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【本編完結】乙女ゲームの世界に召喚された悪役聖女ですが、元彼は攻略したくないので全力で逃げたいと思います  作者: 兎束作哉
第三章 拗れ始める関係

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39 誤解を招く




「エトワール様何処に行ってたのよ!」




 聖女殿につけば真っ先に飛んできたリュシオルに、こっぴどく叱られた。

 彼女は、私が帰ってくるのか心配で正面玄関の前でうろうろとしており私を見つけた瞬間に走ってタックルしてきたのだ。私は、そんなリュシオルに潰されて、ふぐっと潰れたカエルのような声を上げる。




「貴方って子は!」

「ご、ごめんって」




 私は、そう言って謝りながらリュシオルの背中をポンポンと叩く。


 親が子供を心配する気持ちってこんなものなのかな……などと、呑気なことを考えながら、リュシオルが落ち着くのを待った。 

というか、リュシオルといつの間にか別れていたと知ったと時はどうなるかと思っていたが、彼女も彼女で誘拐されたとかではなかったようで私も安心している。


 そう伝えてやれば、リュシオルは何で私が誘拐なのよ!とヒステリックな声を上げる。




「誘拐されたのは貴方の方でしょ……あ、違う、されたと思って本当に心配で」

「ないない。でも、心配してくれてありがとう」




 私は、苦笑いしながらお礼を言った。


 すると、リュシオルは照れ隠しをするかのようにそっぽを向く。そんな彼女に私は思わず笑みをこぼした。




「それにしても、私吃驚したわよ。いきなりエトワール様がいなくなって……」

「私もリュシオルはずっとついてきてるものだと思ってたんだけど」




と、私が言うとリュシオルは貴方が。と指さした。


 どうやら話が食い違っているようで、私は首を傾げた。




「エトワール様がいきなり、ブライト……ブライト卿がって人混みの中にはいってくものだから見失っちゃって」

「あ、ああ……」




 言われればそうだった気がする。でも、そこまで人混みが出来ているわけじゃ無かったし、有能なリュシオルな事だからついてきていると思っていた。

 リュシオルは呆れたように首を横に振った。




「私だって追いつこうとしたわよ。でも、いきなりエトワール様が消えて」




 そういうリュシオルは信じられないものを見たとでも言うように、私に説明した。

 確かに、私もいつの間にか人混みから抜けていたしあれは魔法か何かと思っていた。リュシオルが私がいきなり消えた。というのならもしかすると魔法をかけられていた可能性がある。此の世界の魔法は、大体創造力があればなんとかなるから。


 にしても、誰がそんな魔法をかけたのだろうか。

 ブライトがかける理由も分からないし、かといってファウダーが魔法を操れるとも考えにくい。幾ら考えても答えが出なかったため、私はそれ以上考えることを放棄した。




「なあ、俺空気?」

「あ……」




 空気を切り裂くように、それまで黙っていた人物が口を開いた。

 私と、リュシオルはその声の主を同時に見て短い声を上げる。




「女性同士の会話だし?俺は、はいっちゃいけねぇって黙ってたが、俺の事忘れてんじゃねえかって思ってさ」




 そう、アルベドは肩をすくめて言う。

 そうだ、忘れてた。ほんとすっかり丸っと。




「あ、アルベド・レイ公爵様……今日はどうしてこちらに?」

「ああ、エトワールのとこの美人なメイドか。いやぁ、星流祭でエトワールがナンパされてたから助けてやったんだよ」

「ちょっと、ナンパなんてされてないわよ!」




 リュシオルの言葉に対し、あっけらかんと言う彼に私はすかさず突っ込みを入れる。

 しかし、彼はそれを聞いているのかいないのか、そのまま続けた。




「そしたら、心やさしーエトワールがな、俺に恩返ししたいって、ここに泊めてくれるっていうんだ。んで、聖女殿まで来たって分けだ」

「は、はあ……」

「恩返ししたいって言ってないし、泊めるって半場強制的に決めさせられました」

「なあ、そうだよな?エトワール」

「はい、泊めるっていいました」




 くるっと私の方を向いて、目が笑っていない笑顔を向けるアルベドを見て、私はそう返事をするしかなかった。だって、怖かったから。

 その様子を、リュシオルは黙って見ていたが、ちょっと失礼します。と私を呼び寄せてコソッと耳打ちする。




「ちょっと、エトワール様どういうことよ!」

「どういうことって、まあ色々あって……助けてもらったのは事実というか何というか」

「エトワール様にはリース殿下がいるじゃ無い!浮気!?」

「なんでそうなるの!?」




 リュシオルは目をつり上げて、詰め寄ってきた。私は思わず、一歩下がる。すると、リュシオルはまた一歩前に出てきて、更に近付いてきた。

 浮気とか、言われてもそもそも何故私にはリースと決まっているのだろうか。確かにリース様は推しであるが、推しの横に立てるとか並べて貰えるのはこれ以上ない幸福で理想で、夢なのだが中身は元カレの遥輝である。


 そんなことを考えながら、リュシオルに彼女と別れてから何があったのか簡単に説明するとリュシオルはやっと納得してくれたようで解放してくれた。




「でも、珍しいわね。エトワール様も変わったというか」

「どういうこと?」

「だって、アルベドのこと怖がってたじゃない」

「いや、今でも怖いよ?」




 すぐ怒るし、好感度の上がり方もよく分からないし。でも、嘘をつかない……とは誰よりも信用出来るけど。

 そう思いアルベドを見上げると、ばっちりと彼の黄金の瞳と目が合った。瞳孔は鋭く尖っており切れ長の目はヤクザのように怖いけれど、それでも紅蓮の髪と彼の整った容姿も相まって、バランスが取れていて思わず見とれてしまうと言うか、魅了されるというか。




「何だよ。また、俺の事見て……まさか、本当に惚れて……」

「惚れるわけないじゃん!自惚れないで!ちょっと格好いいからって!」

「エトワール様、格好いいって認めてるのね」




と、リュシオルがすかさずツッコミを入れ、アルベドは大爆笑していた。




 いや、だって見た目だけなら、文句なしのイケメンだもん。乙女ゲームの攻略キャラな訳だし?格好良くないと困るというか?

 私は、そう結論づけて格好いいと言ったことは認めるが好きとはいっていないということを伝えアルベドにべーと舌を出した。




「ゴホンっ、その、エトワール様がアルベド・レイ公爵様を泊めると仰るならメイドの身、何も言えませんし従うまでですが、突然の訪問のため部屋の準備が……」




 そうリュシオルはちらりと私を見た。


 そうだよ。突然の訪問なんだよと、私はアルベドを見る。だが彼は突然の訪問を何度かしたことがあるような、悪びれた様子もなく私を見つめ返した。その口角はニヤリと上に上がっている。

 リュシオルは、私に如何するんだという目を向けてきたが、私にそんな目を向けられてもどうしようも出来なかった。連れてきたまでは良いけど、そうだよ、その後だよ。


 そんな感じで、私とリュシオルがアイコンタクトをしあっているとアルベドが、いい案でも思いついたように私の肩に腕を回して回していない方の手で私を指さした。




「部屋が用意できてないって言うなら、俺はエトワールの部屋で泊らせて貰うぜ」

「は!?アンタ何勝手に」

「だって、良いだろ?俺たちは一夜を共に過ごした仲なんだし、一回も二回も変わらな……」

「誤解を招く言い方をしないで!変態!」




 私は、咄嵯にアルベドの口を塞いだ。


 この男は、どうしてこうなのか。私が否定しているにも関わらず、まるで事実のように話を進めようとする。

 確かに、この間は同じ部屋で同じベッドで寝たがそういう男女の関係ではない。いや、アルベドはわざと言って私が引っかかるのを楽しんでいただけかも知れないが、乙女ゲームで一夜を共に何て誤解を招く以外の何でもない。


 リュシオルはポカンと口を開いて「そこまで進んでいたの」と呟いていた。




「だから誤解だって!」

「いや、お前から俺をベッドに誘ったじゃねえか」

「もう、ほんと黙って!」




 シャラップとアルベドに言えば、愉快そうにアルベドは笑うばかりで私が本気で困っていることに気づいていないようだった。


 ダメだ、疲れる。



「そ、それで?エトワール様如何するんですか?」

「……はあ、もう面倒くさいから一緒でいい」

「一緒に寝たこと認めるんだな」

「違う!もう、次そんなこと言ったら光魔法アンタにぶち込んでやるんだから!」




 おお、怖ぇと。アルベドはニタニタ笑いながら私の肩をバンバンと叩く。その力が少し強いため、か弱いエトワールの身体はその痛みをダイレクトに全身に伝える。

 痛いと言ったら、言ったで今度は腰あたりに腕を回してくるしで最悪だった。




「……そ、それでは、案内しますね」




と、リュシオルが助け船を出してくれてその場は何とか乗り切ったが、部屋に行くまでのあいだもアルベドは私にウザ絡みをしてきた。


 私は無視を決め込んでいたが、それがまた気に食わなかったのか私の頬を引っ張ったり突いたりと、やりたい放題された。




「何かありましたら、お声がけください」

「おう、ありがとな」

「アンタのメイドじゃないわよ。客人のくせに態度がでかい」

「客人だからだろ」




 部屋についたアルベドは私のベッドに陣取って、リュシオルに笑いながら手を振っていた。 

 態度もでかいし、やることも酷いしで本当に公爵家……貴族なのかと疑いたくなるほどだった。

 リュシオルは本当に大丈夫かという目を私に向けてきたが、今すぐに助けて欲しかった。また、此奴と一緒なんて……


 そうして、パタンと扉が閉まってしまいとうとう私はアルベドと二人きりになってしまった。




「嬉しいだろ?また俺と二人きりになれて」

「何処が!?」




 二人きりになった途端、アルベドは急に甘いオーラを発しだし先ほどの馬鹿にするような笑みではなく、まるで恋人を見つめるような熱い視線を向けてきた。

 そして、そのまま私の髪をすくいキスを落とす。




「ぴぎゃっ」

「俺は、エトワールと二人きりになれて嬉しいぜ」




 そういった、アルベドの目は真剣そのものだった。





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