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099.ケルベディウロスが見てきたもの

ケルベディウロスは思う。


恐らく、エクエウという種族は、この『小さき世界』の住人に似たところがあったのだ。だから、特にローヌという場所において、住人に影響を与えた。


自分たちクォルツという種族は、この『小さき世界』では、動物やむしろ自然現象そのものに似たところがあった。だから、特にイシュデンという土地において、大地や環境、動物に影響を与えた。


それぞれ何らかの影響-もともとの土地柄か何かで、そこに一番現れやすかったのだろう。

 

ケルベディウロスは 長い年月の中 冷静に考えようとしていた。


自分は、普段から『小さき世界』に、意識のみで出かけたりしたために、『あの時』とっさに、誰よりも早く、簡単にこの曖昧な場所に、意識だけでも逃れる事ができたのだ。


だが、他の皆は違う。キュオザロンでさえ、あの一瞬では、無理だろう。


他の皆は、どうなったのだろう。

死んだのだろうか。だが、死んだのなら、これほど『小さき世界』に影響を与えるだろうか。

だが、もし自分と同じように、意識だけで存在できているなら、とっくの昔に、出会っていて良いはずだった。だが誰にも会わない。

もしかして、まるで眠ったような状態・・・意識のはっきりしない状態で、この『小さき世界』に逃げてきてはいないだろうか。

もしくは、意識がバラバラになった状態で、逃れてきてはいないだろうか。

もしそうなら、『小さき世界』の住人の一部に意識やエネルギーが混じったり、自然現象や動物に混じったりという事は納得できるような気がする・・・。


ケルベディウロスは考える。


クォルツ、エクエウその両方ともが、被害を受けている。だとすれば、これは第三者の仕業になるのではないか。


決して許さない。姿を見せず、不意打ちの形で、自分たちを締め出した者を。


相手は、『小さき世界』のものではないはずだ。それほどの術を、この世界は持っていない。


自分が、このように顔を出しているのと同じに・・・『真なる世界』に、顔を出している、別の『世界』があったというのか・・・。


ケルベディウロスはプライドを押し殺し、冷静に認める。

『真なる世界』に顔を出していた存在。それが居た可能性は高い。


そうして 腹立たしく口惜しい事に、自分たちの技量を遥かに上回る技量でもって、『あの時』自分たちを、自分たちの『真なる世界』から締め出したのだ。


なんという傲慢。なんという横暴。

愛で育てるならいざ知らず、世界の外の者が、その世界に生きるものを締め出すなど!


そのように考えるに至った後、ある時、ケルベディウロスは、『小さき世界』にて、古い発言の記録に出会う。


“神々の世界は、時間を止められてしまったのだ”


***


ケルベディウロスはその情報に触れたときに、文字通り全身が震える思いだった。


発言者は、クリスティン=ディアス=イシュデン。あのクォルツの影響の強い、イシュデンという土地で活躍した、建築家。すでに他界しており、記録だけが出てきていた。

イシュデンは本当に閉鎖的で、情報があまり外に出てこない。なぜ、この者がこの発言をしたのか、それを知りえたのか、それはもう分からない。


だが、『小さき世界』において、『真なる世界』を垣間見たのではないかと思われる書物や、発言が稀に出てくる。


例えば 『大陸神話 創世記』という書物。神と怪物の対立、という解釈で、クォルツとエクエウの戦いを-しかも、その姿の特徴を良く捉えた絵と共に描いている。


ただ、出てくる情報全てが、正しいものだとは限らないのは事実だ。

例えば『大陸神話 創世記』は、神をエクエウの姿で描き、怪物をクォルツの姿で描いている。

そして、ケルベディウロスにとって非常に腹立たしいことに、残った方をエクエウとして、それが『小さき世界』を創造した、としている。

つまり、真実は含まれているが、大部分を『小さき世界』の住人が勝手に創造し、色付けてあるのだ。


だが、今回のイシュデンの建築家の発言は、正しいもののように思えた。

エクエウが混じった人間であったのか、クォルツが混じった土地に生きたからなのか、もう分からない。だが、この発言者は、何かを知ったのだ。そうとしか思えない。


“時間を止められた”


そう、だからこそ。

殺されたわけでもない。かといって、動くことはできない。

つまり、死んだわけではない。かといって、『真なる世界』に戻る事が叶わない状態。

ケルベディウロスはそれだと思った。何者かが、『真なる世界』の時間を止めたのだ。


― なんという、大それた事を!! ―


『世界』を飛び越えた干渉。『真なる世界』の時間を止めるなどという傲慢な行い。

小ざかしい者どもが、存在する。


許さない。必ずや、己が世界、己が場所を取り戻すのだ。

そう決意しながら、ケルベディウロスは待ち続ける。革命的な手段を持つ者が、方法が、生まれでてこないかと。

長く長く。


プチプチと生まれ死ぬ『小さき世界』の生命サイクルを見守りながら。共に過ごしながら。静かに現れてくる変化を、じっと、見つめ続ける。

長く長く。


そして。

まるで、ほっとしたような、それでいて苦々しいような、どこか腹立たしいような、そのくせどこか喜んだような。そんな奇妙な気持ちでそれらを見た。


ローヌ人の中に、まるでエクエウそのもののような者が生まれだすのを。小さき世界の住人として。

あの、憎らしくも懐かしい、エクエウにそっくりで。まるで、純粋な生まれ変わりと言えるほど。


それらは、酷く最近の事だ。

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