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彼女と刑事の除霊事件簿  作者: ゆずさくら


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二人の秘密

「どうしたの」

 声がする横を見ると水谷がいて、同じように外を見ていた。

「びっくりした」

「さっきからいたんだけど、麗子、気付かないから」

「一人?」

「弘恵はなんか先生と話してた。橋口もまだいない」

 水谷の肩が麗子に触れた。麗子は急に昨日のことを思い出し、意識してしまう。

「何考えてたの」

「いや、別に」

「私は一日、早く施設に戻りたいって考えてた」

「まぁ、城とか寺とか退屈だよね。けどお菓子工場は良かったんじゃない、いっぱい食べれたし」

「違うの。早く施設に戻って、麗子とお話ししたいって。ずっとそう思ってた」

「そ、そう。私も」

 麗子がそう言うと、水谷が麗子の方を向いて目を輝かせる。

「本当?」

 麗子は、今のは軽はずみな答えだったと反省した。

 水谷は本気なのだ。言葉を選ばないと、後で事実を告げた時に傷つけてしまう。

 視線を外すと、水谷はまた外を向いた。

「やっぱり。ちょっと傷ついた」

「ごめん、そういうつもりは」

 慰めよう、そう思って水谷の体に手が触れそうになったところで、麗子は躊躇した。

「私、今までずっと麗子と話すことを想ってきたんだよね。弘恵が麗子と親しげに話す麗子を見て、羨ましいと思ってた」

「弘恵と私が?」

「弘恵とは前からお友達だったじゃない」

「そうだけど。それなら弘恵といる時、優香も話に入ってくれば良かったんじゃない?」

「弘恵って、私が入ってきてもいいような、そういう空気作らないでしょ。あれ、こっちの気持ちを知っていて、わざと見せつけているんだよ」

「まさか」

「弘恵も私と同じ気持ちだってこと」

「そんな雰囲気微塵もないけど」

 まさか弘恵までマジで『女子が好きな女子』なんだろうか。このまま普通にこの話を、この部屋で続けて、私は無事でいられるんだろうか。その扉の外で弘恵が聞き耳を立てて隠れているなんて、洒落にもならない。そうなったら修羅場になることは避けられないだろう。

「なんでも冗談みたいにしてはぐらかすけど、間違いない。弘恵も麗子のこと」

「え、まさか」

「そもそも麗子は自分の魅力に気づいていないんだよ」

「だって、私背も高くないし目立つ方じゃ」

「確かに弘恵なんか背が高くて、目立つよね。けど、麗子も後輩のファンクラブあるの知ってる?」

「えっ、なにそれ」

「知らなかったんだ。麗子のファンクラブあるんだよ。私は学年が違うから入れさせてもらえないけど。部活の後輩から会報を画像に撮ってもらってる。見せようか」

「う、うん」

「じゃあ、そっち行こう」

 水谷はそう言って、二段ベッドの下の壁際を指さす。

 麗子は一瞬戸惑うが、ただスマフォの画面を見せてもらうだけだ。大丈夫だろう。

 ベッドに腰掛けて、奥まで進み、二人とも背中を壁もたれかけた。

 水谷がスマフォを色々と操作して、画面が開く。

「こんな感じ」

「えっ、私の写真」

 これって盗撮じゃ……

「正直引くよね。私も最初、引いた」

「いや、引くというかこれは」

「でも違うの。絶対に変な写真はないの。絶対に。信念を持って編集しているから、麗子を傷つけるような写真は載らないから」

「そうじゃなくてこれ盗……」

 水谷の指が麗子の口に触れる。

「良くないって事は分かってる。けど、皆んな麗子の魅力に耐えれないんだよ」

「!」

 素早く指を外すと、そのまま顔を近づけて口付けされた。

 あまりに素早くて、抵抗することもできなかった。

「ごめんなさい。麗子の意思を確かめもせずに…… けど、これで弘恵と回数も一緒になった」

 どうしよう。ドキドキしてくる。麗子は置かれた状況の危うさに、心がざわつくのを感じた。

「麗子が毎日何をして、どんな表情だったのか。全て知りたいの。ファンクラブの生徒は皆んなそう思ってる。昨日、今日は私と麗子だけの秘密。誰にも渡したくない。いいえ、渡さない」

 部屋の外から大きな声がする。

『私入るんだケド』

 その声の直後に、小さい声で『(だめ)』と言っている山﨑の声が聞こえる。

 聞かれていた…… 間違いない。扉に耳をつけていた山﨑に構わず橋口が部屋に入ろうとした様子が手にとるようにわかる。

 麗子は慌てて水谷から離れる。

 同時に、橋口が扉を開けて入ってくる。

「麗子、優香、なんだ、いるんじゃない。弘恵がさっきから」

 山崎が慌てて入ってきて、橋口の口を塞ぐ。

 そのままモゴモゴと喋る橋口。

「ぐ、ぐるじいんだケド」

 水谷がベッド出て、立ち上がる。

「どうしたの、入ってくれば良かったのに」

 橋口の口を押さえたまま、山崎が返す。

「えっ? なんか勘違いしてない? 今、そこでかんなと会ったところよ」

「そうね。かんなとは今あったんでしょうけど、弘恵はかなり前から扉の後ろにいたよね」

「そんな事ないわよ。優香、何が言いたいの?」

 やばい。修羅場だ修羅場。麗子は水谷の前に入り、山崎に向かって言う。

「あのさ、今日ね。今日ずっと昨日言ってたナンバーの車がついて来てたの。途中で、弘恵と優香に相談できれば良かったんだけど」

「……」

「イチイチ、ニィニィの車のこと?」

「うん。今、車の形を絵に()くね」

 慌てて机に行き、メモ紙に簡単に車の姿を描く。

「ああ、そんな感じだった」

「間違いないよ」

「じゃあ、今日、そのソフトクリーム食べてる時にいた男って見かけた?」

 水谷が答える。

「全然」

「今日は平和だったわ。優香が突っかかってくるまでは」

 麗子は手を振りながら二人の間に入った。

「わー、わー、こっちはね、かんなが工場見学でアイス食べすぎてお腹壊したの」

「かんなのせいでバスの出発が遅れたって、そんな理由だったの」

 山崎は呆れた顔をした。

「いい加減手を外して欲しいんだケド」

「あ、ごめん」

 弘恵が橋口の口から手を離す。

「確かにアイス美味しかったよね。私、十個食べた」

「優香、すごいね。私は三つでやめといた」

「私『も』三つでやめといた」

 山崎のその発言で、優香が睨みつける。

 麗子はまた手を振って「二人ともそれ、やめよう」と言って間に入る。すると、橋口が言った。

「私、十五個も食べたのに、おトイレで全部出ちゃったんだケド」

 山崎が鼻を摘んで「やだぁ、汚い」というが、麗子は笑いながら「かんならしいよね」と言った。

 橋口以外は皆んな微笑んだ。

「ちょっとも面白くないんだケド」




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