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彼女と刑事の除霊事件簿  作者: ゆずさくら


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橋口の戦い

「どうしたの、かんな」

「何かがこっち見てる、と思ったんだケド」

「いるの?」

「……」

 何かいる。それだけではなく、何かを訴えかけている。橋口は必死にそれを読み取ろうとした。

 すると部屋の扉をノックする音がする。

「冴島」

 先生の声だ。

 冴島が扉を開けて、廊下に出ていった。 

 部屋に残された橋口は目を閉じ、窓の外、森の中、に意識を飛ばしていく。木の枝、葉の影、草むらの隙間。

 意識が森の中を彷徨い、一羽のカラスを見つけた。

「カァ吉…… あなた何が言いたいの?」

 カラスの視点から見た映像が、橋口の心に入り込んでくる。

 ナンバーが11ー22のシルバーの車。

 そのシルバーの車が止まっている宿泊施設。

 窓越しに男の部屋を見た映像。

 テーブルに紙を広げると、そこには五芒星が描かれている。

 男は言う。

『宝仙院の連中に天罰を』

 この男がスクールバスに包丁を持って入ってきた男を狂わせた『生霊』に違いない。

 橋口は目を開ける。

 カァ吉が送ってきた周囲の映像を元に、男の宿泊施設の場所をスマフォで探す。

 地図と周囲の映像から、橋口は場所を特定した。

 その時、事務所から渡されたガラケーに着信が入る。

 音の大きさとバイブレーションで、まともに掴めず、ガラケーがお手玉のように二、三回宙にういた。

 やっと手に収まったガラケーを開いて通話ボタンを押した。

『カンナちゃん? 返事ないけど、元気? そっちで何か事件起こってない?』

 所長だとばかり思っていたが、その声は有栖刑事のものだった。

「有栖刑事、いいところに電話もらえました。その件で相談があるんですケド」

 橋口は『カァ吉』から教えられた情報を有栖刑事に話した。

『今走っている辺りからだと、宝仙院の施設の方が近くだっていうから、カンナちゃん、手伝ってくれない?』

「有栖刑事が先生を説得してくれるなら、構わないんだケド」

『するする。じゃあ、決まりね。じゃ、三十分ぐらい後で』

 と通話が切れた。

 橋口は外に出るために着替えた。

 ちょうど、着替え終わった頃に施設内に放送が入って、エントランスに呼び出される。

 橋口が下りていくと、生徒が三人、角に隠れてエントランスをチラチラ見ているのが見えた。

「かんな…… もしかして、あれかんなのお母さん?」

「お母さん、若いじゃん。けど、なんであんなロリロリなの」

「最近、アースカラーの服ばっかり見てたから、鮮やかな水色で目が驚いちゃった」

 三人はニヤニヤとイヤらしい笑みを浮かべながら、橋口に言った。

 橋口は誰のことを言っているのか分かった。しかし、山の中でこの雨。有栖刑事は、あの服でここまで来ているのか。

「いや、私の親ってわけじゃないんだケド」

「けど、かんなを呼び出したのはあそこにいる『不思議の国のアリス』でしょ?」

 何かいい切り返しはないのか。橋口は考える。

「バイト先の事務所の関係者なんだケド」

「バイト? こんなところでバイトしていいの」

「ケイコ、かんなのバイトって除霊士になる為のものだから、何か事件があるってことでしょ」

「これ、他言無用なんだケド」

 橋口は、三人の手を代わる代わるとり胸を触らせた。

「……」

 橋口の胸に触れると、目の中の光が抜けたようになり、三人は黙り込でしまう。

「(さあ、自分の部屋に戻って)」

 橋口が指図すると三人はフラフラと廊下を戻っていった。

 するとエントランスから声がした。

「カンナちゃん、この件、そこまで秘密じゃないのに」

 橋口はエントランスに出て、有栖の姿を見た。

「いや……」

 あんたと知り合いに思われるのがイヤだったんだ、とは言えなかった。ここは都心ではない。雨も激しい。けれど水色のワンピースに白いエプロンにリボンをつけた『不思議の国のアリス』の服装。どう考えても変わり者だ。関連付けて覚えられたくない。

「?」

「なんでもないんだケド」

「そう。じゃあ行きましょう」

 有栖刑事はそう言ってから、先生に会釈する。

「ご協力、ありがとうございます。橋口さんの安全は最大限に配慮いたしますので」

「よろしくお願いします」

 先生も頭を下げた。

 扉を出ると、車回しに真っ黒なワンボックスが止まっていた。

「これが警察車両?」

「覆面ってやつね」

 横のスライドドアが開くと、有栖が乗り込む。

「カンナちゃんは私の横。行先を教えてあげて」

 橋口は運転手にスマフォを見せて説明する。

「このあたりの宿泊施設なんだケド」

「ナンバーシステムが捉えた地点とも一致しますね。急ぎましょう」

「じゃあ、出発して」

 車が走り出した。

 有栖刑事が訊ねることに、橋口は出来事を答えた。レンタサイクルの店で『逆シャケ』があったこと、シルバーの車が宝仙院の生徒が行くところをつけていたこと。友人がアイスを食べているところを盗撮されたこと。あったイヤな出来事をとりあえず全てしゃべった。

「全部が関係しているかはわからないけど……」

 有栖刑事は、犯人と思われる人物の画像をタブレット端末の画面で橋口に見せた。

「逮捕状はとってあるの。その男って、こいつだった?」

「あっ! それ、さっきカァ吉が見せてくれた男と同じなんだケド」

「電話でも言ってた『カァ吉』ってなんのこと?」

 橋口は『カァ吉』が麗子に警告したり、予言をするカラスだと説明した。橋口とカァ吉が話したのは初めただということも付け加えた。

「カラスにそんな能力はないわ。あなた達一人一人の力を受けて『カァ吉』が反応したのよ。その映像もおそらく貴方が整理したもの」

「けど空を飛べないんだケド」

「『カァ吉』君はあれが犯人だ、と分かって追いかけたんじゃないわ。今日一日飛び回って、たまたま目撃した情報をカンナちゃんが整理して再構成したの。実際『カァ吉』は一羽じゃないと思うわ」

 橋口は一羽の『カァ吉』がずっとついて来たと信じたくて、ムッとしている。

「私も監視カメラとナンバーシステムをフル稼働して情報を集めているんだから同じことよ。別にカンナちゃんが嘘をついているとか、そういうことを言っているんじゃないの」

「カァ吉の方が優秀なんだケド」

 橋口はなぜか悔しくて涙が込み上げてきた。

「だから……」

 有栖刑事は橋口の肩を引き寄せ、頭を撫でた。

「さあ、着きますよ」

 有栖刑事の表情が変わった。

「ほら、気持ちを切り替えて」

 真っ黒い窓ガラスを下ろすと建物が見えた。橋口は思った。ここは『カァ吉』が見せてくれた宿泊施設に間違いない。

 有栖刑事は橋口の表情を見て言った。

「間違いなさそうね」




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