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町田のフィクション  作者: 素人
1/1

始まりはフィクション


初めまして素人です


主人公の町田くんの髪型は当然マッシュです


絶対マッシュです


更新頻度あまり高くはありませんが、


どうぞご贔屓に!!!!


「もう書かないのか?」


教室の奥の窓側の席でグラウンドを見下ろす僕に、


いつの間にか横に立っていた先生が言った。


独り言のようにも聞こえた。


「うん」


返事にも流したようにも聞こえる曖昧な言葉を発してから


また、僕はグラウンドを見下ろした。


野球部は眩しかった。


サッカー部も眩しかった。


陸上部も、テニス部も、ラグビー部も。


僕以外何もかも眩しい気がした。





_______________________





「現役高校生作家、新人賞受賞!期待の新人が見る青春の全てとは?」


知ったのは電車の中吊り広告だった。


別にいつもと変わらずただ電車に揺られていた。


このご時世だから、広告の端に小さくのる程度だけれど、凄い事だと思った。


ちょっと眩しいような気がした。


慣れない笑顔を若干引き攣らせた男子高校生に


「もうちょっと笑えよ」


と毒づいてみる。


男子高校生の写真の横に小さく僕の名前。




…僕の名前?




ガラララッ


「山岸先生!」


髭面にコーヒーを片手に持った先生がこちらを向く。


「お、期待の新人じゃねえか

どうした、そんな顔してさ」


「なんですか!?なんなんですかこれ!」


僕は右手に掴んだ中吊り広告を振り回す。


「僕、名前と個人情報は伏せて貰えるようお願いしましたよね!?」


あー、バレちゃったかー


とでも言うようにおでこを叩きながらこちらに歩いてくる。


「なんですか、ほんとに!」


「なんですかってお前、

広告盗んできたのかよ!?」


「許可はとってます!」


「中吊り広告って貰えるもんなの?

知らなかったんだけど」


僕が全力でお願いしたからね!


駅員さんが引くほど!


「そんなことどうでもいいんですよ、なにしてくれてるんですか!?」


まあまあ、落ち着けって

コーヒー飲むか?


相変わらずの態度にイライラする。


「いや、俺だってさ、お前の意思は尊重する気だったよ?だけどさ、昨日校長がせっかくこんなに素晴らしい生徒がうちから出たというのにそれを公開しないなんて勿体なくありませんか?って言うもんだからさ」


少し似せようとしてるのか顎を前に突き出している。


それにも腹が立った。


「…信じられないんですけど」


「文句なら校長に言ってくれよ」


完全に舐められている。


許せたもんじゃない。


「最悪ですよ!皆に知られたらどうなるか!」


ただ平穏だけを求めて来た僕は


何としてでも目立つことだけは避けたかった。


それなりに自分の位置は把握しているつもりだ。


「まあ、いいと思うけどなあ

期待の新人だとなると、たちまちモテモテだぜ?羨ましいな、チッ…リア充が…」


こんな僕が新人賞を受賞したからなんだと言うんだ。


…あんな純愛物語で。


純愛物語で!!!!!!




「おはよー」


「今日どうする?カラオケ?」


「課題忘れた」


「うわ、終わりじゃん、プリッツ食べる?」


教室はいつもと何ひとつ変わらなかった。


まだ皆知らないのか?


ひとり怯えていると、いつも通り担任が入ってきて、

いつも通りホームルームが始まった。


担任の話は何ひとつ入ってこなかった。


窓の外を見つめながらひたすら

どうしたら目立たずにいられるか考えていた。


これからの僕の生活に関わる大事な問題だ。


…だから少し考えすぎた。


「なー、町田くん」


いつの間にか担任の話は終わり手紙が前から回ってきていた。


「町田くん大丈夫?なんかボッーとしすぎ」


「ご、ごめん石井くん」


「や、全然いーんだけど」


それだけ言うと石井くんは友達の席へ移動してしまった。


考えすぎた割には対策は何も思いつかなかった。


教室を見渡しても、いつもと何も変わらない。


たまに大声で笑う人達は、まるで自分の存在感を周りに示しているように思えた。


「石井、うるさすぎー」


と嫌な顔をする女子たちは、男子の目を1番気にしているように思えた。



僕の目がいつものように、窓際の席で止まる。

彼女は透明だった。


可愛いとか美人とか、そういう言葉で表せないような


なんというかただ透明だった。


イヤホンで音楽を聴く彼女。


いつだったか、彼女は邦ロックが好きだと聞いた気がする。


「純粋な歌が好きなの」


そう言って友達に


「なにそれー」


と言われていたけれど、僕はわかる気がする。


要するにきっと、彼女は中身までも透明なわけだ。


彼女と初めて話したのは入学2日目の朝。


僕のお気に入りの小説のカバーが外れていた事がきっかけだった。


「その本、面白い?」


「え?」


まさか自分に話しかけてるとは思わなくて、間抜けな声が出ただけで、


でも彼女は笑いながら言った。


「その本、私も気になってたから」


「ああ、…」


面白かったよ、始まりの1行で物語に惹き込まれるんだ。


ずっと昔の本だけど、初めて読んだ時の衝撃が未だに忘れられないくらい。


描写も全て美しくて、涙が出るほどだよ、


「…うん、まあまあ…かな…うん」


言えなかった。


「…そっか、突然ごめんね」


「いや、大丈夫…」


…なんて臆病な!


ずっと大切にしてきた本のことをまあまあとまで言ってしまった僕に、


それを言えてしまった僕に嫌気がさした。


あれからもう何日も彼女とは話せていない。


彼女は時々本を読んでいるから、


「面白い?」


って聞こうかとも思った。


でもその頃既に僕は、自分の位置を正確に把握していたので、簡単に話せるものではないことも十分分かっていた。


「特別話したいわけでもないしな…」


そうずっと言い聞かせて、ただ離れた席から彼女を見つめていた。

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