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【本編完結】乙女ゲームの世界に召喚された悪役聖女ですが、元彼は攻略したくないので全力で逃げたいと思います  作者: 兎束作哉
第三章 拗れ始める関係

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23 嫌な遭遇




「うげ、その声は……」




 振返れば、ピンク色の頭が2つ……こちらを見上げる、快晴の瞳と宵色の瞳は見覚えがありすぎるもので、思わず私は顔をしかめてしまった。

 そう、このピンク頭の正体は攻略対象である双子の兄弟。ピンク頭の双子は、私達を見つけるなり、きゃっきゃと嬉しそうな声をあげながら近寄ってきた。




「うわ、出た。腹黒サイコパスブラザーズ」




 私は思わず、本音を漏らし二人を指さしてしまった。


 その言葉に二人は目をぱちくりさせて、互いに顔を見合わせると一瞬とんでもなく恐ろしい顔をしたが、次の瞬間にはあどけない子供の顔で、もじもじしながら酷いなぁと口を揃えていった。

 私はそんな二人の様子にため息を吐きながら、いったい何の用だと聞いた。すると、二人は待ってましたと言わんばかりにキラキラした目で私を見てきた。




「何のようって、僕達はただ星流祭に来ただけだもんねー」

「来ただけだもんねー」




と、二人はわざとらしく言い放った。


 此奴ら、ルクスとルフレは私に本性を現しているというか、こんなぶりっこが通じないことを分かっていても、愉快そうに子供ぶりっこ口調で私に話しかけてくる。仕草も、指を絡め合って、モジモジして、互いに空を思わせる瞳をクリクリとさせて。本性を知っているからこそ、その作られた仕草と笑顔にゾッとする。子供ながらに此奴らは分かっているのだ。

 そんな私達を見ていた、双子のメイドはあわあわと何もつかめない手を必死に動かしながらおろおろしている。




「あ、あの、聖女様……、主人に代わって、あ、あ」

「き、気にしないで……ください。この二人がこういう性格だって言うことはこの間よく分かりましたから」




 私は、怯えるメイドに優しく笑いかけてやると、メイドは感動したとでもいうように目を潤ませていた。本当に彼女は苦労していると思う。双子であっても、一人一人にメイドがつくものかと思っていたが、どうやらこのそばかすメイドが一人で二人の世話を焼いているらしい。

 私には、専属のメイドでリュシオルがいるし、彼女はとっても役に立つメイドだけど、目の前にいるメイドはいっちゃあれだけどあまり役に立っていない。むしろ足を引っ張っている。




「もしかしてー聖女さま、僕達の手紙読んでないの?」

「読んでないの?」




と、双子の兄弟はぷくっと頬を膨らませる。

 手紙とは、あの何も言っていないのに「星流祭は二人でまわるから、貴方とはまわれない」的な奴のことだろう。

 ああ、そういえばそんなのもあった気がするけど、すっかり忘れていた。いや、捨てた気がする。

 私が、双子の言葉を無視していると、それに腹を立てたのか双子は畳みかけるように言ってくる。




「あっ!分かった、読んで一緒にまわれないことが寂しくて、僕達のこと探しに来たんでしょ」

「そうなんでしょ」

「違うわよ!誰がアンタ達とまわるもんですか!」




 そう返してやれば、二人はまたもわざとらしく悲しんだ表情をする。そして、チラリと互いの顔を見てアイコンタクトを取ると、二人揃って私の方に視線を向けてきた。




「じゃあ、何でここにいるの?聖女さまって暇なの?」

「暇なんでしょ?」

「何でよ。私だって星流祭まわりたいから来ているのよ。あ、アンタ達とまわりたいわけじゃないから」




 私はツンとそっぽを向いて言ってやる。すると、双子は目を見合わせてニヤリと笑った。


 嫌な予感がする。

 双子は私の前に立つと、両手を広げて言った。




「そんなこと言っても無駄だよ!僕達とまわりたいの見え見えなんだから!」

「見え見えなんだから!仕方ないな、僕達と一緒にまわる権利あげる!」

「いらないわよ!もう、邪魔しないで。ほら、周りに人集まってきちゃったじゃん……」




 注目されるのは嫌なのに。と、私はいつの間にか出来ていた野次馬達を見ながらため息をつく。

 そんな私を他所に、双子達はお互いの手を取り合いキャッキャとはしゃいでいる。


 あぁ、もう本当うざい……


 こんなの、断ってさっさと立ち去ればいいのかもしれないけれど、一応攻略キャラでもあるし、あまりぞんざいな扱いは出来ない。私は悪役聖女だから、変に好感度を下げる訳にはいかない。この双子の好感度を上げるに当たって命の危機にさらされた。命がけであげた数十%を下げるわけにはいかない。


 攻略しないにしろ、好感度は上げた方が良いだろう。




「エトワール様が困っています。ルクス・ダズリング様とルフレ・ダズリング様」




 そう、私達の会話に口を挟んできたのはグランツだった。


 それまで、グランツの事を気にも留めていなかった双子は同じタイミングでグランツを見て、それから私を見た。何か言いたげな快晴、宵色の瞳は私に説明しろと脅しをかけてきているようにも思えた。無言の圧というものほど怖いものは無いだろう。


 私は、ため息をついてからグランツの説明をするため双子を見た。

 ルクスは好奇心ありありといった目をしていたが、ルフレからは憧れだのそう言った目標の人物にでも合ったかのような、キラキラとした純粋な子供の目でグランツを見ている。




「彼は、グランツ・グロリアス。私の護衛騎士よ」




 そう説明してやれば、グランツはぺこりと双子に頭を下げる。

 それに合わせて、双子の方もそれぞれ挨拶をした。だが、私に護衛騎士がいることが不満なのか何なのか、ルクスがプッと吹き出した。




「聖女さまって護衛いたんだ。この間は、そっちのメイドだけ連れてきたから、護衛騎士いないと思ってた」

「彼も忙しいのよ」

「でも、護衛騎士っていうぐらいだから、聖女さまについていかないって可笑しくない?現に、この間聖女さまは危険な目に遭った……」




 ルクスがそこまでいうと、それまで固まっていたグランツの手がピクリと動いた。


 あ、コレは不味いとグランツを見て私はグランツにフォローを入れる。


 グランツは確か凄く気にしていたのだ。私がダズリング伯爵家にいって、狼に襲われて怪我したこと。その時自分は守れず、その場にいなかったこと。彼の心は幾らか成長しているけど、まだ何処か幼さも残っており、顔に出ないが引きずるタイプだったため、痛い所をつかれて落ち込んでいるのではないかと思った。




「大丈夫、グランツ。グランツは自分のやるべき事やってたんだもんね」

「……ですが、彼のいうとおりです」




 私は、首を横に振った。確かに、あの時は大変だったし死ぬかとも思った。だけど、今こうして生きているのだからそれでいいと思う。

 それに、私は知っている。彼が、自分の仕事を全うしていたことを。私の傍に居られない時、彼はずっと私のことを考えてくれていた。そう、グランツに伝えたが彼はいじけモードにはいってしまったのかうんと首を縦に振らない。ああ、もう面倒くさいことになった。


 そう、私が頭を抱えていると、ぼそりとルフレが言葉をこぼす。




「……格好いい」

「え?」




 何かの聞き間違いかと思ったが、確かにルフレは格好いいとこぼした。そのキラキラ輝く夜空のような目にはグランツが映っており、彼の格好や腰に下げている剣を見て興奮が抑えられないといったような感じだ。

 ルフレは、まるでヒーローに憧れる子供のように目を輝かせてグランツを見つめていて、ルクスはその姿を見て何故か不機嫌そうな顔をする。




「騎士、初めて見るわけじゃ無いけど、これまで見てきた誰よりも格好いい!」

「え?」




 何かの聞き間違いかと思ったが、確かにルフレは格好いいとこぼした。そのキラキラ輝く夜空のような目にはグランツが映っており、彼の格好や腰に下げている剣を見て興奮が抑えられないといったような感じだ。

 ルフレは、まるでヒーローに憧れる子供のように目を輝かせてグランツを見つめていて、ルクスはその姿を見て何故か不機嫌そうな顔をする。




「騎士、初めて見るわけじゃ無いけど、これまで見てきた誰よりも格好いい!」

「…………」




 ルフレの素直な言葉に、グランツは何も言わずに困っているようだったが、私からすればそんな事はどうでもいい。

 それよりも問題はルクスの方である。ルクスがルフレの言動に苛立っているのは一目瞭然で、そんなルクスと私は目がばっちりと合った。快晴の瞳に影が差しており、私を殺さんとばかりに鋭くなっていた。 

 だが、その殺気も彼が作った笑顔で相殺される。




「そうだねー聖女さまの護衛騎士って格好いいね」

「ルクスも分かる!?」

「勿論、僕達双子だもん。同じもの好きになるに決まってるじゃん」




 明らかな手のひら返しだったのにもかかわらず、ルフレは気づいていないようでグランツの周りをぐるぐるしてその剣は何処で手に入れたのだとか、訓練の内容はとか質問攻めをしている。

 それを見ていたグランツの顔には助けての文字が浮かんでおり、私の方を何度も見てくる。でも、私には如何することも出来ず、取り敢えず質問に答えてあげたらとにこりと笑い返してやると、グランツは口を尖らせて私から目をそらしてしまった。


 それから、数分か数十分かルフレの質問攻めが続いたが、それを強制的に終わらせる声が響いた。




「ねえ、聖女さま。矢っ張り僕達と一緒にまわろうよ」




 そう、光の灯らない快晴の瞳が私を捉えて離さなかった。







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