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012.光る祭壇

クリスティンは、光を放ったままの変った形の置物を、壁に隠していた穴から取り出した。

クリスティンはそれから気付いて、あわてて、ハシゴに蓋をした。


「ダロン!」

部屋の中、何度呼んでも、呼びかけに応える声は無い。

隠れていないか探したが、狭い部屋で、隠れるような場所も勿論ない。

慌てて蓋をずらして、ハシゴから二階を覗いたが、ダロンの姿は見えない。


クリスティンは、急いで手に持っている置物を、窓際に置いた。


緊張と焦りで鼓動が早まる。

絶対に、絶対に、秘密にしなければならないと言われたものなのに・・・どうして、光を出していて、ダロンの姿がないの!


置物は、暖炉のミニチュアのような形をしている。上に、十字がついていて、それより細い線が、十字の交わる部分から放射状にたくさん出ているような装飾がされている。

これは、石見の塔の老婆から、運命の日に渡された。『祭壇』と呼ばれるモノ。


クリスティンは、祭壇の土台部分を指で弾いた。材質に似合わず、キィン、と、高い音が響く。


ダロン、どこ!?


クリスティンは、この町の言葉ではない言葉で、祭壇に向かって呼びかけた。

「お願い! 誰か教えてください!」


***


クリスティンの呼びかけに、反応がすぐにあった。

<どうした。こちら、NO30902。ローハスだ>

「DO912。クリスティン。教えて! あのね、ダロンがー!」


<クリスティン。初めまして。まずは落ち着いて。話を聞くから>

たしかに、慌てているのは自分でも分かった。でも、一刻を争う事のように思える。

「祭壇が、光ってて! 女の子が、居たのに居ないの! どうして!?」


<大丈夫、落ち着きなさい>

「大丈夫!? ダロンの居場所を、知っている?」


<いや、すまないが、私は知らない。ダロンと言うのだね? けれど、女の子なのか?>

「女の子だよ。ダロンだよ」


<・・・尋ねるが、クリスティン、キミの町では、ダロンというのは、女の子の名前なのかい?>

「えっ、そんな名前、僕の町に居ないよ。どっちか知らない」

突然の質問にクリスティンは驚いた。


<・・・そうか。女の子というのは本当だね?>

「そうだよ。僕はそう思う。ねぇ、早く探して・・・」


<落ち着きなさい。私が知る情報で考えるに・・・>

「何?」


会話の相手は黙り込んだようだ。


「ねぇ、どうしたの? 早く、探さないといけないと思うんだ」


<クリスティン。キミ、『祭壇』の注意事項を、勿論、知っているはずだね?>

「うん、でもそれよりー」


<聞きなさい。『祭壇』は、聖域への扉を開く。我々の住む世界とは別のところに繋がっている>


聞くしかない。


<許可を受けた私達は、こうやって、会話に使うことができる。同時に、注意を受けたはずだ。他のものには触らせてはいけない。存在を、知らせてはならない。何故かは知ってるかい?>

「・・・知らない」


<・・・・。これは、私の推測だよ。クリスティン。けれど合っているはずだ>


いいから、早くして。


<居なくなったのは、ダロンという名前の女の子。しかし、ダロンという名前、少なくとも私の知る範囲では男の子に使われるものだ。そしてキミは、女の子だと思う、と言ったね。つまり、男の子のふりでもしていたから、断定できない>


だから?


<祭壇は、扉を開く。私達は大丈夫だ。けれど、私たちの世界に生きていて、しかし生きているような気がしない人は・・・向こうの世界に、入ってしまうのだよ。そういう世界なのだよ。私たちが便利だと使っている世界というのは>

「・・・意味が分からないよ。ダロンはどうなるの? 探せるよね?」


<私が思うに、その子は偽名を使って暮らさないといけない状態にあった。姿が消えたのは、その子が、この世界で生きているように感じていなかったから。向こうの世界に移動してしまったのだ。・・・ならば、探すなどとてもー>

「ダメだよ。探すんだ」

クリスティンは震える声を必死で抑えようとしながら尋ねた。

「ダロンを探すの、どうしたらいい?」


会話の相手は、少し言いにくそうに詫びた。

<申し訳ない。私にはその方法が分からない、クリスティン・・・>


クリスティンは、溢れる涙を服の袖で拭って一生懸命考えた。

どうしたらいい? どうやって探せば?

僕も、そっちの世界に入ればいい? でも、どうやって入ったら良い? 


ダロンが消えたなんて、父母には相談できない。祭壇は秘密にすることで、秘密にした人を守ると言われて渡された。決して言ってはいけない。


<DO912・・・クリスティンはイシュデン領に居るんだね>

「うん」


<私はイシュデン領主と話した事がある。名前は忘れたが、確かにイシュデンの領主だった。会えるなら、相談してみてはどうかな>


イシュデン領主・・・イングス様!

何とかする手がかりがもらえて、クリスティンはハッとした。

「ありがとう! えーと・・・ローハス!」

相手はクリスティンの言葉を受け止めて静かに言った。

<幸運を祈ろう。私もできるだけ皆に、伝えてみよう・・・キミと、友達に起こった事を。キミに道標が与えられますように>

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