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最終章 セレブライフ再開日

 下越県警察・高之瀬署。

 そこは、単なる取締室ではなかった。

 盗難被害者と母子二人のいる、例外の又例外である空間だった。

 被害者の雪野幸知子は聞き取り人の壁よりに、母親は参考人席側の壁よりに立っていた。


「私は、盗難取調班班長の永嶋です。では、早速だが、指紋鑑定させてもらったがね、君……久間陽二郎さんの指紋がバッグに付着したものと確認を取るために照合させていただきました。その結果が、見事に一致しました。つまり、陽二郎さん……君は拾得物横領罪に準され、これに及びます。ご了解願います。よろしいでしょうか?」


 取締官の言葉に動揺した母親。気絶しそうになった。


「ブレスレットの横領は認めます」


「お早い判断、誠にありがとうございます。して、被害者の雪野さんは、彼をどういたしたいとお申し付けますか?」


「私は、このボウヤを助けたく存じます。まあ、ここまでの経緯を知ってからの判断ですがね」


「では、陽二郎さん……そのブレスレットの一件で知っている全てをご供述ください」


 陽二郎は、過重罪(嘘の供述で酷い嘘に塗り固めた結果の重罪)を防ぐために今までの経緯を母親に聞かせるように話した。


「仕事が発生しないために仕事のフリをして橋桁で時間潰しをした……判りました。それも三ヶ月間もでしたか。ご足労お掛けします。お母さん、ご子息をお叱りにならないでやってくださいますか?」


「いいえ、愚息が競輪で貯めたあぶく銭を給料に見立てたからって、怒りの矛先を我子には向けません。寧ろ、この仕事の少ない社会性に問題がありますゆえに……」


「良い母親だよ、あなたは。私はねえ思い出したよ。久間さんって言ったね。アメリカ行きの旅客機の墜落事故死亡者リストに久間家の父子の名前があったけど、それって……」


「主人と長男でございます」


「私の弟も、死亡者リストに入ってたんだよ。……これも何かの縁。刑事さん、この母子家庭を助けたくなりました。どうか、横領罪の件は見逃せないでしょうかね」


「しかしね。拾得物の買い取り行為だからね。こればかりは……」


「私の叔父は、竹浜弁護士だよ。アメリカ墜落事故の旅客機を調べたあの弁護士でご存じでしょう? 刑事さん」


「あ、あの竹浜弁護士!! しばし、考えさせてください」


 4時間以上もかけた取締りだったが、被害者の計らいもあってか、結果陽二郎は拾得物横領罪を免れたという。


 そして、一週間後――


 久間家は、雪野家の支援により、高そうなマンション生活を余儀なくされた。


 めでたし、めでたし!!


 

 

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