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【本編完結】乙女ゲームの世界に召喚された悪役聖女ですが、元彼は攻略したくないので全力で逃げたいと思います  作者: 兎束作哉
第八章 攻略キャラ×攻略キャラの共闘

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29 当てが外れる




「ダメだ。いかせられるわけないだろう」




 そう、念を押すように、リースは言うと、さらにその目を細めて私達を睨み付けた。ヘビに睨まれたカエルの気持ちが今なら分かるなど、阿呆なことを頭の片隅で考えつつ、矢っ張りか。と私は、唇を噛んだ。


 リースが許してくれるはずもない。


 それはわかりきっていたことだった。



 このはなしをし始めたときから、リースはいい顔をしていなかった。勿論、危険な目に遭わせたくないからと言うのもあるのだろうが、今回はその過保護が嬉しいとは思わない。元々、命令されるの縛られるのも私は好きじゃない。

 リースの気持ちは嬉しいけど、私だって引けない。




「何で?その薬草が手に入ればリュシオルは助けられるのに?」

「それは、手に入ったらの話だ。少し前に北の洞くつにいった調査団が、全員大蛇に食われ全滅したという話を聞いてな。それも腕利きの傭兵や、魔道士もいたのにもかかわらずだ」

「…………それは」

「それに、お前はまた一人で行こうとしていないか?」




と、リースは私を非難する。


 リースの話とブライトの話を合わせると、その大蛇の恐ろしさがだんだんリアルになってきて、一人で倒せそうにないと改めて思った。先ほどの、覚醒した魔力ならどうにかなる。も怪しく思えてくる。

 けれど、その大蛇はきっと闇に潜むものだから、光魔法をぶつければどうにかなるんじゃないかと思った。その逆の闇魔法は光魔法に対して特攻なのだけど。




「自分の事は棚に上げてよく言うのね!」




 私は、思わず感情にまかせてそう叫んでしまった。

 彼は「一人で行こうとしていないか?」と言ったが、そもそも、この間私が誘拐されたときだって、殆ど一人で来たようなものだと思った。彼は、皇太子である身分でありながら、護衛もつけずヘウンデウン教の潜む施設に乗り込んだ。私を助けに来てくれたのは嬉しいし、今でもその感謝の気持ちは忘れていないけれど、彼の無謀さと、私が関わると周りが見えなくなる視野の狭さに呆れてしまっていた。


 一途で、私のことを思ってくれているのは本当に嬉しいんだけど。


 でも、もうちょっと自分の立場を考えて欲しい。




(攻略キャラが二人かかっても、死ぬときは死ぬんじゃないかって思ってる……)




 此の世界はゲームの世界だ。と今でも思ってるけれど、だんだんとその感覚もなくなってきて、頭の片隅ではいつも「これはゲームだ」と叫んでいるけど、実際痛みもあるし、思い通りにもいかない。クエストだって失敗したし、予期せぬアクシデントが度々起る。

 だからこそ、攻略キャラは死なない。という方程式は崩れるのでは無いかと思った。

 現に、何度も怪我をしている。死にかけている。そのたびたまたま側にいた私が治癒魔法をかけたけど、いなかったら一体どうしてたつもりなのだろうと。


 もう少し危機感を持って欲しい。

 皇太子という身分で、狙われているんだから。


 あの紅蓮も同じく。




「だが、俺とお前は違うだろう。身分は……そう、かもしれないが聖女とは言え、女性一人でいかせられるわけないだろう!そんな危険な場所に!」

「じゃあ、誰か連れて行ったらいいっていうの!?」




 まるで、痴話喧嘩のようにお互いにお互いの意見を通したいためにぶつかり合って、話が進まなかった。

 もとから一人で行くつもりはなかったし、誰かを連れて行ったらいいのかという問題なのだが、きっとこれもリースはよしとしないだろう。自分以外といくのか? とまたいちゃもんつけてきそうな気がしたからだ。




「誰か……連れいてくか。だが、そいつが頼りになる奴か分からないだろう」

「頼りになる奴しか連れていかないでしょ、普通」




 ダメ。どうしても噛み合わない。


 リースが譲るきないのは分かったけれど、こっちも時間との勝負なのだ。でも、これまでの経験上、感情にまかせてあーでもない、こーでもない言ってしまうと余計なことを言ってしまいそうな気がして、私は無意識にブレーキがかかっていた。

 あの時みたいに、チケットを破られて衝動的に「別れよう」なんていったときみたいに。




(冷静になって、エトワール。このままじゃ、拉致があかない。冷静になって考えるの!)




 私は心の中でそう何度も繰り返した。




「じゃあ、リースが……殿下が一緒にいってくれるって言うの!?」

「そ、それは……」




 意外な反応だった。


 そんなな反応されると思っていなかった為、私は、後ろに一歩下がってしまった。




(な、何でそんな顔するの)




 リースなら「そうだな、俺がいこう」と言うのに、いつものリースならそう言うはずなのに、今日のリースはすぐに頷いてはくれなかった。

 リースが一緒にいってくれるなら、心強いのになと期待していた自分もいたため、拍子抜けしてしまった。

 いけない理由があるのだろうか。

 それとも、リュシオルの事なんてどうでもいい?

 幾ら考えても答えは出なかった。リースのことは矢っ張りよく分からない。

 リースは暫く黙った後、その大きな手で顔を一掃し、黄金の髪を掻上げた。




「止められているんだ」

「何を?」

「衝動的になるなって……エトワールのことになると、盲目的になるから。お前は立場を考えろって……ルーメンに」




と、リースは弱々しくいった。


 確かに、ルーメンさんはこの間の件についてもの凄くキレ散らかしていたし、何度もリースに対して愚痴を言っていた。「殿下は、皇太子であるという自覚がない」と。いずれ、帝国を導いていく存在である皇太子が、一人の女性のためにこんなにも揺れ動かされているのだと。そんなことを国民に知られれば、また私へのヘイトも集まる。


 それに、ルーメンさんも私と同じで心配なのだ。


 リースは、賢いように見えて衝動的な部分もあるし、これは現実で、何度も命の危機にさらされてきているだろうから。このまま、衝動に任せてなりふり構わず動いていたら、その内の本当に――――


 きっと、リースも反省しているのだろうと思って、私は思わず「ごめん」と謝ってしまった。




「いや、俺の方が……はあ、お前があのメイドを思う気持ちも分かるし、彼女が死んでしまったらルーメンも悲しむからな」

「何でルーメンさんが?」




 何故そこで、ルーメンさんが出てくるのか不思議に思っていれば、リースは「まあ、色々あるんだ」と誤魔化して、席に座り直した。

 けれど、リースが行ってくれないということは、かなり痛手であった。てっきり、いってくれるという前提で話をふっかけたが、当てが外れてしまった。


 今私の周りで役に立ちそうな人と言えば、限られてくる。


 洞くつの中、闇の中で戦うのならアルベドが一番頼りになるのだろうが、今どうしているか分からないし、この間の事もあって頼みづらい。そもそも、今から手紙を出して間に合うとも思えない。此の世界はスマホとかデジタル機器がないため、魔法はあってもアナログなものが多いのだ。

 だから、手紙が着いて、あっちから返事が返ってくる頃には、リュシオルは……

 なら、他に役に立ちそうな人はいるだろうか。




(グランツ……でも、万能薬の事を知っている人の方がいいだろうしな……)



 魔法を斬れる魔法はかなり強力なユニークスキルだし、彼の剣術であれば大蛇を一刀両断できるかも知れない。けれど、肝心な万能薬の形や生えている場所を知っているわけもないだろうし、そもそも存在すら知らないのでは無いかと思う。いってはいけないが、平民出身だから。




(じゃあ、誰が私を連れて行ってくれるの?)




 戦闘面でも期待できて、万能薬の事について詳しい……

 そこまで思い、私は稲妻が落ちたようにぴしゃりととある人物の存在を思い出した。というよりかは、忘れていた、空気になっていた人物の手を私は握った。




「ブライト、私に力を貸して!」





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