救イノ手
遅れてしまい申し訳ございませんでした。何ヶ月も執筆活動が出来ない状態に陥ってしまった為一時休止させて頂いていました。少しずつでありますが投稿していきたいと思いますのでどうぞよろしくお願いします。
「ケホケホ...」
太陽の日の光りで少女は目覚める。
今何処にいるんだ? 確か、森でセルマと戦っていた筈。
辺りを見渡すと一面焼け野原。所々でまだ炎が燃え続けている。
「...ご、ご主人様」
ご主人様に言われた言葉を思い出す。意識を失う直前『お前の身体を貸せ』と言われた。十中八九原因はご主人様。
そう考えながらフリージアは覚醒しきっていない意識で自らの主を探し始めた。
立とうとするが上手く立ち上がることが出来ず、前のめりに倒れる。
ベチャリと瑞々しい音、赤い水溜りに波紋が広がった。
そこで初めて自身の身体の変化に気付いた。
「...身体の一部の欠損を確認......」
右腕の肘から下、左足付け根から下が無くなっている。ご主人様もいない。
「...の、こり魔力一割」
しかも貯蔵魔力が底を付きかけている。
まずい、凄くまずい。
さっきまでなら何時でもご主人様の居場所が分かった。だが今はご主人様の居場所どころか黒の気配も白の気配も感じられない。
「...魔力の源を摂取しなくては」
人でも動物でも何でもいい。兎に角魔力の源を持っている生物なら何でもいい。ふと数時間前に殺した山賊の事を思い出す。確かあの時は資金の確保が目的だったから殆ど魔力の源に手を付けていなかった。山賊のアジトまで辿り着ければ魔力を補充する事が出来る。
「...歩行は困難。魔力節約の為に鎧を解除...目的地、山賊のアジト...魔力補給をさ、最優先」
鎧を魔力に戻しドレス姿になる。地形が変わっている上に自分の現在位置が分からない。それにセルマがまだ生きている可能性だって高い、聖騎士団だってまだ残っているだろう。敵に見つからず何処にあるか分からないアジトを魔力が無くなる前に探し出す。それにご主人様もお迎えに上がらないといけない。
「...探索を開始します」
ズルズルと這いずりながら目的地へ向おうとするフリージア。進んで直ぐに、足に何か当たる。それを拾い上げた。
「人形...」
木で作られた簡易的な人形。刃物でほったでであろう顔のような物は此方を見つめている。何でこんなところに人形が? もう一度目を凝らしながら辺りを見渡す。
「......」
家の骨組みに動物の骨。
間違いない、ここは村、いや、村だった場所だ。
だったら運が良い。わざわざアジトに行かなくても適当に死体の魔力の源を食べればいいのだから。
正直、何処か分からない所から足の無い状態で、それに時間制限ありで探すのはしんどい。
「おい嬢ちゃん...はぁはぁ...大丈夫か?」
黒いドレス全体が泥と炭で汚れたぐらい這いずり回った頃、何処からか男性の声が聞こえた。
「...人間、認識...現状のせ、戦力での...殲滅は不可能」
「? 何を言ってるか知らないがちょっと待ってな」
四十代から五十代? の初老の男性が私を見下ろしていた。すると突然の浮遊感が私を襲う。
「お前名前なんて言うんだ? 母ちゃんか父ちゃんは?」
フリージアをまるで物のように片手で抱えるともう片手で地面に突き刺した物を引き抜く。
「...私...フリージアとい、います」
「フリージアか。俺はセルマってんだ...お前さん、足と手が...」
気まずい顔で私の切断部を凝視している。こっち見んなじじい。
「ッ?! そ、れは...」
「あ? これか? チンピラに絡まれた時に俺の武器が折れちまってな。丁度そこらへんに突き刺さってたのを失敬してきたんだ」
輝きは失っているが間違いない―――
「...それは、私のです」
禍々しい雰囲気を出す槍。こんな槍は一つしかない。ご主人様だ。アレに触れることが出来れば一先ず魔力切れで死ぬ事は無くなる。
「冗談...って訳じゃなさそうだな」
クルクル回すと担いでいる私に持たせる。
「今度は失くすんじゃねぇぞ」
「得体の知れない者に無闇に武器を渡すのは感心いたしません」
「死にかけのジジイでも小娘に殺される程弱っちゃいねぇよ...まだな」
「...そうですが...ありがとうございます」
「無愛想なガキだぜ全く」
「...ご、主人様」
『......』
返事が無いただの屍のようだ。いや、そんな冗談を言っている場合ではない。
魔槍で触れると同時に身体の中にじわじわと魔力が流れてくる。
ご主人様に触れたことで空気中の魔力を吸収する事が出来るようになった。欠損した部位がズキズキ疼く、これは予想だがもしかして魔力を補充することが出来たから身体が再生を始めているんじゃないかと思う。
勿論、私の住んでいた世界と同じでこの世界の住人も千切れた手足が生えて来る事は無い。つまり、そんな芸当を出来る私もおかしい訳で...。
魔力が回復する事が出来るといっても直ぐに戦闘を出来るほど回復していないし回復速度も早くない。だからそれまでは護衛になってくれる人がいる。担いでいる人が手足が生えてきたら絶対怪しむし最悪置いていかれる。
「...それだけは絶対あってはならない」
「何か言ったか?」
「...いえ、何も」
私は目を瞑り、これからの起こりうる事を考えながら自分の主人を握り締める。
「...怪しまれないようにしなくてわ」