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681 踏み込んでほしくないラインを超えるか否か




(いやいや、だから視界がふさがれていてわかんないんだって!)




 あたりを見渡したところで、そこに広がっているのは赤黒い霧であって、一寸先のものですら何も見えない状況。そもそも、肉塊の上にいるだろうっていう情報しか私たちは持ち合わせておらず、肉塊の上に目印になるようなものなど何もないのだ。だから、何かを目印にしようにも無理な話だった。じゃあ、何を目印に進めばいいのか。先ほどまではトワイライトが誰かの魔力を追って歩いていたが、座標となるものが消えたため、歩きようがなかった。

 この霧の中むやみやたらに歩いていいことなんて何もない。迷ってしまえばそれまでだ。




(でも、ずっと歩き続けていたらどこかにたどり着くんじゃない……?)




 ここが肉塊の上である以上、ずっと歩き続ければいずれ肉塊の上から降りられるのではないかと思った。もし、ここが肉塊の内部であれば、それは難しいが、外である以上は必ず肉塊の終わりがあると思う。

 私はそう思ってアルベドを見たが、アルベドはあまりいい顔をしていなかった。

 ここで何としてでも核を潰すつもりなのだろう。ここから降りたら、核を潰せる確証がないからだろう。




「やっぱり、ここから降りるっていうのはなし?」

「なしだな。降りちまったら、またここに戻ってこれる確証がねえ。それに、ここに必ず核があるはずだ。何せ、核だと思っていた、そこの聖女様がいたんだ。きっと、近くにあるはずだぜ?」




 アルベドはそう言ってトワイライトを見た。トワイライトはまたヒッといって私の後ろに隠れる。

 アルベドの人相の悪さは今に始まったことじゃないから仕方がないにしても、もう少し言い方は気を付けてほしいところだ。これじゃあトワイライトが怯えるに決まっている。




「トワイライト……別に、アルベドは悪くないから。悪い人じゃないから」

「わ、分かっているんですが、すみません……」




 トワイライトは、申し訳なさそうにそう言った。

 やっぱり、怖いものは怖いのだろう。私も、はじめこそ、彼が危険人物で怖いと思っていたからよくわかる。というか、自分では攻略しないだろうって思っていたキャラだからこそ、その気持ちは人一倍分かった。

 でも、今は彼の優しさなり、なんなりを知っているから、そこまで怖いとは思わなかった。柄が悪いのはいつものことだし、貴族っぽくないというのは本当にその通りなんだけど。




「怖いものは怖いわよね……」

「怖いと言いますか、前にどこかでお会いした気が……」

「……もしかして、弟のほう、かな?」




 私がそう言うと、トワイライトはぱちくりと目を瞬かせた。一瞬首をかしげたが、もしかしたらそっちかもしれないというように彼女は頷く。

 確かに、この間トワイライトに会いに行ったときに私の隣にいたのはアルベドではなくてラヴァインのほうだった。本人たちに似ているね、といったらアルベドは怒るだろうけど、ラヴァインのほうは逆に喜ぶかもしれない。ラヴァインはちょっとズレているから、兄と同じだって言われるのは喜ぶと思うのだ。

 でも、そんなことは関係なくて、彼女が似ていると思ったのは、アルベドがラヴァインの兄だからだろう。少なからず面影は感じるのだろうし、何だったら、魔力の波長だって似ているかもしれない。そういう意味で、会ったことがある、といったのではないだろうか。そうでなければ、アルベドはトワイライトに直接会いに行くことはないんじゃないかと思った。




(本人に聞いたら会いに行っているっていうのもあるかもだけど……)




 彼も忙しい人だから、その可能性は低いとみてもいいだろう。

 ならば、トワイライトの勘違いか。




「弟かもしれません。この間、お姉様の隣にいた……」

「そ、そう。というか、アルベドに関しては、さっきの皇宮内でのパーティーで顔を合わせてると思うし、それじゃない?」

「いえ、やっぱり弟のほうだと思います。その、お二人は仲が悪いんでしょうか」




 トワイライトの質問に反応したのは私ではなくアルベドのほうだった。




「何コソコソ話してんだよ」

「……アルベド、言い方」

「…………………………それで、俺と……何だって?」




 話を全部聞いていたわけじゃなかったのか、話半場に彼は割り込んできた。

 トワイライトは相変わらず震えていたが、聞きたいことがあったらしく、私の陰からアルベドの顔を見た。

 アルベドは、満月の瞳を細めたのち「んだよ」と高圧的に彼女を見下ろした。

 トワイライトはごくりとつばを飲み込んで「あの」と口にする。




「アルベド・レイ公爵子息様ですよね」

「ああ?そうだが、それが何だ。なんか必要な話か?」

「……その、弟について知りたいんです。貴方の弟」




 トワイライトはやはり、ラヴァインの存在について気になったのか、彼にそんな質問を投げた。しかし、その質問を彼が嫌っていることを私は知っていたので、トワイライトを止めるべきか迷った。

 多分この状況でラヴァインの話をしても、彼がそのことについて答えてくれる確率はとても低い。

 それに、今話すべきことじゃ絶対になかった。効率を重視するアルベドが、その質問に対して答えるはずがない。

 ラヴァインとアルベドのことについて聞きたいのはやまやまだが、アルベドのデリケートな問題でもあるため、踏み込めなかった。

 トワイライトを止めようとしたが、腕の中でルーチャットがキャンと鳴いたため、私は制止の声を入れられなくなってしまった。どうやら、ルーチャットはこのまま見守るよう言うのだ。




「ルーチャットどうして?」




 言葉で返ってくるはずないのに、私は思わず聞いてしまう。すると、ルーチャットは言葉で返せないからこそ、首を横に振り、尻尾をびたんびたんと私の腕にたたきつけた。何か理由があるのだろうと私は思い、口を挟まないことを決めた。何かあったら止めに入るが、さすがにそんなことは起きないだろう。

 ルーチャットは未来視でも使えるのか、まるでこれから起きることについては全く心配ないというようなたたずまいをしている。私からしてみれば、とても心配しかないのだが、ルーチャットは「まあまあ、みてなよ」といわんばかりの悠然とした態度をとっていた。私よりもルーチャットのほうが落ち着いていて、私はなんだか恥ずかしくなってくる。

 そんなに気にするべきことじゃないとでもいうのだろうか。




(いやいや、アルベドはこの話題を何度も避けてきたし、何だったら、この話題を出すときが一番機嫌悪くなるんだって)




 ずっと付き合ってきた私だからわかる。この話題をしたとき、あからさまに不機嫌になるし、話を逸らそうとすることも。そして、本人がたとえ前にいたとしても、本人が前にいるっていうだけで不機嫌になるような男なのだ。




(簡単な問題じゃないのよ。あの二人の問題っていうのは……)




 何も知らないトワイライトが踏み込んでいい領域では決してない。

 むしろ知らないからこそ、踏み込んで聞き出そうっていうのもあるんだろうけど、単なる興味心で近づけば飛び火しかねない。

 あまりに危険な話題。私と、トワイライトは姉妹仲がいいだけで、アルベドやラヴァイン、ブライトとファウダーはそれに当てはまらない。一見仲がよさそうに見えるあの双子でさえも闇を抱えているというのに。ここが一番触れてはいけない危険なところだ。




「教えてください。貴方の……アルベド様の弟について聞きたいんです」

「聞いて何になるんだよ」

「……それは」

「この状況をどうにかすることに関係ねえなら話す必要はない。さっきも言ったが、今回と俺の弟の問題は無関係だ」




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