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077.皆が伝えたかった事

白い世界。セフィリアオンデスたちが第五世界と呼ぶ世界。

セフィリアオンデスは、その世界の唯一の住人、トートセンクと共にいる。


「あのさ、あと2日しかないから、言いたい事いっちゃっていいかな? 皆が、アンタに言いたかったことなんだ」

背中に翼を持つこの世界の住人、トートセンクは、空中からセフィリアオンデスを振り返る。

「・・・皆、だと?」

「うん」

セフィリアオンデスは勢いよく立ちあがった。ここは、眼下に、時間を止められたこの世界の住人達の姿がある崖の上。

「皆がアンタに伝えたかった。アンタ、私がどこから来たと思ってんの」

その言葉に、トートセンクはどこか宙に目を彷徨わせた。


「・・・アンタ、全く関心が無かったからって、急に取り繕うの止めてくれる?」

「ならどこから来たのだ」

トートセンクは、セフィリアオンデスの眼をガツンと見据えた。


「・・・アンタ結構、始末悪い性格してんだね。まぁ、いいや。時間勿体ないし率直に言うけどさ。私は、そうだね、この世界からは結構遠いところから来たんだ。アンタのスミカ、入ったところに、大きな柱あるでしょ? あの柱、この世界の中で唯一、鉱石なんだ。私たちの世界は、鉱石―つまり、あの柱の仲間がいっぱいある世界でね。私たちは、鉱石たちと仲良しで、言葉とか、はっきりはしない時でも、感情が伝わってくる」

セフィリアオンデスは話す。

「私たち、ある時から、あんたの世界からずっとメッセージを受け取るようになったんだ。一人残されたアンタを、とても心配するメッセージだった。助けてほしい、助けてほしい、って、ずっと訴える声だった」


トートセンクは、話の内容を疑うような目つきをして、しかし宙空にとどまったまま、話を聞いている。


「私たちの世界で、皆、その声に耳を傾けてさ。正直、心を痛めた。遠い世界の、私たちの友人が、ずっと、助けてってメッセージを送ってるんだ。しかも、その友人は、自分の事じゃなくて、誰かの事を心配して助けてって言っててさ。で、私たち、皆で、その世界に誰かを送ろう、って、決めたんだ」

セフィリアオンデスは真っ直ぐにトートセンクを見つめ説明を続けた。

「そんな事今までやったこと無かったけどさ、皆円陣みたいなの組んで、祈ったり、声を世界に放ったり、とにかく色々した。何が良いのかわからなかったけど、助けようって、皆で決めた。随分長いこと、この世界に誰か送ろう、って、取り組んでるよ。その結果、私がここにこんな風にここに来れたんだけどね」


今、トートセンクに伝えよう。

「私はね、アンタに伝えにきたんだ。アンタは、この世界で、一人になっちゃったらしいね。歴史は、私を呼んだ、あの柱から教えてもらったよ。戦争があって、時間が止まってしまったって。アンタだけ、その場に居なくて、助かったみたいだって。アンタさ、アンタには、あの柱も居るよ。ずっとアンタを見守ってた。これからだってそうだと思うよ。でさ、遠いけど、アンタの他にも、色んな存在が世界にいるんだよ」


「そんなことは、知っている」

トートセンクは、低い声を出した。怒っていた。

「異世界があるということなど、とうの昔に知っている! そこから、この世界に迷い込む者たちがいることも。そんな事を言いに、わざわざここに来たというのか!」

「そうだよ」

セフィリアオンデスは言った。

相手の剣幕に押されそうに感じるのを、腹に力を込めて跳ね返そうとした。

「アンタ・・・私たちの世界もあるよ。ごめん、うまく言えないけどさ・・・世界を広げてとらえてほしい。友人になろう。アンタと、私たち、皆で」


トートセンクはわなないていた。アゴが、肩が、腕が、細かく震えていた。


「アンタの価値観を、否定しに来たわけじゃないよ」

セフィリアオンデスは言った。


「違う」

トートセンクは、吐き捨てるように言った。

「違う。ただ」

トートセンクは、明らかに自分の感情を押さえていた。

「ただ」

グィとあごを突き出すように、そして、それを飲む込むような動作を、トートセンクはした。歯をくいしばるように、言った。

「そんな事を、わざわざ、言われずとも、とうの昔に、知って、いる」


セフィリアオンデスは、まるで睨むように、トートセンクを見詰めた。

「・・・ごめん、ケンカ売りに来たわけじゃないよ」

「言われずとも。ただ」


セフィリアオンデスは、そこで、やっと気がついた。

違う。コイツ、怒りを抑えているんじゃない。


表面上は静かな動きしか見せないトートセンクに、セフィリアオンデスは思わず下を向いて目をそらした。

見ないでいた方が、良いのかもしれない、と、ちょっと思ったからだ。が、様子をうかがって、チラと上目遣いでトートセンクを見やった。


うっ、コワ。

セフィリアオンデスは上目遣いをさっと伏せて、顔をこわばらせた。思いっきり、トートセンクが、眼光鋭く自分を睨んでいるのである。


よく考えたらさ、私たち、第五世界の鉱石の王のメッセージはずーっと聞いてたから、鉱石の王の性質は穏やかだってすごく良くわかってるんだけど、コイツについては、どんな気性かとか、全然知らないで来ちゃってるよね・・・。


言葉を出しかけて、セフィリアオンデスはそれを出さないように飲み込んだ。

何も言わないで、先に相手が何を言うか待った方がいいカモ・・・。


セフィリアオンデスは、顔をこわばらせつつ、また、チラっと上目遣いでトートセンクの表情を盗み見た。

が。ガン! と、睨みつけているトートセンクの表情で、今度は、上目遣いの眼を動かすことが出来なくなった。

コイツ、恐いなぁ・・・自分がどんな顔してんのか、コイツ、気付いてないんカモ・・・。

なんてセフィリアオンデスが思ったりして顔を引きつらせ続けていた時。

スゥ、と、トートセンクが息を吸った。

ん? と、セフィリアオンデスがトートセンクの一挙一動を見守る中。


トートセンクが、涙を落した。左目から、右目から。

両眼から、涙を落した。

怒ったような、顔のままだった。

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