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3.ねっこ広場での嘘

 クマたちが、池の中を見ていると、また、そこにいたヘビの苦しげな声が聞こえてきました。


 ぐるるる……助けてくれよぉ。お腹がいたいよぉ……ぐるるるる

 

 リスがいいました。

「ヘビっ、お前は『願いがかなう』だなんていって、森のみんなをだましてたな。その太りすぎた体は何だよ! そうやって、ちっとも動かずにどんぐりを食べ続けてたら、お腹が痛くなったって、当たり前だいっ」

 けれども、


 ぐるるるるっ、体が沈むっ、たすけてぇぇ!!


 そんな叫びが響いてきた時、これは大変とキツネとクマはあせりました。

「体が重くなりすぎたんだ。早く、たすけてやらないと、ヘビくんが池の泥の底に沈んでしまうぞ」

 そんなことになったが最後、二度と外に出してやることはできないでしょう。それに、もしかしたら、ヘビはお腹が痛いのが治らないで、死んでしまうかもしれません。

 大急ぎで岸に上がると、クマは大声でヘビに向かって大声でさけびました。

「ヘビくんっ、しっぽを早くこっちに出してっ! ぼくが岸に引っ張り上げてあげるから」


 ぐるるるるっ、ぐううううっ


 苦しげにうめきながら、ヘビはやっと巨大で長いしっぽの先を岸に出しました。クマは、がしりとそれを両手で抱えると、精いっぱいの力をこめて、引っ張りました。

「キツネくんとリスくんも手伝って!」

「よしきたっ!」

「仕方ねぇっ、手伝ってやるよっ」

 三人で力を合わせて、何とかヘビのしっぱをねっこ広場の大木の下まで引っ張り上げることができましたが、ヘビの体は大きくなりすぎていて、とても全身を池から引き上げることはできません。その間にも、ヘビの体はずるずると池の底へと沈んでゆきます。

「だめだぁ。せっかく、引っ張り上げた体がまた、池の方へもどっちゃう!」

 どうにかしないと、本当にヘビは池の底に沈んでしまいます。

「クマくん、ヘビくんのしっぽをねっこ広場の大木に結び付けることはできないの?」

 キツネはそういいましたが、結び付けるには、ヘビのしっぽは太すぎて、いくら力じまんのクマでも、それはできそうにありませんでした。

「ああ、どうしたらいいんだろう。このままでは、ヘビくんが池の底のに沈んじゃうよ」

 キツネとクマは泣きそうな顔をしています。

 リスがぴょこんと、ねっこ広場に引き上げたヘビのしっぽの上に飛び乗ったのはその時でした。

「俺がここで嘘をつくよ! そしたら、ねっこ広場のねっこに、ヘビくんのしっぽごと捕まって、池の底に引きずり込まれなくてすむでしょ。その後で森の仲間を呼んできて、ヘビくんを引き上げるのを手伝ってもらおう」

「えっ、リスくんが、ねっこ広場で嘘をつくの? 大丈夫なの?」

 おどろいて、同時に叫んだキツネとクマに、リスはいいました。

「まかしとけって! おれは嘘をつくのは大得意だからなっ!」

「そうじゃなくって、リスくんまで、ねっこに捕まってしまうよ」

 すると、リスはへへんと鼻を鳴らしていいました。

「仲間のためだいっ、俺、がんばってみるよ」


* *


 ねっこ広場の大木。

 その下に引っ張り上げたヘビのしっぽの上で、リスは、大木に聞こえるように大声で嘘をつきました。


「どんぐり池のヘビは、世界一の正直者!」


「アライグマは意気地なし!」


「歌上手なコマドリは、ガラガラ声!」


「キツネは大ばか者で、クマはいじわる!」


 それで……と、いったん黙ってから、リスはちょっと顔を赤らめ、それから精いっぱいの嘘をつきました。


「おれは、”逆さ虹の森のみんなが大嫌い”!」


 そのとたん、ねっこ広場の大木のねっこが、つぎつぎに伸びてヘビのしっぽにからみついたのです。

「リスくんっ、逃げろっ! ねっこに捕まるぞ!」

「ほいきたっ! おれの素早さをなめんなよ!」

 ぴょんと、ヘビのしっぽから飛び上がると、リスはねっこ広場の大木の枝をけり、クマの頭の上に飛び乗りました。

「リスくん、でかした! 君って本当に勇気があるね」

 クマがそういった後で、キツネも笑っていいました。

「嘘も上手だったし。とくに最後の”逆さ虹の森のみんなが大嫌い”ってやつがね」

 けれども、リスは照れて、くるりと身をひるがえすといいました。

「おいら、森のみんなを呼んでくる。ねっこに捕まったヘビくんのしっぽも何とかしなきゃならないし、早くヘビくんを池から出してやらなきゃ」

 ところがその時、

「おおーい! ヘビくんはどこだ!?」

「ヘビくんを早くたすけてやらなきゃ!」

 アライグマを先頭に、森の仲間たちがおおぜい、こちらへ走ってくるではありませんか。クマたちは、どうして、みんながヘビのことを知ったのかと、おどろいてしまいました。

「いったい誰が、みんなを呼びにいったんだい?」

 キツネが聞くと、アライグマがこたえました。

「コマドリが歌っていたんだ。どんぐり池でヘビくんがひどい目にあってるって。仲間が困っている時に黙ってなんかいられるかい!」

 クマはまたおどろいてしまいました。あばれん坊でいつもクマをいじめるアライグマの台詞とは思えなかったからです。

「……ええっと、あの……アライグマくんは、なんで……」

 もじもじとしたクマを見て、アライグマはいいました。

「ああっ、もうっ、いらいらする。お前は森一番の力持ちだろっ。 ここで、その力を証明してみせろ! そしたら、もういじめたりしないから」


*  *


 それから、逆さ虹の森の仲間たちは、クマを先頭にみんなで力を合わせて、しっぽを引っ張り、ヘビをどんぐり池から引きあげてやりました。

 ヘビのしっぽにからまった、ねっこ広場のねっこは、リスとリスの家族が丈夫な歯で食いちぎってくれました。ちょっと可哀そうでしたが、大きく膨らんだヘビのお腹には、アライグマとキツネが上でぴょんぴょんとジャンプして、中につまったどんぐりをすべて吐かせました。そのおかげで、ヘビはかなり小さくなって、また、逆さ虹の森のもともと住んでいた巣に戻ることができたのです。


 どんぐり池からの帰り道、リスとリスの家族に、またねとお別れをいった後で、クマはキツネにいいました。

「どんぐり池に”もっと強くしてください”って、お願いをしにいったつもりが、どんでもないことになってしまったね」

 そういうわりには、クマくんの顔は明るく、目はこれまでにないくらい元気にかがやいていました。

 キツネはいいました。

「でも、クマくんの願いはかなったんじゃないの。だって、あの大きなヘビくんの体を池の外に引っ張りだすのに、今日、一番、力を出して強かったのは、クマくんだったんだから」

「うーん。そうかな」

「まちがいなく! あの暴れん坊のアライグマくんがそう認めてくれたんだから」

 それを聞いて、クマはうれしそうでした。その後でクマは思い出し笑いをしました。

「リスくんの嘘は楽しかったなぁ、嘘の反対は本当。だから、リスくんは”逆さ虹の森のみんなが大好き”なんだね」

「うん、まちがいなく!」

 キツネとクマは、あははと笑い合うと、それぞれの家の近くで、またねとお別れのあいさつをいいました。

 そんな二人の頭の上を歌上手のコマドリがやってきて、美しい声で歌を歌いました。


 ♪逆さ虹の森は不思議の森 

  ねっこ広場で真実を語り

  どんぐり池で力を合わせば

  奇跡が起こるよ

  それは、森のみんながうけ取る幸せ♪


 森の空には逆さの虹が出ています。

 昔からの言い伝えでは逆さの虹が出るとよいことが起こるのだそうです。

 ですから、逆さ虹の森では、動物たちが今日も平和にすごしているのでした。



 

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