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復讐の鐘が鳴る時  作者: 柊なつこ
零章 準備運動
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アジト

「ご主人様」


『何だ?』


「山賊さんの胸の中心が灰色に見えたような気がしたのですが......」


胴体だけになった山賊を両手で掴み首を傾げる。色んな角度から見てみるがやはり灰色には見えない。やっぽり気のせいだったのか...。


『気のせいじゃねぇよ。ってか死体抱えんじゃねぇ気色悪い。人間にはな黒い奴と白い奴、白にも黒にもなれねぇ灰色の奴がいんだよ』


手に持っていた胴体をその場に捨てる。夥しいまでの血だまりに人だった物が落下し、側にあった木々を潤した。


『簡単に言えばいい奴と悪い奴、灰色は半端者だ』


『半端者とは?』


『さっきの野朗みたいな奴らの事だよ。山賊やってんのに心のどっかで良心持ってたんだろ。......あぁ、いい事思いついたぜ』


豪快な笑い声がフリージアの頭の中に木霊(こだま)す。


「...何故笑っているのですか?」


『いや如何って事ねぇ...お前がさっき始めて人間殺ったのを見ていて思ったんだよ。あいつら山賊だよな?』


「はい、見た限りではそうだと判断できます...」


『山賊ってことはこの山のどっかに(アジト)作っているはずだよな。(アジト)があるって事はよ。あいつらがぶんどった宝があるって事だ。......後は分かるよな?』


「申し訳ありません。ご主人様を仰っていることが理解をしかねます」


「ったく頭型すぎんだろ。これから色んな所に行くにしても金は必要になってくる。お前はその性格だし人間の中で金稼ぐのは無理だろ? だからこんな山賊の奴らが奪った金目の物ぶんどるしかネェだろってことだよ。分かったか?」


独りでに浮いた魔槍が柄で私の頭をポンポンと叩いてくる。


前の私の身体と違いこの身体は何と言うか頭の回転がかなり遅いような気がしてならない。さっきからご主人様が言っている言葉が分かったような分からない様な違和感がある。

それにイラつく訳でもなく...何と表現したら良いか分からない。戦闘になれば幾らかマシになるのだがそれ以外はまだダメだな。もしかしてこの身体に馴染んでいないとか? 何にしても現状ではどうしようも無い。

そんな事より今はご主人様(魔槍)が自分で浮くことが出来ることに驚きだ。ん? 驚き? 驚くってどんな感じだったっけ?


「う...ぐっ......ぞが」


『HAHA!! 生きてやがるぜ...一人取り残しだな』


そんな事を考えていると後ろから呻き声が聞こえてきた。


片腕と両足が千切れ飛んでもなを意識があるのは奇跡と言ってもいいのだがこの盗賊は奇跡(・・)の使い所を間違えてしまった。


「申し訳ございません」


『物は試しだ。さっき言った魔力の源(オド)食ってみな。後でどんな味か教えてくれよ』


「よろしいのですか?」


『なんだ? まだ人殺しに躊躇ってんのかよ?」


「......かしこまりました」


「や...め...ろ......あぁ。やめて...ぐれ、やめ―――」


ほんの一時間前は人を殺せるかどうかを考えていたところなのに今となっては自分にどんな力を宿しているのか人間に試したくてしょうがない。

私はためらう事無く盗賊の胸元に片腕を突っ込み、グニュグニュしていて生暖かい身体の中から石のような感触の物を掴み引っ張り出した。

すると、手のひらには小さな宝石のような物がある。それを口の中に入れる。うん、味がしない。


「...理解しました。では先程の山賊の拠点探索を最優先事項として処理します」


『やっと分かったのかよ...ったくこれから色々と教育していかないとな...』


「味がしません」


『あ?』


「...いえ。魔力の源(オド)を食べましたがこれと言って味はありませんでした。無味です」


『HAHA! そうかい。不味いよりはいいだろ? どうだ、少しは魔力回復しただろう?』


そう言われてもさっきとあんまり変化がない。もしかしてさっきの山賊は魔力の保有量事態少なかったのか? 取り敢えず歩きながら考えよう。 


「...いえ。これといった変化はありません......それよりご主人様」


『なんだよ』


「本当に先程の山賊を殺してもよろしかったのですか?」


『さっきのか? 何かあいつにあんのかよ。もしかしてあいつ見たいなのが好きなのか?』


「いえ。拠点を探すのはあの山賊を拷問した方が宜しかったのではと思い『何でさっき言わねぇんだよ!!』...ですから申し上げましたよろしいのですか? と」


『いやいやいやそれじゃわかんねぇンだよ!』


「それよりご主人様」


『今度は何だよ』


「山賊の拠点の様な洞窟を発見しました」


『近すぎるだろ!』


足跡を辿っていると驚く程近くにあった。いや、驚くことは出来ないのだか。先程殺した山賊と同じような奴らが二人入り口の前で立っている。


「殲滅します...魔槍に接続、魔力を開放」


今度は少し魔力を流して見ると身体中に力が溢れ出てくる。この先魔力の補充ができない時が来るかもしれない。だから出来るだけ魔力の消費を抑えなくては。


「なっ!」


「敵しゅ――」


見張りに気付かれるよりも先に一人の山賊の頭を魔槍で貫き、それと同時にもう一方の山賊の口元を塞いだ。


「...問います。この洞窟に財宝はありますか?」


『ありますか? HAHAHA!!』


「な、何だお前は!?」


『おやおや? おいこいつ質問の意味が分かっていないんじゃないか?』


「申し訳ございません。質問の意味が理解しかねます」


『お前ほんと察しがわりぃな。腕なり足なり千切ってやれば喜んで答えんだろうがよ』


また怒られた。心ではこいつの事が嫌いな筈なのに何故か傷つく......様な気がする。これ以上ご主人さまが怒られるのは嫌なので魔槍を地面に突き刺し。山賊の右腕を力一杯に引っ張った。すると、草をむしる様に簡単に引きちぎれた。


「あ”ぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」


「問います。ここには財宝がありますか?」


「ひ、ひ、い、一番奥の部屋。いでぇぇよ。黒い扉の所」


『ありがとさん。お礼に楽にしてやるよ...フリージア』


「はい。ご主人様」


「やめっ!」


顔を掴んでいた腕でそのまま壁で押しつぶした。場所は分かった。後は見つけて奪うだけだ。



































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