表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/394

013.緊急の知らせ

クリスティンは会話を終了し、いつもは使わない種類の知恵を必死に働かせた。

まず、父と母に秘密にしながら祭壇を使う必要がある。ダロンの事はどう言えば良い!?

オブジェを元の場所に隠し、父母のところに戻ったクリスティンは、「ダロンはもう寝てしまった」と嘘をいう事に決めた。


クリスティンが決意してそれを行動に移してみると、父と母はクリスティンを全く疑わなかった。

父は「そうか」と穏やかに頷き、母は、クリスティンに「じゃあ、クリスティン、一緒に寝ましょう」と言ってくれた。先に言われていた事だったから、考えていた答えを返した。「一度居間で寝てみたい」と言うと、「残念だけど、それで良いわ」と父と母は笑って受け入れてくれた。


ごめんなさい。でも。


夜中に部屋に戻って、もう一度『祭壇』を使おう、と、クリスティンは強く思った。


早く、イングス様と話をしなくちゃ。早く、早く。

ダメでも、誰か、僕にできる事を教えて。誰か、教えて。


そうして、父母も寝入った深夜。

父母の部屋の明かりが消えたのを確認して、クリスティンは居間を抜け出した。物音をたてないよう注意を払いながら、ハシゴを登って自分の部屋に行く。


『祭壇』を取り出して窓際に置いた。指で弾くと、キィン、という音とともに、青白い光が輝く。

「イングス様、イングス様、お返事をください。イングス様」

まるで呪文のように『祭壇』に向かってクリスティンは繰り返した。

応答は来ない。


一生懸命、クリスティンは呼びかけ続けた。


「イングス様。僕はクリスティンです。イシュデンに住んでいるクリスティンです。パパはロバートでママはテルミで、床屋をしている、クリスティンです。アト様は学校で一つ上のクラスです。助けてください、お願いです。イングス様、応えてください」


ずっとずっと、呼び続ける。


<こちら SU7787 ガデギュッフ。イシュデンのクリスティンくんへ>

不意に、誰かから応答が来た。

「はい。あなたは?」


<イシュデンのクリスティンくん。キミ、個人情報を流しすぎだよ。だだ漏れだよ>

クリスティンは戸惑った。

「でも・・・」


<俺は善意から注意しにきただけ。あまり実際の情報を流さない方が良い。何がキミのところに向かうか知れたものじゃないしさ>

「・・・。僕、人を探してるんだ。ダロンっていう女の子で、祭壇の向こうの世界に行ってしまったかもしれなくて・・・ガデギュッフ、さん、どうすれば良いか、知っている?」


<知らない・・・が、そういえば、緊急通知が回ってたな>


クリスティンは息を飲んだ。


<まぁ、俺には関係ないと思って詳細しらない>

「お願い、助けて」

<意味わかんねーし。悪いけど、相手してられない>

「どうして」

<ヒマじゃないから。ただ、あんまり危ないから、それだけ注意しにね。悪いけど>

「・・・ねぇ、お願い。『聖域』に入っちゃった人を、どうやって探したら良い?」

<・・・。悪いけど、構ってられない。ごめんね、クリスティンくん>


≪こちら、AA203 サリシュ。クリスティン、私はここに居ますよ≫

「え?」

クリスティンは驚いた。


≪イングスを探していると知って― たぶん、あなたが探しているのは、私だと思うの≫

<AA203、サリシュだって?>

誰だろう、とクリスティンは息を飲んだ。祭壇を通して会話が続いている。

≪ええ。ごめんなさいね、クリスティンと話をしにきたのよ・・・。クリスティン、初めまして≫

「はじめまし・・・て・・・? あなたは・・・?」


≪イシュデン領主、サリシュです。あなたが探しているのは、イングスではなく、私の方よ≫


回答に、クリスティンは瞬きをした。


***


多くの人たちが、会話をしていた。様々な情報が飛び交っている。

何度も何度も『緊急通知』という形で繰り返されているメッセージについて、話している。


--------

NO30902 ローハス発信。

一般人が、『聖域』に移動したと推測される。

個人名は不詳。性別は女性。

発見の方法を知るものは、DO912 クリスティン へ助言を求む。

また イシュデン領主は DO912 クリスティン へ助言を求む。

--------


年齢は、いったいいくつぐらいだ、とか。情報が少なくて手のうちようがない、とか。個人名が不詳とはどういう状況だ、とか。

そんな会話。


思った。

『聖域』と呼ばれる場所に、人が入り込んでしまうなんて、知らなかった。この青白い品物は、単に、どこかに繋がる―声を伝える、連絡用の道具なのだと思っていた。

これほどたくさんの人の声が入るのも今まで聞いたことが無かった。今までは、どこかの誰か二人の会話であったりしただけで。

それに、今までこんな発信は耳にした事が無かった。異常事態・・・緊急事態なのだろう。


自分も加われば良いのだが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ