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瑠璃子

 孫子曰く、百戦百勝は善の善に非ざる者なり。そう、恋愛には「ピュロスの勝利」だってあるのね。

 あたしの数少ない女友達の一人、瑠璃子は絵に描いたようなダメンズウォーカーだ。

 少なからぬ男たちは微妙にもっさりした女を好む。なぜなら、そういう女に対して「意地悪な安心感」を抱けると妄想しているから。そんな男が、ダサい女の皮をかぶった性悪策士女に騙される。

 瑠璃子はオシャレな美人だ。異性ウケよりも同性ウケの方がはるかにいい。だからこそ、あたしは彼女に対して、男を騙す似非ダサ女なんかよりもよっぽど好感が持てる。

 だけど、あの娘は男運が悪い。

 瑠璃子の歴代彼氏たちには美容師やらバンドマンやらショップ店員やらいたけど、そいつらは単なる見栄で、オシャレな美人のあの娘を自慢の種にしていた。だけど、そいつらは結局瑠璃子を捨てて、上辺だけの素朴さを売り物にする似非ダサ女になびいていった。

 もし仮にあの娘とあたしがレズビアンかバイセクシュアルだったならば。あたしはふと思う。そこら辺のクソ野郎連中なんかよりもよっぽど彼女を幸せに出来る。いや、幸せにしたいと思うだろう。だけど、あたしは同時に一人のノンケ女として、瑠璃子に対して嫉妬と羨望と劣等感をも抱いている。相手は一般的なノンケ男たちにはウケないタイプなのにね。


 小学校であの娘に出会った時から、あたしは彼女に惹かれていた。あたしが持っていないものを、彼女は十二分に持っている。あたしは彼女になりたいと思っていた。

 瑠璃子は寛容な人間だ。持てる者ならではの余裕。だけど、あたしは持たざる者であるにも関わらず、いや、持たざる者だからこそ余計に彼女を密かに崇拝していた。

 義務教育時代の、同じクラスのバカ女どもには決して同調しない。あたしたちはそういう点で共犯者同士だった。強く、賢く、自分の意志を持つ彼女は魅力的だけど、ほぼ唯一の欠点は無駄に情け深いところだった。そう、その人の良さに付け込まれて、瑠璃子は男たちに軽く扱われた。


 あたしが身近な同性で一番「美しい」と思ったのが彼女だ。「瑠璃子」という名前にふさわしい魅力的な女だ。身長が170cm近くで、脚もすらっとしていて長い。下手なモデル以上だ。凛々しく毅然とした端正な顔立ちは、これ見よがしに巨乳を見せつけてバカ男たちに寄生する似非ダサ女や本物のダサ女たちとは比べ物にならないくらい、魅力的だ。胸は大き過ぎず、小さ過ぎず、きれいな形を保っている。無駄のない体つき、その細く引き締まったウエストと長い脚がうらやましい。

 賢く良識的な瑠璃子。あたしは彼女が生み出すものが好きだ。美大卒の彼女はきれいな絵を描くし、詩も書くし、歌や創作料理もうまい。教養レベルだって、そこら辺の若い連中なんかよりもずっと上だ。多分、男たちはあの娘に嫉妬しているんだ。

 そんな男たちによって、彼女は異性愛市場で一旦は勝ち組になっても、その成果は時にはピュロスの勝利ですらない。善良な才女なのに、バカで腹黒い男たちにゴミ扱いされてしまうなんて、まさしく「天道是か非か」だ。


 あたしはインターネットの小説投稿サイトで、瑠璃子をイメージした小説を書いて投稿している。これはあたしからの彼女へのラブレターみたいなものだ。子供の頃から身近な存在なのに、色々な意味で高嶺の花。恥ずかしいから、本人には読まれたくないけど、私が瑠璃子が大好きな事には変わりない。

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