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戦国の修験者  作者: 柳田石燕
第1章:『地』の巻
6/8

覚醒

 初めて妖怪というものを目の当たりにした幸人はただた圧倒されていた。

 氷槍を突き刺してくるかのような冷たい眼差し。黒い蜃気楼を発しているかのような禍々しいオーラ。指一本でも動かせば即座に攻撃されてしまうと思えるほど凶悪な形相を前に、幸人の心は完全に折れてしまっていた。


 張り詰めた緊張の中、口火を切ったのはユズだった。


「あんたが斎藤実盛ね。篠原村の稲を台無しにして、ただじゃおかないわ!害虫駆除の始まりよ。」


 小気味よく啖呵を切るユズを尻目に、幸人はすっかり及び腰になっている。


「ばっ馬鹿!初対面の相手に失礼だろ。稲食ってたのだって、何か深ーい事情があるのかもしれないし、ちょっとは相手さんの言い分も聞いて差し上げたらどうだ?」


 相手の威圧感にすっかり尻込みした幸人は必死にクールダウンを図るが、今のユズにはむしろ逆効果だった。


「深い事情なんてあるわけないじゃない。こいつは稲の切り株に足を取られて転んじゃったことの腹いせに稲を食い散らかしているだけのクズ虫なのよ。情けは無用よ。」

「ちょっ、おまっ、今その黒歴史を蒸し返す必要ないじゃねえか。誰にだって一つや二つ恥ずかしい過去があるもんだよ。うん、あったっていいじゃねえか。」

「それにしても、自分からわざわざ出てきてくれるなんて、探す手間が省けたわ。正に飛んで火に入る夏の虫ね。」

「おいィィィ!虫虫ってむやみに煽るんじゃねえよ!あ、あの実盛さん、なんかすみませんー。このじゃじゃ馬、一旦暴れだすとなかなか手に負えなくなりまして・・・。どうかお気になさらないでください。」


 幸人は修験術が使えない。妖怪を相手にできる力を持ち合わせていないのだ。

 とにかく穏便に話を進めたい幸人は必死にユズを抑えつける。

 しかし、幸人の努力もむなしく、実盛はわなわなと打ち震えている。


「・・・主らも」


「へ?」


「お主らもわしのことを馬鹿にするのかぁああ!!」


 そう言って実盛は地団駄を踏んでいる。

 威厳ある老武士の見た目とはかけ離れたひょうきんな言動に幸人はもちろん、ユズまでも思わず凍りついた。


「ああ、そうじゃよ。わしは確かに稲の切り株に足を取られて転んだところを狙われ討ち取られたわい。けどそれは、一生懸命やった結果じゃろ1?わし頑張ったもん!なのに、何でここまで笑い者にされなきゃならんのじゃ。」


 拗ねてるのか卑下(ひげ)てるのか、老武士はやや自嘲気味にまくし立てる。


「昔はまだ良かった。今よりもうちょっと英雄譚っぽく語ってくれていたからの。しかし、時が経つにつれ、お主たち人間が面白おかしく吹聴し始め、どんどん滑稽話になっていくではないか。おまけに、わしとは関係ない害虫被害まで実盛虫の仕業にされ始め、気がつけば日本全国に噂は広まってしもうた。人の噂も七十五日というが、没後五百年以上たっても噂はなくならんし、こんなんじゃ格好悪くて天国にも行けんわい。」


 それで妖怪に身をやつしたのか、と二人は憐れむ。


「最近では妖怪からも陰で噂されるようになる始末。きっとみんな、わしのことを笑っておるんじゃ。」


 なんだか可哀想に思えてきた幸人。

 しかし、ユズは容赦なかった。


「事情はわかったわ。けどね、それが害虫被害をおこしていい理由にはならないわ。そりゃ、あなたも辛いかもしれないけど、あなたの身勝手な行動で困っている人がいる以上、見過ごす訳にはいかないわ。今ここで成仏させてあげる。」


「フン!精霊の小娘ごときに何ができるというのじゃ。稲もろともお主らを食いつぶしてやるわ!」


 実盛は気を溜める姿勢を取り、フンッと全身に力を込める。

 次の瞬間、実盛の全身から視認できるほどの黒く禍々しいオーラが放ち始めた。先程までのひょうきんな姿とは打って変わり、おどろおどろしい出で立ちに変化する。


 準備完了と言わんばかりに実盛はニヤリと笑い、ゆるりとファイティングポーズを取る。


 そのまま木屋平ユズVS斎藤実盛で試合開始のゴングが鳴り響くかと思われたが、しかし・・・。


「ちょっと待ちなさい。あなたの相手は、彼が務めるわ。」


 まさかの試合開始直後の選手交代だった。


「いや、ちょ、え!?何勝手に言っちゃってんの!?おまえ、さっきまでやる気満々で散々煽ってたじゃねえか!自分の発言には責任持てよ!」

「安心して。私の勘によると、あなたの修験術(ちから)はとっくに開眼しているはずよ。さっきあなたと握手を交わした時、修験術の鼓動を感じたもの。大丈夫!あなたならできるわ。」

「勘ってなんだよ!そんなので安心できるか!そもそも握手ぐらいで力の有無が分かってたまるかよ!そもそもお前が戦えばいいだろ1?」


 幸人は必死に食い下がるがユズは聞く耳を持たない。


「言ったでしょ?私は精霊。ただの力の結晶体にしか過ぎないの。」

「だからその理屈がわからねえって言ってんだよ。力の結晶体なんて言うくらいなんだから、妖怪の一つや二つ退治できるだろ。」



「何をごちゃごちゃと()かしておる!」


 突然、実盛は黒い妖力の塊を放ってきた。

 その名状しがたい物体は、水のように流動体で、炎のようにメラメラと燃え上がり、雷のようにほとばしっていた。


 間一髪のところで幸人は回避したが、その妖力弾はそのまま朽ち果てた狛犬の像に衝突すると、ボコボコと石が溶け揮発する音とともに、石像もろとも消滅した。


「うげえ。石製の像を溶かしやがった。」


 幸人の生存本能が告げる。あれに当たったらただでは済まないと。


「ちょ!ほんとタンマタンマ!俺はあんたと戦いたいわけじゃないんだよ!」


「ぬかせ!ここは今戦場ぞ。敵を前に弱音を吐くなど言語道断。戦国の世じゃというのに、腑抜けた小僧がいたものよ。」


 現代のもやしっ子じゃなくても、妖怪の相手はビビると思います、と幸人は心のなかでツッコむ。


 にわかには信じられないが、確かに斎藤実盛は人智を超える妖力を発揮し、今二人に襲いかかっている。

 どうにかして切り抜けたいが、しかし、幸人は修験術が使えず、ユズもよく分からない屁理屈を繰り返し、働こうとしない。

 状況は最悪。どう足掻いても、無理ゲーだった。


「幸人!手よ、手を出して。」


 ユズは掌を指差しながら幸人に指示する。


「握手を交わした時に力の鼓動を感じたって言ったでしょ。きっとあなたの手に何か秘密が隠されているに違いないわ。」

「ふざけんじゃねえ!さっきの石像の有様を見ただろうが。手なんて出してしまえば、腕ごと持っていかれて蒸発しちまうよ!」


 言っている側から、再び実盛は妖力弾を放射してきた。


「ほら、ビビってないで!他に方法はないんだし、騙されたと思って手を出してみなさい。」


 確かにユズの言うとおり、他に有効な手を備えているわけでなく、このまま逃げまわってもジリ貧になるだけだ。

 追いつめられた幸人はヤケになり、恐る恐る右の掌をそっと前に差し出す。

 実盛から放たれた妖力の塊は轟々と音を立て、幸人の右手めがけてまっすぐ迫ってくる。


「・・・ッ!だー!やっぱ無理!こええよ!」


 寸でのところで幸人は回避するも、掠めた妖力の飛沫の一部が幸人の右手に付着した。


「!!!???」


 その瞬間、幸人の右腕に経験したことのないような電撃が走る。


「ぐあああああ!!!痛ええええええ!!!」


 あまりの激痛に幸人は右手を押さえ、そのまま地面に倒れ込んだ。

 目視確認しなければ、皮膚がただれ堕ちたと錯覚してしまうほどの激痛が幸人の右手を襲う。痛みから逃れようと反射的に奇声を上げ、必死にのたうち回っている。

 ごく微小の飛沫だけでこの威力。

 もし、その塊を喰らってしまうと、どのような結末になるかは火を見るより明らかだった。


「幸人!大丈夫!?」


 慌てて駆けつけたユズは取り乱したように幸人の身体を揺する。


「そんな1?確かにあの時、力を感じたはずなのに。どうして・・・。」


 余程予想外の事態だったのだろう。ユズは困惑の表情を浮かべ、申し訳なさそうに幸人を介抱する。



「カッカッカッ。戦場でよそ見は禁物ぞ!」


 相手の状況などお構いなしに実盛は更に追撃してくる。


「調子に乗るんじゃないわよ!」


 ユズは、いつかのように、地面に拳を打ちつけ、岩の鉾を実盛に見舞う。

 しかし、実盛はホコリを払うかのように手の甲で岩鉾を受け流した。


「よいのかな?お主のように美味そうな力の塊がのこのこ妖怪の前に現れて。」


 そう言って実盛は、何かをすくい取るかのように手を広げ、横からユズをなぎ払う。

 キャッ、という悲鳴とともに、ユズはその場から押し出されるように吹っ飛び、そのまま地面に叩きつけられた。


「ユズ!!」


 ユズの元に駆けつけようとしたが、右腕が鎖で拘束されているかのように言うことを効かず、うまく立ち上がれない。


「てめえ!武士のくせに、女の子を手にかけて何も思わないのかよ!」


 だが、実盛は何が可笑しいのか、幸人の言葉には耳をかさず、無遠慮に高笑いしている。


「素晴らしい!これが精霊の力!妖力がみなぎってくるぞい。」


 言葉どおり、実盛から沸き立つ黒いオーラは一段と激しさを増す。

 轟々と沸き立つ妖気を纏い、大柄な実盛は更に一回り大きくなったように咆哮した。


 その時、幸人は初めて理解した。ユズが戦おうとしなかった理由を。

 ユズはこう話していた。自分は『力』の結晶体。その力をどう使うかはあなた達次第だと。

 てっきり『あなた達』とは、修験者だけを指していると解釈していたがそれは間違いで、そこには修験者以外の力、例えば妖怪も含まれていたのだ。

 修験者にも妖怪にも恩恵を与えてしまう精霊(ちから)。正しい者が揮う力は正義だが、悪い者が揮う力は害悪となる。したがって、その『力』そのものである精霊の力は善にも悪にもなりえる。

 だからこそユズは、その力を悪しきことに利用されないよう妖怪と対峙せず、正しく揮われるよう幸人に寄り添ったのだ。

 おそらく実盛はユズをなぎ払った際に、その力の一部をすくい取り、パワーアップしたのだろう。


「カッカッカッ。精霊は感情が高ぶる程に得られる力は増すという。軽く拷問にでも遭わせれば更に旨い力が得られそうじゃのう。」


 実盛は舐めるようにユズを視姦する。


「・・・この外道!」


 ユズは吐き捨てるように罵声を浴びせる。


「外道で結構。わしは妖怪。今は褒め言葉にしか聞こえんわい。」


 戦う前までは幾分、武士道精神を感じられたが、今の実盛は完全に妖怪の心に染まっているのか、別人のような言動を繰り返す。


「しかし、口の利き方がなっとらん娘じゃな。目上の者に不敬を働くとどうなるか、その身体に教えてやるわい!」


 そう言うと実盛はおもむろに右拳を天高く突き上げ、妖力を練りだした。

 すると、それまで実盛の身体を取り巻いていた黒いオーラがみるみるうちに右拳へ集まりだし、巨大な妖力の塊を作り出した。今までの妖力弾の倍以上の大きさだ。


「カッカッカッ。妖力と精霊の力合わさりし時最強。格の違いというものを見せてやるわ。」


 そのまま実盛は、ユズを目掛けて巨大な妖力弾を放った。


「危ない!逃げるんだ、ユズ!」


 幸人は必死に声を張り上げて逃げるよう指示するが、何故かユズはその場に座り込んだまま一歩も動かない。


「だめ・・・。さっきので腰が抜けちゃって、動けない・・・。」

「動けないって!お前、あの黒い塊に当たったらどうなるか分かってんのか!?」

「ええ、いくら精霊といえども、あれほど高密度の妖力弾を受けたら跡形もなく吹っ飛ぶでしょうね。」

「だったら!」


 しかし、ユズはまるで終わりを悟ったかのように力なく微笑む。

 いつもの高飛車でおてんばなゴリ女っぷりは影を潜め、どこかしおらしいその振る舞いに、幸人は殴られたような衝撃を受ける。

 もちろん、精霊であるユズが匙を投げてしまうほど絶望的な状況であることを

 目の前の出来事を無気力に受け入れるような、どこか諦めてしまったような目をしているユズが心の底から腹立たしかったのだ。

 が、同時に幸人は、ユズが目に薄っすらと涙を浮かべているのを見逃さない。


「・・・ッ!くっそおおおお!!」


 幸人はユズを守らんと走りだす。

 相変わらず右腕はいうことを聞かない。

 何かとっておきの秘策があるわけでもない。

 妖力弾に当たれば即死だということも分かっている。

 それでも、幸人は目の前の女の子を見殺しにはできなかった。


 間一髪で駆けつけ、ユズを守るように実盛の、そして妖力弾の前に立ちふさがる。

 特大の魔力弾はもう目の前に迫っていた。

 ユズが何か大声で幸人にまくし立てているが、一切気にしない。

 感覚が麻痺して右腕は使いものにならないため、とっさに幸人は左手を身体の前に出し、肩に力を込め大きな衝撃に備えるように身を固める。



 魔力弾が紙一重のところまで迫ってくる中、幸人はどこか懐かしい感覚に囚われていた。

 現代で星降の楼閣の階段から転落した時のあのフワフワした感覚。まるで自然と同化するような、体全体でゆっくり呼吸するような夢見心地な感覚。

 やはり、死の直前は時間の流れがゆっくり変化し、なんとも言えない浮動感に包まれるようだった。

 走馬灯といえばよいのか、幸人の脳裏にはこれまでの出来事が次々と映しだされる。

 万才じいちゃんの修行に付き合わされた日のこと。

 階段から転落してしまったこと。

 戦国時代にタイムスリップしたこと。

 万才じいちゃんそっくりのご先祖彫門じいちゃんのこと。

 そして、ユズのこと。

 現れては過ぎ去っていくビジョン。

 それは幸人が死の瀬戸際に立たされていることを暗示しているかのようだった。

 始まりあるものいつか終わる。今回こそ本当の終わりかもしれない。

 幸人は全てを諦観した。



 予定調和のように幸人の左掌に妖力弾が命中する。


「うわあああああぁ!!!」


 条件反射的に幸人は断末魔の叫びを上げる。

 始まりあるものいつか終わる。

 今まさに幸人の一生が終わるはずだった。


「ああああ、ああ、あ・・・あぁ?」


 おかしい。


 終わらない。


 先程、右手に妖力弾の飛沫を受けた際は、その微細な一抹だけで、のたうち回るほどの激痛に見舞われた。

 しかし、確かに左掌に妖力弾の塊を受けたにも関わらず、幸人の左手には激痛どころか痛みすら感じなかった。

 やはり、おかしい。

 恐る恐る目を見開いて、幸人は度肝を抜かれた。


 なんと幸人の左手は眩い光を放ちながら、その掌一つで妖力弾を受け切っていた!

 確かに掌には、その手を、腕を、身体を、相手全てを食らいつくさんと迫る猟奇的な力の圧力を感じる。

 しかし、そこに痛みはない。

 まるで左掌を中心に見えない壁が展開されているかのように妖力弾を押さえつけている。

 妖力弾も幸人の左掌という「壁」を前に攻めあぐねているようだった。


「幸人!左手に意識を集中して!その妖力の塊、食べちゃいなさい!」


 ユズはこの空前絶後の非常事態に空気の読めないボケをかます。


「馬鹿言うんじゃねえ!こんなもん食えるか!」

「馬鹿はあんたよ。このあんぽんたん!食べろっていうのはあくまで比喩よ。いいから左手に集中して!」


 何が目的かさっぱりわからないが、とりあえずユズの指示に従い、言われるがまま左手に意識を集中する。


「!?」


 突然、先程まで幸人の左手と相拮抗していた妖力弾がみるみると勢力を失い、左手に吸収されていった。

 幸人はあっという間に絶望的なまでの質と量を有した妖力の塊を吸収しつくし、文字通りその左手で食べた。

 同時に、燃えるように熱い、アツい力が、掌から腕を伝い、全身に駆け巡ってくる。

 沸々と湧き上がるテンション。

 よくわからないが、最高にいい気分だった。


「馬鹿な!?一体何がどうなっておるのじゃ!?」


 渾身の一発を吸収され、実盛は慌てふためいている。


「今よ!幸人!」


 幸人は確かめるように右拳を握る。

 さっきまであんなに動かなかった右手が今は動く。

 吸収し、幸人の体内を駆け巡っていた熱量を一気に右手に集中させる。その瞬間、幸人の右拳は、神秘的な光を放ち始め、燃えるような熱量を放ち始めた。


 思えば、星降の楼閣から落ちていった時、ユズは幸人の下敷きになりながらも身を挺して助けてくれた。

 そのユズを今度は幸人が守ろうとしている。

 だったら、自分から諦めては駄目だった。

 今回こそ自分の終わりだなんて勝手に自分で決めちゃ駄目だ。

 自分が終われば、その後誰がユズを守るのか。

 最期まで守り通さなきゃ、漢じゃない。


「始まりあるものいつか終わる。だったら!今ここで俺が終わらせてやる!!」


 ありったけの力を込めて幸人は、その燃えたぎる右拳を大柄な実盛のみぞおちへおもいっきりねじり込んだ。


「ふぐおわあああああああ!!!」


 一撃を受け実盛は身体をくの字に折り、後ろから縄で引っ張られるかのように吹っ飛ぶ。

 飛ばされた衝撃と痛みに耐えかねて、実盛は思わず片膝をついた。


「こっ、これはまさか、修験術!?」


 驚いたように実盛はみぞおちを押さえ、苦痛で表情を歪ませながら、力なくその場にうずくまっている。


「そのとおりよ!やっぱり私の目に狂いはなかったわね。」


 先程までのしおらしさは見る影もなく、いつもの高飛車でおてんばなユズに逆戻りしている。


「よく言うぜ。さっきまで涙目でヘタれ込んでいたくせに。」


 その現金な性格に呆れながらも、ユズがいつもの調子を取り戻したようでどこか安心する幸人。


「さあ!勝負はここからよ!」

「おう!」


 血湧き肉躍る。

 これまで経験したことのないような感情とエネルギーの湧昇(ゆうしょう)

 もう幸人が妖怪を恐れる理由は一つもない。


 修験者「吉良星幸人」が誕生した瞬間だった。

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