

 まあ、そういうわけで、まだ魔力は十分に残っていた。




「エトワール様、どうしますか」

「アルベドに会いに行く。光魔法が、闇魔法のものに魔力を分け与えられるかどうか分からないけど、一人だけ渡さないってのもどうかと思うから」




 その方が、レヴィアタンも倒せるのではないかと。

 私はそんなことを思いながら、あの紅蓮を探しにかけだした。





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