表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結】乙女ゲームの世界に召喚された悪役聖女ですが、元彼は攻略したくないので全力で逃げたいと思います  作者: 兎束作哉
第四章 縮まる距離

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

135/1379

11 隠しクエストの報酬




「ひぇぇぇ!?」

「おい、どうした、エトワール?」




 目の前に表示された文字を二度見し、私は固まることしか出来なかった。

 驚きのあまり何も言えない……いや、口に少し出ていたみたいだがノーカンである。




(いや、隠しクエストって何!?)




 そんなもの初耳だった。


 もしかして、エトワールストーリーでは、星流祭の五日間の内何日間行くかの選択肢が与えられ、その中で星栞に願い事を書くのか見たいなコマンドがあったのかも知れない。が、それはもう私が知ることも何も出来ないため、これが隠しクエストであったんだということしか、今の私には分からない。どちらにせよ、私はその隠しクエストをクリアしてしまったわけだ。良いのか悪いのかは、私には分からない。


 ほたるのように、ふわふわと飛んでいた白い光が身体の中に染みこむようにして消えると、私の胸の奥がぐっと暑くなるような感覚を覚えた。




(熱い……。何か、凄く熱くて苦しい……)




 まるで、心臓が破裂しそうなほどドクンドクンと脈打っているのを感じる。

 あの、光は何だったんだろうとか考えているとさらに追い打ちをかけるように、ウィンドウが次の画面に切り替わる。




【星流祭の星栞に願い事を書こう!クリア報酬:心音をゲット!】




と、『心音』と描かれていた其れに、私は首を傾げるほかなかった。


 隠しクエストというだけあって、きっと凄くいい報酬なんだろうな何てぼんやり思っていると、『心音』についての説明を読みますか?と表示されていた。それこそ、私の心を読むように……




(え、あ……もしかして、これって……) 




 私の頭には二つのことがよぎっていた。 


  一つ目は、私が星栞に書いてあった願い事が叶ったと言うことを表しているのではないか……ということ。

 二つ目は、このクリア報酬で得られる報酬はその願い事の内容に関わるものであるということ。


 私は、言葉を失った。いや、口をあんぐり開けて閉じることが出来ない状態になってしまったという方が正しいだろうか。どちらにしても、今はそこが重要ではない。




【心音:人の心の声が聞えるスキル。流星により授けられたエトワールの固有スキル。攻略キャラ以外の人の声はいつでもシャットアウトできるが、攻略キャラの心の声はランダムで聞える】




 そう書かれていた。


 やはり、予想は当たっていたようで、『心音』とは人の心の声が聞えるスキルらしい。それも、エトワール固有のスキルと書かれているところを見ると、これはヒロインストーリーでは既にエトワールが持っていたスキルと言うことになる。確かに、ヒロインストーリーをプレイしていてやけにエトワールは人のことみているというか、鋭いことを言うと思っていたが、そういうことだったのか。私は、大いに納得した。




(でも、私が願ったのはリースの心の声が聞えるようになりますようにって事だったはずなのに、どうして!) 




 何とも言えない気持ちになる。


 確かに、固有のスキルとか書いてあるとテンションが上がるし、あの何万とあった星栞の中から自分の願い事が選ばれたという奇跡にちかい出来事を素直に嬉しいとは思っている。だが、願い事が抽象的すぎるというか、もっと具体的にかなうものだと思っていたから拍子抜けだ。


 まあ、宝くじに当たるより確率が低いと思っていたから、そりゃあ嬉しいし、驚きは隠せないけれど。


 でも、何か違う。


もしかしたら、多すぎる星栞の中から願い事を選んだから抽象的になってしまったのかも知れない。もっと、具体的に……いや、かなり具体的に書いたから、きっとそういうことなのだろう。けれど、だとしても誰があの願い事を読んで叶えるのだという話になる。


 そう考え出したら止らなくて、私は頭を抱えた。

 そんな、私を黙って見ていたアルベドは「おい」と一言私に声をかける。




「さっきから、何一人百面相してんだ」

『やっぱ、此奴頭可笑しいよな……いや、水被って可笑しくなっただけかも知れねぇけど』

「可笑しくなってないわよ!」

「うわっ、吃驚させんなよ。何だよ、いきなり声出して」

『聖女だとは思えねえ……』




 アルベドが実際に私に喋っている言葉に重ねるようにして、アルベドの心の声と思しき声が聞えてくる。その事実に、私は思わず顔をしかめた。


 別に心の声が聞えたところで問題はないのだが、アルベドの心の声は普通に彼が私に喋りかけてくるものと全く同じで、何というか面白みがなかったのだ。いや、それでも悪口というか馬鹿にしているような言葉を心の中でも呟いているので許せないのだが。

 けれど、彼が私に嘘をついているとか見栄はっているとかではないんだなあと改めて思った。

といって、やはり許せないし、そんなこと心の中で思うぐらいならいつもと同じように私に言ってくれれば良いのに。いや、言わなくても良い、傷つくから。




「ねえ、アルベド。星栞の願い事が叶ったってどうやって分かるの?」

「ああ、その事か。いや、願い事が叶ったっていうのは本人にしか分からないらしいぞ?だから、目印とかはねえ……でも、そうだな。櫓につるしてある星栞の中から書いた願い事が消えた星栞があればその願いが叶ったって事らしい」




 ほんとかどうか分からねえし、何が叶ったかは判断しかねるけどな。とアルベドは付け足して、肩をすぼめた。ふむ、つまり、願い事を書いた星栞が消えて無くなればそれが叶ったという事なのだな。それならば、分かりやすいが、あの中から白紙の星栞を見つけるとなると一苦労だと。


 確かめたいと思ったが、確かめようがないじゃないか……何て、一人肩を落としていると、私は一つ思い出したことが会った。




(そういえば、リースの隣につるしたんだっけ……)




 そうだ、あの時私はリースの星栞の隣につるしたはずだった。リースのは目立つというか、彼のならすぐ探せると、何故だか自分でも分からないがつるしてあった場所を覚えていると私はアルベドに背を向けた。




「何処に行くんだよ。メインイベント終わったら、俺の事ぽいってか?」

「離してよ。確認しに行くの」

「何を?」

「星栞を」




 そう答えてやれば、アルベドは乾いた笑いを漏らし、嘲る。




「いや、叶ってねえだろ。あんだけあんのに。それこそ、天文学的確率で……」

「良いわよ別に、自分のを確認しに行くわけじゃないの」

「だったら、良いじゃねえか。他人の願いなんて……それに、其奴が何を書いたかなんて痕跡一つねえんだから不可能だろ。まあ、世界が滅びるとかいう願いだったらとっくに滅んでるだろうし、そういうのが叶ったわけじゃねえと思うけど」



 確かに、それはそうなんだけど……私は少しだけムッとした顔でアルベドを見上げた。


 しかし、彼の言っている事は正しいのかもしれない。まあ、それは彼が誰の願いが叶ったか知らないからである。私だって、まだ疑心暗鬼状態だし、本当に自分の願いが叶ったなんて思っていない。いや、聞える時点で叶ってはいるのだろうけど、それを確かめるために私は今から確認しに行かなくてはならないのだ。


 私が譲らないというように彼を見ると、彼は降参とでも言うように両手を挙げて首を横に振った。




「わーったよ、お前一人じゃ危ねえだろうしな」

「ありがとう、アルベド」

「ば、ばーか、礼なんていらねえよ……」

『お前と俺の仲だしな』

「……っ」

「どうした?」

「ううん、何でもない」




 最後に聞えたアルベドの心の声が、妙に優しくて私は思わずドキリとしてしまう。

 いや、まあ、そりゃそうだよね。私も、彼に対して同じような気持ちを抱いているんだから。

 アルベドとは、何だか友人のような関係であると私は密かに思ってるわけだけど……




(でも、なんでこんなにどきどきするのかな?きの、せい?)




 自分でもよく分からない感情に、戸惑っているとアルベドが私の手を取り、その甲にキスを落とした。




「ひぎゃああああああ!?」

「何つー声……ま、女性の我儘は聞いてやらねえとな。これも、デートだし」

「デートじゃないわよ!」




 そうやって、意地悪く笑うアルベドは私をエスコートするように歩き出す。


 くそ、絶対楽しんでる!


 しかし、ここで怒るのは流石に大人げないとぐっと堪え、私は紅蓮を追いかけるように歩き出した。

 月明かりに照らされた彼の好感度は73を示していた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ