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101/394

101.動く

『真なる世界』から戻った『小さき世界』のその子どもが、たくさんの『像』があったとケルベディウロスに話している。

それから、エクエウを一人見たと。加えて、小さい、謎の者を一人。


『像』?

話を聞いて、まず、ケルベディウロスはそれについて考える。


時間が止まったのだという認識は間違いは無いだろう。

だが、今まで、時間が止まるという事がどのような状況か光景として想像できなかった。


全てが暗闇に包まれているかもしれなかった。まるで手の届かないところに隔離されたのかもしれなかった。全てを細かく分解されているのかもしれなかった。


だが、少なくとも子どもには『像』として見えた。

それらは、時間を止められてしまった自分たちの姿・・・自分たちの体なのか。そんな風に、自分たちは・・・自分たちの体は、残っていたのか。


そんな情報を聞いて。

そして、クォルツが、エクエウが、『小さき世界』ににじみ出て生まれ変わるのをじっと見て過ごしてきて。

ケルベディウロスは、自分ひとり残されたような感覚を味わった。

自分だけが、逃れた事で。種族全体の流れから はじき出されてしまった。


いや。だからこそ。

自分には、『真なる世界』を取り戻す力も残されているに違いない。と、思いたい。


リ・・・。

鈴のような音がずっとしている。

『・・・サリシュを随分と、待たせている』

ケルベディウロスは静かに言った。


「・・・手・・・。壊れてて、うまく出せないん、です」

『あぁ』

ケルベディウロスはこともなげに応えた。


『だから うろたえていたのか? ならば、我輩が出してやる。良いか?』

「はい・・・」


リ・・・


ケルベディウロスの腕がアトの右ポケットに延び、中に入っているものをとりだした。小ぶりの手鏡だ。


リ・・・!!

突然、声が、はっきりと響いた。

“ごめん、私が話すよ。”


ケルベディウロスとアトは思わず目を合わせた。

アトロスの母親、サリシュの声とは違っていた。

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