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【本編完結】乙女ゲームの世界に召喚された悪役聖女ですが、元彼は攻略したくないので全力で逃げたいと思います  作者: 兎束作哉
第十章 誰もが欠けないハッピーエンドを

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03 思わぬ発言




「そんで?ヘウンデウン教の何について聞きたいんだよ」

「アンタの持ってる情報言える範囲で良いから知りたい」

「強欲だなあ……俺から得られる情報なんてそうねえのに」




 くすりと笑うアルベド。


 応接室に通されるなり、アルベドはどかっと椅子に座り、長い脚を組むと私達と向き合った。確かに、私は情報を教えて貰う側だけど、そこまで横暴な態度を取られるとカチンときてしまう。アルバもがるる……と犬のように唸っているし、私が怒るわけにもいかないとグッと堪える。にしてもアルバは女の子なのだろうかと、たまに思うときがある。それはさておき、アルベドが何処まで知っているのか。




(情報共有って大切だから……まあ、アルバがいたら教えてくれないかも知れないけれど)




 アルベドは、自分が信用した相手じゃないと喋らないんじゃ無いかとも思った。だから、アルバを連れてこようが、グランツを連れてこようが一緒な気がした。まあ、グランツはいないけれど。だったとしても、アルベドが、ここで話してくれるとは思わない。




「エトワール様、何故レイ卿にヘウンデウン教の話を?」

「それは、アルベドが……えっと、個人的に調べてるからよ」




 そうなんですね、と納得してくれたアルバ。こそりと、耳打ちし、何を話すかと思えばそんなことだった。アルバもアルバで、アルベドの事を警戒しているのだと思った。その理由はやはり、闇魔法の家門だからか。

 そういう差別はしない子だと思うけど、確かにアルベドは危険な香りがぷんぷんする男だから仕方がないとは思う。私もアルベドって危険な男って感じがするし。




(ちがくて!今はそう言うの考えている暇なんてないの!)




 脳内で、話がズレていきそうだったため、私は急いで首を横に振った。アルバにもアルベドにも変な目で見られたが、もうなれてしまったからどうでも良い。




「お前最近必死になってるなあ。そんなに重要なのか?ヘウンデウン教を倒すことが」

「ヘウンデウン教というか、トワイライトを取り戻すため。ヘウンデウン教は、混沌の復活を望んでいる集団って感じだから、その先にいる混沌を倒すのが私の目標」

「そりゃあ、大きな目標で」

「馬鹿にしてるの?」




 そう聞けば、アルベドはすぐに首を横に振る。相変わらず、煽るような言い方しか出来ないのかと、呆れてものも言えない。突っかかってしまいそうになるのはこちらが悪い気がするが、それにしても、その煽り癖だけはいただけない。

 私はそんな風に思いながらも話を続けることにした。




「私のことは馬鹿にしても良いけど、話が進まないから早く進めて。知らないなら知らないで良いから」

「はいはい。仰せのままに」




 初めからそうすれば良いのに、と思ったが口にはしない。取り敢えず黙って聞くことにした。




「目的は、お前らの知っての通り混沌の復活。結構前から教団としては存在しているな。闇魔法の者が集まっている。光魔法の者も少なからずいるがな。まあ、そんなことはどうでも良い。ただ、ヘウンデウン教は自己中な奴が多いんだよ。俺の弟みたいにな」




 そう言ったアルベドの顔は少し険しくなっていた。

 ラヴァインのことを考えているんだろうなあと思って、心中察して何も言わなかったけれど、アルベドは、矢っ張り弟のことを気にくわないものだと思っているようだった。兄弟のことはよく分からないけれど、きっと他にも色々と理由はあるのだろう。




「良いんですか、エトワール様」

「うわっ、吃驚したあ……って、何が?」

「その、レイ卿のことです。彼は、何でそんなことを知っているんですか?怪しいですよ」




と、アルバがこそりと耳打ちする。


 私は、どう説明すれば良いのか分からなかくて、何も言えなかったが、その小さな声さえもアルベドは拾いあげて、つまらなそうに口を開く。




「そりゃあ、俺の父親が、ヘウンデウン教に入っていたからな」

「な、何ですって」

「あ、アルバ落ち着いて」




 ガタンと椅子が倒れるぐらいの勢いで立ち上がったアルバを、私は制しつつ、どういうことかと、アルベドに問うた。アルベドは、さも当たり前かのように「いったとおりだ」としか言わず、それ以上答えてくれないようだった。




(じゃあ、矢っ張りアルベドも?)




 訳が分からなくなってくる。アルベドは、ヘウンデウン教のものじゃないと言っていたが、父親がそうだったと言うのなら、アルベドも教団に入信していても可笑しくないと思ったのだ。現に、ラヴァインがそうであるなら、そういう可能性だってあり得る。 

 だったら、グランツの幼少期にアルベドがあっていたというのも辻褄が合うような気がした。

 私は、アルベドの答えを待った。敵じゃないと分かっていても、身構えてしまうのは、ヘウンデウン教がこれまでどんなことをしてきたか知っているから。だからこそ、気を抜いてはいけないと本能が言っているのだ。




「んな、睨むなって。今は、違う。父親は、ヘウンデウン教にイラけがさして抜けたんだ。まあ、ラヴァインは違ったが……父親が抜けたその席を継いだみたいな感じだしな」

「アルベドもそうだったの?」

「俺は、ついていっただけだよ。俺は、混沌も女神もどうでもよかった。そんな大きなものの力を使わなくても、縋らなくても、結局争うのも助け合うのも人間の考え方次第って事だしな」




 そんな風に遠い目をして言うアルベドは、嘘をついているようには思わなかった。

 アルベドは、何というか、人間に絶望しているというか、人間不信だからか、人のことをどうでも良いみたいに見るときがある。それも、ヘウンデウン教の信者だった父親と関係があるのだろうか。




「まあ、つまり。俺が言いたいことは、俺はお前の敵じゃないッてことだ。父親も、ヘウンデウン教なんて滅びればいいって言ってるし、俺の味方。つまり、これまで父親が秘密裏に入手した情報を俺が聞いて、お前らに伝えてるって事だよ。皇太子殿下との約束も同盟もあるし、簡単には裏切れない。裏切りの先にあるのは死と、永遠の不信だ」

「……」




 アルベドはそう言い終えて、息を吐いた。

 永遠の不信。一度裏切れば、確かに、もう二度と信じてもらえない。また、裏切られるのではないかと疑って、その人を一生信じられなくなるかも知れない。そういうことだ。

 アルベドはそれを知っているのだろう。

 だからか、私も自分に置き換えてそれが分かってしまったのだ。グランツに一度裏切られたような感じだったから、彼を信じれなかった。今回裏切られても、ああ、そうなのかって何処か割り切っていた気がする。

 人は一度裏切られると、人を信じれなくなると言うことは本当らしい。




「アンタのお父さんのことは分かったわよ。他に情報は無いの?幹部の人数とか、これからの同行とか」

「んなの、全部知るかよ。今後の動向については、ファナーリクに調べて貰っている最中だ。俺の味方だが、中立にいてくれる唯一の執事。ラヴァインも探られていることを知りながら放置しているところを見ると、別に俺の事なんて取るに足りない存在だと、ふんぞり返って笑ってんだろうな。むかつく」

「……は、はあ」

「だが、もう少しで大きな戦いが始まる。帝国も、噂に寄れば、ラジエルダ王国に攻め込むそうじゃねえか」

「え、そんな話聞いて――――」

「そりゃ、お前にあの皇太子が話すわけねえだろ。巻き込みたくないって顔に書いてあるようなもんだし。でも、お前の力が必要となってくることは確かだぜ」

「……聖女だから?」

「まあ、そういうことだな」




 人ごとみたいに、と私は言いたかったがグッと飲み込んだ。

 確かに、リースに何も言われていない。この間の北の洞くつの事があって、魔法石の調達やら、武器や兵士の調整やらが終わったと言うことだろうか。いずれにせよ、決着を付けるつもりなのだ。混沌が完全に復活する前に。

 言われないと、心の準備が出来ない。リースはよかれと思って言わなかったのだろうが、それは返って私にとってマイナスなことだった。心の準備が何一つ出来ていないのだから。




「エトワール?」

「何?」

「不安そうな顔すんなよ。お前の事を守ってくれる奴は、いるだろう」

「何処に?」

「例えば、俺とか?」




と、アルベドは私の顔を覗いてフッと微笑んだ。





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