表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/394

024.約束と取引

「えーと、ダロンって名前の子なんだね?」

『うん・・・』

「とにかく、探してあげるよ。このセフィリアオンデスがね」

『ありがとう!! セフィリアオンデス!』

パァっとクリスティンの声が明るくなった。


名前を呼んでもらったセフィリアオンデスは、上機嫌になった。

皆が羨ましがるはずだ。これは、危険を冒している私への、褒美の一つに違いない。


クスクス笑っていると、上空からの冷ややかな声が落ちてきた。

「生憎と、そんな者がこの世界に紛れ込んだ形跡は無い」


セフィリアオンデスはキッとして上空をにらんだ。あの有翼人種が、いつの間にか、自分の真上に留まっていた。

せっかくの交流に水を差しやがって!

「盗み聞き!? 有翼人種のマナーってあったもんじゃないね!」


しかし、いつもなら、自分から近づいたり声をかけたりしない有翼人種が、ひらりとセフィリアオンデスの前に降り立った。

「セフィリアオンデス。確認したい。それは何だ」


セフィリアオンデスは、耳を疑った。コイツ自ら何かに興味を持って質問してくるなんて!


有翼人種は、青い宝石以外、全く目にも留めていない様子だ。じっと見ている。


「有翼人種が、石に興味があったとはね」

セフィリアオンデスは、嘲笑してみた。

だが、相手はただこう言った。

「声が、聞こえたのだ」


セフィリアオンデスは得意げに笑ってみせた。

「そうさ! 私、クリスティンと会話したんだ!」

「途中で消えてしまった。私が、ここに辿りつく前に」


ん? なんだ、今来たのか、コイツ?

セフィリアオンデスはキョトンとした。

いや、『途中で』って、言った? アンタさっき、確実に、盗み聞きしてたよね、会話聞いて、コメントしたよね!?


「あの声の主は、誰だ」

「何いってんの、クリスティンだって言ったの、聞いてなかった?」

セフィリアオンデスは、思わず尋ねられた質問に素直に返す。


「その者の前に、他の者が声を出していた」


そういえばそうだっけ。ある意味ゲンコツで黙らせたんだったけな。


「会わせてくれ」

「はあ!? 何いってんのよ、アンタ。自分が何言ってるか分かってる?」


「声が、聞こえたのだ」


何でそんなに固執しているのか、この有翼人種。いつもこちらの言動全て無視しやがるくせに。そんなに声が重要か・・・?

と、ピンと、気がついた。

あの声。第二の耳でのみ受信可能だった。それは、目の前の、有翼人種の声と、同じ声だ。同じ質だ。


まさか、コイツ。

セフィリアオンデスは推測した。その推測は、多分、間違っては居ないだろう。


「・・・」

セフィリアオンデスは、ギラリ、と有翼人種を見た。右手から、輝きがぼんやりと落ち出したあの青い宝石を見せてやる。

「欲しい? この青い宝石」


有翼人種は、じっとそれを見つめている。

なんだか切なそうに見える。

チッ、と、心でセフィリアオンデスは舌打ちした。


もー、皆、聞いてくれる? コイツ、本当に、馬鹿じゃない? どー思うよ、ホント。

もっとも、心でいくら愚痴ったところで、自分の世界の皆に届きはしないが。


「取引、してやっても良いよ。この、大切な宝物の代わりに、アンタが持ってる、私の欲しいものを頂戴」

セフィリアオンデスは挑むように告げる。


「分かった。応じよう。・・・欲しいのは、私の羽根だな?」

あっさりと応じられた答えに、きっぱりとセフィリアオンデスは返す。

「違う」


「違う?」

有翼人種は不審の眼差しでセフィリアオンデスを見た。

「お前がずっと狙ったのは、私の羽根」

「それでは見合わない」

セフィリアオンデスは即座に答える。

「私が求めるのは、アンタのスミカへの招待状さ。そして、茶を一服振舞ってもらおう。ゲストとしてね」


「何を・・・。お前を、私のスミカへ招くだと?」


「イヤなら断れば良いだけ。それに、こっちの要求はまだ終わってない。クリスティンから頼まれたの、聞いてたでしょ。ダロンって子を探すのを手伝ってもらおう。アンタなら、超簡単に見つけられる、違う?」


有翼人種は、じっとセフィリアオンデスの顔を真顔で見つめている。

生憎と、こっちも真面目さ、と、セフィリアオンデスは思った。


「・・・分かった。受けよう」

有翼人種は答えた。

「だが、先ほども言ったが、ダロンというのがこの世界に入ってきた形跡は皆無だ」


「探すのよ」

セフィリアオンデスはにらむように言った。

「アンタは、万能じゃない。知らないところで紛れこんだ可能性だってあるさ。探すのよ。私たちのクリスティンのためにね」


有翼人種は、珍しいものでも見つけたような顔を、静かにした。

「盗人は、仲間意識が強いらしい」

などと言った。


お前、許さん。そもそも、盗人という判断はアンタ側からだけのものだ。

セフィリアオンデスは苛立ちながら、静かに思う。


「分かった、探す努力はしてみよう。居ないと分かっていてもな」

冷たい物言いだったが、今は不満を表すことはしない。

「じゃ、まず先にスミカへ入れて」


セフィリアオンデスは、ぎゅっと右手の青い宝石を握った。心の中で、惜しんだ。


クリスティン、話せて嬉しかったよ。

ごめん、皆。クリスティンと話せる青い宝石、取引で使っちゃった!

でも、許してくれるよね! だって、目的はどうやったって果たさないとね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ