11/11
今日は11/11。ポッキーアンドプリッツの日。
私、霜河紗菜には、好きな人がいます。
お相手は、新川海聖くん。クラスの人気者で、明るくて、お調子者。そんな彼が私は好きなんです。
そして今日は、11/11。告白ラッシュで、ほとんどの女子が、新川くんを狙っています。
そんな中でも、新川くんと一番仲がいいのが、染井夏夜さん。美人で明るいこれまた人気者の、女の子。私の憧れですが、染井さんは、私のことをあまりよく思ってくれていません。そんな私たち3人の、11/11
「海聖!ポッキーあげる。」
「おっ、センキュー」
「ヒューヒューおふたりさん、今日もお熱いですな!」
染井さんは、新川くんをファーストネームで呼びます。いいな。
「なんもねーよ!あ、じゃあみんなにポッキー配るよ。みんなで乾杯しよう。」
「乾杯ってなんだよ!」
あはは。やっぱり好きだな、新川くんのこと。
「じゃあ、配りまーす。」
みんながチョコ色の棒を持つ。なんか不思議な光景だなーと思ってみていると、
「みんなまわった?」
えっ、私……無い⁉︎
「あのー私……」
「えっ!うそ!ごめん、もう無い!」
「ねー、まだー?」
染井さんがめんどくさいといった顔で私を睨んでくる。
「あ、私持ってるよ!」
と、隣の席の子がポッキーをくれた。
「揃った?霜河さん、ほんとごめんね。」
「あ、うん。大丈夫だよ。」
「じゃあ、いきまーす。ハッピーポッキー‼︎」
「ハッピーポッキー‼︎」
パキン。チョコでコーティングされた棒は、ほろ苦い恋の味がした。
放課後ー。
「紗菜、一緒に帰ろ。」
「うん。」
友人と帰ろうとした時、
「霜河さん、ちょっといい?」
と呼び止められた。振り返ると、染井さんがいた。
「あ、うん。」
連れていかれたのは、女子トイレ。よく、物語のヒロインが、いじめられる場所だ。
憂鬱な気持ちでいると。
「今日は災難だったね。」
「え?」
てっきり、水でもかけられるのかと思っていたから、びっくりした。
「海聖に意識されてないって分かっちゃったもんね」
「えっ…」
最初は何を言われているか分からなかった。だが、私に浴びせられていたのは、水ではなく、罵倒だった。
「クラスの人数にカウントされてないんだよ。だから、これから海聖に色目使うのやめて。」
「私、そんなことしてない…」
「何被害者ぶってんの?いいから、これから海聖に近づかないで。」
「…」
「それだけだから。」
バタン!
染井さんが乱暴にドアを閉めながら出て行った。
はあ。これからどうしよう…
「とりあえず教室帰るか。」
と、1人で呟いた。
「だから帰ろうって!誰を待ってんの?」
教室に戻ると、染井さんのヒステリックな声が聞こえてきた。
刺激しないよう、ゆっくりと自分の机へ向かっていく。
「あ、霜河さん。」
「待ってたのって、霜河さん⁉︎」
「うん、そうだよ」
「何の用なの⁉︎」
「染井には関係ない。だからどっかいっててくれないかな?」
「あのー、私に用って…」
「あ、そうそう。これ。」
そう言って手渡してくれたのは、ポッキーの箱だった。
「これ…わざわざ…」
「ううん。僕が忘れていたんだし、それに…裏…」
「…え?…あっ!」
涙が溢れる。箱の裏には、
『好き』
と、たった一言。
「あの…、これ」
「霜河さん。好きです。僕と付き合ってください。」
「えっ、海聖⁉︎何で」
「僕と君の間には、何の恋愛感情もなかったはずだよ。」
「それでも私は…海聖のことが好きだった!」
「でも僕は、霜河さんが好きなんだ。」
「……もういい!知ってたよ。海聖が私のことを好きじゃないってことぐらい。」
「染井…」
「霜河さん!」
「はい!」
突然呼ばれて、びっくりしたせいか変な声が出た。
「海聖と仲良くね。あなたには負けた。これから仲良くしてくれる?」
「うん。これからよろしく。」
「じゃ、お邪魔っぽいから行くね。」
そう言った染井さんの瞳には、涙が光っていた。
「霜河さん、返事は?」
「…はい。よろしくお願いします。」
「よっしゃぁ!!、じゃあ、はい。」
新川くんが、一本ポッキーを手渡してくれる。
「2人で乾杯しよう」
「乾杯って」
と、私が笑っていると、
「いいから、いいから。それじゃ、行くよ!」
「うん。」
「ハッピーポッキー‼︎」
2人並んで食べたポッキーは甘い恋の味がした。
ポッキーアンドプリッツの日で思いつきました!
チョコのように、甘く、ほろ苦い恋を楽しんでいただけましたか?
アイディアも募集中です!
これからもよろしくお願いします!