4、少年は。
「もう良いんだ生きなくて。全てがどうでも良い。僕なんかいない方がいいんだ。この世界に僕は必要ない。何故僕は生きているんだ。何故僕は死ねないんだ。」
少年はブツブツと言っている。
倒した宮廷魔道師達なんて視界にも入っていない。
負の感情がつまったブラックホール的なモノを振り回していた。
ピタリと動きを止め、「今まで死ねなかった。けど………」と、負のボールを自分に当てようとした。
「ちょ、待ちなさいっ!」
土魔法で腕を固定した。
「何をするんだっ!?僕は死にたいだけなんだ!!何故止める!?僕なんかいない方がいいんだ!!」
「……………分かった。」
じゃあ……と、言いかけた少年に私は腹パンをかましてやった。
呻きながら倒れていく少年を風魔法でキャッチして、
「では、お邪魔しました。」
と、倒れている宮廷魔道師達にお辞儀をして部屋を出る。
私は礼儀を忘れない。
少年に安定の魔法をかけてやった。また暴れられたら困る。
「うん。これでいいかな。もしもーし、大丈夫?少年。」
起きない。だよね。
「ングゥ…………あれ……?僕は………………………?」
「こんにちは、少年。どうなってたか、分かる?あ、先に名前を教えて貰ってもいいかな。」
「僕は…………………絢永。長谷部絢永です。」
「了解。ケントくんね。君はー………日本人だね?」
どっからどう見ても日本人だけど。黒髪黒目で。確認は大事だし……ね?
「そうですけど…………?それがどうかしましたか?」
「簡潔に言うね?ココは異世界。君は勇者召喚でやって来た。君の他に人はいなかった?」
顔にハテナが浮かんでる。面白い。
「なるほど。異世界ですか。ようやく僕は死ねたのですね。」
……………。
わかってないな。
「ハ、アハハッ、ようやく、ようやく死ねた!何をしても死ねなかったこの僕が!やっとだ!ようやくあの二人から離れれた!」
「ダメだよ?狂っちゃ。」
自覚しないと。
私は呪いを纏った手でデコピンする。
吹っ飛んじゃった。
脳揺らしちゃったかな?
まぁいいか。
「現実逃避してないで。天国じゃないよ。起きなさい。」
「……………?痛みがある。僕は死んでない………?何で?─────ヒュッ ゲホッゲホッ ゥグ……何故僕は死ねないんだ………?」
ケントは血を吐きながらも左目を引っ掻いている。前髪で隠れているから見えない。
何かあるんだろうね。
引っ掻き回されたくない何かが。
本人が言えるまで待つか。
「ココは現実。ほら、起きなさい。私が呪いの暴走から救ってあげよう。」
ケントは何か言いたそうにしながらも、私の伸ばした手を取った。
お読み頂きありがとうございます。
誤字脱字ありましたら報告お願いします。