対応する教師
ほとんど座席が埋まったバスが、雨の中駐車場に待機している。
バスの運転手は、傘をさして外にいる教師達と話をしていた。
「これが最後ですよね?」
「ごめんなさい。ちょっと生徒が遅れていて」
「いや、まだ時間的には問題ないんで」
一方で、川側から駐車場に登ってくる道にいた教師が騒いでいる。
「このまま時間が遅くなったら蒲田くんの車で運ぶか」
「ああ、あれは八人乗れましたよね」
「確か四駆だし道が荒れても大丈夫」
例年、この程度の遅れはあって、先生達もあまり問題だとは思っていなかった。
駐車場から、下を見ていると登ってくる人影を見つける。
「松木さん!」
と駐車場側から、登山道に向かって叫んだ。
「おう、遅れてすまん」
「松木さんだけですか? 井上班は?」
「えっ、来てない班がいるの?」
そう言って松木先生が、坂道の途中で後ろを振り返る。
振り返った道には、誰かが登ってくる様子はなかった。
雨合羽のフードを少し整えながら、上へ叫ぶ。
「けどね、そういう重要事項は、早めに『無線で』入れてよ!」
「来てない班は班長が井上で、佐藤、鈴木、中山、山崎、水谷の六名になります」
「ここ一本道だから、最後を歩いている俺が見てないはずないんだが」
駐車場側から先生が一人、松木先生の方へ下りていく。
「この下の分岐を間違えて、真っ直ぐ進んでしまったかな」
「私がそっちに行きます。松木先生は滝の方をお願いします」
「ああ、わかった。今度こそ無線使ってくれ」
「わかりました」
二人の教師は、川の道へ下りて行き、分岐のところで分かれる。
松木が川沿いの道をしばらく進むと、正面から生徒が歩いてきた。
激しい雨と雷で、道の先に先生がいることに気づかないらしい。
「おい、大丈夫か? 井上の班だな!? 全員いるか?」
ようやく正面を歩いていた班員一人が、松木先生に気づく。
「あ、先生!」
「えっ、先生?」
「よかった」
「全員いるか?」
「……」
「おい、そこにいる者の名前を」
「井上、佐藤、鈴木、中山…… です」
「おい、後何人いる?」
「山崎と水谷が、後ろに……」
「なんで離れるんだ! いい。すまん。ここで叱っても仕方ない」
松木は無線で川下側を探しに行った教師を呼び戻す。
「分岐を間違えないように四人と一緒に駐車場に戻ってください」
『わかりました。松木さんは?』
「俺は滝の方まで二人を探しに行く」
『了解です。分岐場所で生徒を待っていますから、伝えてください』
「聞こえたか?」
班員が頷く。
「俺は山崎と水谷を探しに行く。慎重に、全員揃って行くんだ」
「はい」
松木先生は四人が、歩くのをしばらく見てから、滝の方への上り道に入っていった。




