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029.セフィリアオンデスの決意と、アトの判断

あの有翼人種のスミカは、まるで、薄っぺらい岩盤―もっとふわふわ頼りない素材ではあるが―を、幾重にも立てかけ、積み重ねたような姿をしていた。まるで白い山のようだ。


「あ、あのヤロ・・・」

セフィリアオンデスは悪態をついた。有翼人種が一度も自分を振り返ることなく、スルリとその山の中に入って行ったからだ。

「自分だけ、そんな『上』から入る!? 普通、迎えるだろ!? こっちはどっから入るのよ、えっ!?」


とにかく、山に一目散に駆けて辿り着き、セフィリアオンデスは、両手をその白いふわふわしたような素材の壁につけて、気配を探ろうとした。

「ん?」


ちょっと力を込めると・・・両手が、壁の中に、入り込む。


どういうこと? そういうこと? そういうことで良いの?


「・・・」


良いのかもしれない。

セフィリアオンデスは、そのまま、壁の中に踏み込んでみた。すると、踏み込めた。

顔に、ぶわっとガスがかかったような感じがきた。我慢してそのまま二歩進んでみると、圧迫感が無くなった。視界が開けた。


白い壁。高い天井。淡い光。白い床。ホールのような広い空間だ。


セフィリアオンデスは息をのんだ。

中央に、白い柱状のものが、来るものを出迎える役目であるかのように、存在していた。


気がつくと同時に、セフィリアオンデスはタッと駆け寄る。

そして、自分の背丈の5倍はあろうかというその白い柱に両手をペタリとつけた。

しっかりとした存在感。

セフィリアオンデスは、ペタリと柱に抱きついた。

「私たちの友人・・・第五世界の、唯一の鉱石・・・第五世界の鉱石の王!」


柱は、分類してみればギリギリ鉱石に属する、と、セフィリアオンデスたちが思う状態の存在だった。

感覚で、相手から喜びが伝わってきた。


ヨク キテクレタ キテクレタ   ホントウニ ヨク キテクレタ !!


「遅くなっちゃったね」

セフィリアオンデスは、囁いた。

「私は、セフィリアオンデス」


タノミガ アル  セフィリアオンデス

アノ ヒトヲ タスケテ クレ


「うん」


ミテ イラレナイ

ツラソウデ クルシイ ノダ


「・・・私たちの友人、第五世界の唯一の鉱石。この第五世界の、鉱石の王・・・」

セフィリアオンデスは話しかける。

「あんたの頼みが、ずーっと、私たちの世界にまで響いてくるんだ。ずーっと、あんたは助けを求めてた。・・・叶えたくて、世界は私をあんたのいるこの世界にまで送ったんだ。すごく時間がかかっちゃったけどね」


少し目を閉じるように、自分の状況をセフィリアオンデスは確認した。

「予想以上に、あんたに会うのにも時間がかかっちゃったよ。・・・あと3日・・・えーともう2日ちょっとかな。とにかく力を尽くすよ。そうでなきゃ、何のためにここまでやってきたんだか!」


ウケトレ

セフィリアオンデス


白い柱が、ウォン、と、鳴った。ポゥと、穏やかな光が放たれて、ぺったり柱にはりついているセフィリアオンデスの額に吸い込まれた。セフィリアオンデスは、光に目をパシパシと瞬かせた。


脳裏に広がる光景は。


コノ セカイ ノ レキシ

ソシテ

コノ セカイ ノ チズ


「・・・あぁ」

セフィリアオンデスは、ため息をついた。

「・・・あいつら、ふざけてる・・・」


タノム タノム タノム


「うん」


セフィリアオンデスは、白い柱にぐっと額をつけた。決意をあらわすために。

その金茶色の大きな瞳が、ランランと輝く。


絶対に、叶えて見せる。


負けるものか。

みてやがれ、あの 有翼人種!


世界の広さを、見せてやる!


***


アトは、見知らぬ世界の中、あの金茶色の人を探してみていた。

黒いフォエルウが消えてしまったのには驚いたが、やはり違う世界の生き物で、自分の世界に帰ったのかもしれないと思ったから。


しかし、見つからない。誰の気配さえない。

もう自分も帰ろうか。黒いフォエルゥもいなくなってしまったし。


「・・・・」


とはいえ、あまりにも何もしていない・・・気がする。

もう少しは、探した方が、良いような気がする。


というわけで、迷いつつも、一応、当ても無いまま歩いてみる。


だが。

正直、また会える気がしない、と、アトは思った。

何分、どちらの方向にいったか、さっぱり掴んでいないのだ。

アトは、延々と続く白い陰影のある地面を見つめ、空を仰いだ。


「・・・」


やはり帰ろうかな、と。思う。


・・・いや、やはり探したほうが・・・。


しかし会えそうには・・・。



「・・・ん」

アトはふと気が付いた。

母がアトに探すように言った『外からの商人の娘さん』。


そういえば、今日(もう昨日か?)の学校帰りに、トルカに言われてチラっと姿を見たはずだ。

まぁ、遠くだったし、影かなにかで暗くてよく見えなかったけれど。


そうだ、そういえばトルカが『暗い感じで見られてた』なんて言っていた。


「・・・」


トルカの視力は良くないから、真偽の程は分からないが。

トルカのことだから印象をそう表現したのかもしれない。


アトは、金茶色の瞳の主について考えた。

怒っていて、羽根を盗もうとしたり、喚いたり。ダッと勢いよくかけていったあの人。


・・・『暗い感じ』?


・・・あれ? 別の人?

と、アトは思った。


そう思ったら、それが疑いのない答えのように思えた。

探すべきは、違う人だ。


だったら。ここにいてさまよう理由も無い。


アトは後ろを振り返った。帰ろうという気持ちを反映しているようで、チラチラと帰り口が光っている。


帰ろう。そう思った。


***


帰りは非常に簡単だった。行きに時間をかけすぎたのかと思う程。


真っ白な光の中。ただただ、前に・・・


そうして、一瞬、青い光が自分の身をつつんだ、と思った瞬間。


「アト!」

「アトロス!」


アトはドキリとした。

帰り着いた部屋。

そこには、母だけではなく、父までもが自分を待ち構えた様子で立っていた。

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