アホがやって来た
第1話
私はかつて、この世界に落ちてきた。
私はこの世界で、悲惨で過酷で理不尽な半生を歩んできた。
努力は才能を上回る……そう信じて努力を続けてきた。
しかしどんなに足掻いても、才能には勝てない。
私は才能の壁にぶつかった。
才能ある人間は私に上から目線な態度を取ってこう卑下した。
侮辱と皮肉の台詞を言われたとき、私の中の積み上げてきた全てが崩れ落ちるような感覚を感じた。
才能や努力を一切認められず、人格を真っ向否定されて嫌われて、侮辱されても辱しめられても、それを耐えてここまで努力をした。
それは何のためだったのか?
……何もわからなくなっていた。
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俺は走る。何のために?
……ひたすら目の後ろの危機から生き延びるため。
現在、線路を全速力で走りながら、列車から逃げ延びようとする俺は、佐東仁朗。
成績最低、顔面普通、筋肉最高の中学生である。要するに筋肉馬鹿だ。自分で言うのも何なんだがな(泣)
俺は音楽を聴いていたので、踏み切りの音に気づかず踏み切りの中に取り残されてしまい、現在進行形で列車から逃げているのだ。
しかし、アホな俺はそうとう不幸なものだ。
目の前から、事故で踏み切りに突っ込んできた車と衝突したのだ。
更に背後から列車も圧し潰しにかかってきたので漫画のようにペチャンコとはいかないが、即死になった。
俺は意識を手放す。
走馬灯に写っていたのは、昨日授業中に居眠りしたのがバレて、先公に廊下に立たされた位だった。
俺は目を覚ました。
しかし、目に映った光景は、先程の線路ではなく何処かしらの高級そうな部屋だった。
出口を探そうとしたら、誰かが部屋に入ってきた。
振り替えると、其所には銅色の王冠を被った無精髭の年寄りがいた。
「誰だよジジイ」
「王様に対してそんな態度とるなよクソガキ」
いや自分で王様言うなよ。と言うか口調悪いな。
「王様ァ?だったらなんで王様とあろう人がそんな没落貴族みたいな格好してるんだよ?」
「世界中の国々が魔王に財力を搾取されてるんだよ察しろカス」
「カス!?誰がカスだボゲェ!?」
「仮にも王様だぞ貴様!!こんな没落貴族みたいな王様だけど一応王様だぞ!!王様にメンチきるな!!」
これ以上メンチきりあってもキリがないのは、アホの俺でも流石にわかる。
「それで、何のようだよ」
「君に魔王討伐をやって貰い
「やだよメンドイ」
最後まで話聞け」
「取り敢えず、君の他に魔王討伐の適正者が居ないんだ!?」
「その適性の条件
「筋肉馬鹿で成績最低」
……ほぼほぼ俺の事じゃねぇか(泣)」
「取り敢えず、魔王の討伐いってこい」
「と言うか王様だろアンタ。兵力はどうした?国の兵力は王様が管理するんだろ?」
「殆どを国の警備に回したから無理!!」
「マジかよ」
「なあ、頼むよマジで!!オナシャス!!何でもしますから!!」
「ん?今何でもするっつったね?」
「じゃあ取引だ。俺が魔王を潰したら、元の世界に帰してくれ」
「わかった。これを渡すから、早く魔王を倒してこい!!」
ジジイもとい王様が、なんか光輝く剣と、黒のコートとダークグレーのインナー、銀色のプロテクターを俺に持たせた。
「わしが若い頃に使ってた鎧じゃよ。わしはもうジジイ。まともには闘えん。と言うわけで行ってこい」
「これ何円の価値あんの?」
「数兆円位はするはずだったぞ。」
「よし即刻売ろ
「売るなよ?売ったら約束は即刻破棄だからな?」
……ハイ」
「お前には監視をつけておく。覚悟しておけよ」
ッチ、自由に出来ないか。
取り敢えず魔王ぶっ潰したら、元の世界に帰してくれるので、取り敢えず行きましょう。
なんやかんやで、俺は旅に出る事になった。
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取り敢えず序盤で情報収集。これ、めっちゃ大事。
取り敢えず序盤で情報収集。大事な事なので二回言いました。
へ?三回の方がいい?
良いだろ何度でも言ってやるよ!!耳タコが出来るくらい言ってやるよ!!
テクテク歩いていたら、なんか看板があった。
なんか情報が書いてあったりして。
『南の森でヘドロモンスター大量発生中!!ヘドロモンスターを討伐した旅人には報酬5万円!!』
行こう!!金だ金!!お金が全てだ!!
と言うか、このヘドロモンスターって、ドラ○エに出てくるスラ○ムに似てね?
と言う訳で、腕試しとレベル上げと賞金稼ぎに南の森にGo!!
既に人がいるかもだけど……。
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早速見つけた!!あれがスラ○ムみたいな何かだな!!
剣の鞘から刀身を抜いたとき、突然世界がモノクロになったんだが……。
「バトルについてレクチャーする!!」
うお、ビックリした!!
てか、あんた誰?
「お前の監視とバトルのレクチャーや解説を没落貴族みたいな王に命令された哀れな女騎士、レイナだ!!」
自分で哀れとか言うなよ。
と言うか、あんたもあの王を没落貴族みたいな奴だと思ってたんか……。
「お前の目の前にコマンドが出ただろ。まずは『分析』と書かれている藍色のコマンドに触るのだ」
取り敢えず俺は言われるがままコマンドを触った。
コマンドが一瞬鈍く光り、『相手について』『自分について』『挑発』『笑顔』のコマンドに替わった。
と言うかこのコマンド、まるでUnde○taleみたいだな。
そんなどうでもいいことは頭の隅に追いやって、取り敢えずは『挑発』と『笑顔』のコマンドを同時に押してみた。
『貴方は最高の笑顔でヘドロモンスターに挑発した。』と言うアナウンスがなった瞬間、俺は両手の中指をポ○テピピックのように鋭く突き上げて、最高の笑顔でこう侮辱してみた。
「や~い、くそ雑魚スラ○ム擬きめ!!」
スラ○ム擬きのヘドロモンスターはぶちギレて、俺にヘドロを投げつけてきた。
うん、ぶちギレるのは当たり前だよね。
俺は咄嗟に女騎士の後ろに隠れた。
当然、女騎士の顔面にヘドロがかかってしまい、怒った女騎士とスラ○ム擬きが一緒に結託して襲いかかってきた。
うん、当たり前だよなぁ。
……うん、やっぱり俺は馬鹿だわ。
取り敢えず『攻撃』と書かれた銀色のコマンドを押してみた。
目の前にバロメーターみたいなのが現れて、バロメーターの中心部にある白いラインが左右に動き始めた。
俺はタイミングを計ってラインを叩いた。
ラインはしっかり中心部を差していた。
俺は剣を振りかぶり、まずは襲いかかってきたヘドロモンスターに斬撃の一撃をかましてやった。
ヘドロモンスターは悶絶した後で何処かに逃げていった。
俺は調子に乗って追い討ちしようと追いかけるも、コートの襟首を捕まれて仰向けに倒された。
俺の首に斧を突きつける女騎士。
そう言えばこいつの存在忘れてた。
俺は偶々近くにあった『防御』と言う金色のコマンドを押してみた。
さっきの『攻撃』コマンド同様、こいつもバロメーター式だ。
今度は失敗してしまい、上手く防御しきれず近くの岩盤に叩きつけられた。
女騎士は此方に向かってタックルをかましてくる。
やめてくれ、悪質タックルはやめてくれ。
日○体育大学のラグビー部みたいな事はやめてくれ。
俺は急いでまた『攻撃』コマンドを入力して、カウンターの容量で斬撃をかました。
そして俺は急いで森のダンジョンから抜け出した。
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取り敢えず、攻撃と防御についてはマスターしたつもりだ。
でも、まだ『アイテム』『魔法』『交渉』のコマンドの使い方は理解出来てない。
女騎士のヘイナだっけ?その人をプッツンさせてしまったから、取り敢えず独学で何とかしよう。