憧れの先輩
トクン。
胸が鳴る。今日も通った。
私は徒歩通学。先輩は自転車。
毎朝の至福の時。
「今日もカッコいいなー、八神先輩。」
「毎朝幸せそうだね。羨ましいよ。」
「恋は元気の源だよ!」
私は、神永優愛。高校2年生。隣は木原沙紀。小学校からの大親友。
そして、私の好きな人は、八神俊樹先輩。
長身で爽やかイケメン。弓道部の1個上の先輩。あと1ヶ月で先輩も引退。
心がはやる。
放課後、部活に走る。先輩に早く会いたい。
部室に着くと、先輩が見えた。
「八神先…」
先輩に話しかけようとしたが、隣に紫吹瑠璃先輩がいた。瑠璃先輩は清楚な美人で八神先輩の幼馴染。2人は同じマンションに住んでいる。
「あっ、八神先輩だ!」
「瑠璃先輩とお似合いだよね。」
後から来た部員が話している。
そうだよね。私なんかじゃ…
「優愛?元気ないね。どうしたの?」
「私なんかじゃ無理だよ。八神先輩は瑠璃先輩とお似合いなんだよ。私なんか、先輩と釣り合わない。」
「…あのさ、優愛。釣り合う、釣り合わないって何?」
「…え?」
「釣り合うとかって、誰が決めるの?」
「それは…」
「優愛。あんたは、見た目によらず純粋で、可愛いし、素直ないい子だよ。もっと自信持って良いんだよ。
」
「沙紀…。ありがとう。ちょっとディスられた気もしなくもないけど。」
「あはは、気のせい、気のせい。さあ、どんとぶつかっておいで!」
「うん。」
「あっ、あの八神先輩!」
放課後、先輩を人気のない北校舎に呼び出した。
「神永さん。どうしたんだい?」
「あの……ずっと前から先輩のこと好きでした!…」
「…ごめんね。ちょっと……」
「すみません。迷惑でしたよね。失礼します!」
そう言って駆け出した。分かっていた。でも、次から次へと涙が溢れてくる。
「うっ……っつ…」
昇降口に降りると、沙紀がいた。
「…沙紀…。」
「…優愛。お疲れ。頑張ったね。」
親友の温かい言葉に、涙がまた、溢れて来た。
ああ、終わったんだな。私の初恋。
それから、三日後。
「沙紀。帰ろー!」
失恋から立ち直ったとは言えないけれど、少しだけ吹っ切れた。沙紀も今まで通り接してくれる。
「あーあ。今日の社会眠かったー」
「だよねー。社会とか将来必要あるのか!って感じだし。」
なんて、たわいもない話をしていた。
「あっ…」
突然、沙紀が声を上げた。視線の先には、八神先輩と瑠璃先輩がいる。
ズキン。
「優愛。行こう。」
やっぱり、2人は付き合っていたんだ。
沙紀に手を引かれて、足早に2人の横を通り過ぎる。
と、左手を誰かに、掴まれた。
「えっ…」
掴んでいたのは八神先輩だった。
「ちょっと良い?」
「あ、はい。」
先輩に手を引かれ、近くの駐車場の裏にたどり着いた。
「あの、神永優愛さん。」
「はい。」
「僕と付き合ってください。」
「えっ…。なんで…」
「君が弓道部に入ってから、ずっと気になってたんだ。可愛いし、練習に対しても真剣だし。ずっと、良いなって思ってたんだ。」
「でも、この前…」
「ああ、あれは…。引っ越す予定だったんだ。でも昨日、予定が変わって、俺だけ1人で残ることにしたから。…君と一緒にいたくて。瑠璃にも相談して…」
「お二人は付き合ってなかったんですか⁉︎」
「うん。全然。」
あんなに悩んでたのに…これが杞憂ってやつ?でも…嬉しい。
「で、あの、返事は?」
「お願いします。」
そう言うとまた涙が溢れて来る。
「さあ、戻ろっか。」
私の手を先輩の温かい手が包んだ。
「あ、お帰りー。ってまた優愛ちゃん泣かして。俊樹になんかされた?」
「ひでーな、瑠璃。なんもしてないよ。なっ。」
「優愛ー。おめでとー」
なぜか大号泣してる沙紀が抱きついて来た。
「沙紀ちゃんずっと心配してたよ。良い友達もったね。優愛ちゃん。」
「はい。後、先輩。すみませんでした。」
「ん?私謝られるようなことされてないけど…」
「先輩にずっと嫉妬してました。八神先輩のことで」
そう言うと、先輩が吹き出した。
「やだ、優愛ちゃん、ちょー純粋。俊樹が、ずっと優愛ちゃんのことで相談しに来てただけだよ。
」
「ちょ、それあんま言わないでよ。恥ずかしい。」
2人の先輩の優しさが、身に染みる。また、泣きそうになる。
「ほら、また俊樹が泣かしたー。これからなんかあったら、私に相談しなよ。」
「はい。ありがとうございます。」
風が通り抜けて行く。幸せという暖かさを運んで。
最後まで読んでくださりありがとうございます❣️
キュンキュンできましたでしょうか?素人なので、下手くそかもしれないですが、他の作品も楽しんでいただけると幸いです。
こんなシチュエーションで!などご希望があれば、書いていただけると、作ってみたいと思います。
作品の感想も、取り入れていきたいので、アドバイス等もお願いします。
これからも色々描きたいので、よろしくお願いします。