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シークエンス6:よくよく考えるとそこそこ強いアノ魔物

◆シュナーブ遺跡出口付近

『……来ない』

 そこには寂しそうな男が一人いた。

『早く出世したいものだ……』

 そこらのサラリーマンのようだ。

 この男が前の話でとっとと行けと言われていた可哀想な中間管理職の魔族。

 そしてこの男は軽く後日単位で待つ羽目になる事を知りはしない。

 まあ、なんだ。ご愁傷様?


◆タナルプの町〜シュナーブ遺跡:砂漠のオアシス

「さて、体力の温存したいから出来るだけ過術は使わないようにと思ったんだが、駄目だなこりゃ。ことごとく銃弾効いてねぇし」

「芋虫なのにな」

 二人の手には町で作ってきたハンドガン。

「さて、どうするか。もう面倒だから使うか?」

「……仕方ない使うか。都合よくここには水あるしな」

 茂が《流操》を使って湖の水を動かす。

「うげ、赤」

 血以外も混じっている。主に喰い残しの腐敗した肉片。

「一気に悪趣味な術になったな」

「いいの。得意な式だから負担が少ないんだ」

「そうか援護頼む。ちっ如何せん材料が足りなすぎる」

「あいよ」

 晶も式を組む。出現するのはレールガン。

『ギィイイィィィ!』

「何度聴いても慣れない声だ!」

「慣れたら終わりだ」

 二人が顔をしかめる。

 全ての湖の水が抜き取られる。底には白骨やら腐敗した肉やら錆び付いた剣やらが大量に沈んでいた。

「うげっ」

 吸い上げた水全てをイーターにぶつける。目的は溺死させるため。

「表面張力の問題か?更にキモいものが出来上がったな」

 水中にはもがくデカい芋虫。次第に抵抗は弱まっていく。

『ギィィ!』

 仲間意識があるのかは甚だ疑問だが、茂に向けて巨大な頭が振り抜かれる。

「充電は?」

 迫り来る頭にイーターの水死体を叩きつけて減速させながら聞く。

「今終わった」

 亜音速で飛び出した弾がいとも簡単にイーターをぶち抜く。

「ラスト一匹!」

 茂が《水削》を組み上げ、イーターの体を削り取ろうとする。

 が、場所が悪いのと水量が足りない。一撃は少し肉を抉るだけに終わった。

「げ」

 仕留めきれなかったイーターが痛みで暴れる。

 振り回される巨体が二人を襲う。

「充電完了。やれやれ、弾を一発作成するのも一苦労だ」

 二発目が撃ち出される。

「全部潰したっと。おーいもう大丈夫だろ?」

「ええと……いえ、向こうからデザートホエールが来てます!」

「うへぇ、連戦かよ」

「真っ直ぐ進んで来てますから一気に叩けば行ける筈です。数は三」

「私もやるよ〜。一人一匹で潰せば早く済むんじゃないかな?」

「一人で大丈夫か?」

 茂がアリネに問う。

「はい。デザートホエールはイーター程凶悪じゃないので大丈夫です」

 アリネは強く肯定した。

「なら平気だな。後ろに下がっていた方が良いぜ。まったく、誰だよこんなのばっか嗾けるのは」

「向こう側の情報が幾分か欲しいところだな」

「御免なさい。実は向こう側の事に付いては魔王が居るって事以外はさっぱり分からないんです」

 申し訳なさそうにアリネが言う。

「まあ知らないものをとやかく言っても仕方あるまい。退避退避」

 と晶はアリネを下がらせる。

「とと、五秒後くらいに掃射、かな?」

 各々が式を組み始める。

 しかし、デザートホエールは攻撃直前に目の前でUターン。どこかへ引き返して行った。

「……なんだったんだ?」

「さあな」

「なんだか分からないけど終わったよアリ――あれ、居ない……?」

 後ろを向くと居るはずのアリネが居なかった。

「トイレか?」

「ここに便所は無かろう」

「う〜ん……あ!こっ、これは」

 聖が指したところに紙が一枚、置いてある。

「なっ!」

 目を通した瞬間、晶が珍しく驚き

「まさか、こんな事になるなんて……!」

 聖が驚愕して

「ああ……!ところで」

 茂が一瞬愕然とした後、一瞬で真顔に戻って

「俺等はこっちに来て言語には困らなかった、よな?」

「ああ」

「うん」

 同時に肯く。

「それで、だ。お前達これ読めてんの?」

『いんや、さっぱり』

 やはり同時に肯いた。

「……だよな」

「じゃあ議論開始。第一回これはなんて書いてあるでしょ〜」

 気の抜けた声で始まった謎議論。

「私はね、『この娘は預かった。《ピ〜》にしてやる〜』って書いてあると思う」

 聖がさらっと危険な事を言い

「俺は『この娘は生け贄だ。たっぷりと《自主規制》して《ポ〜》にしてやる』だと思うな」

 茂が人前で言えないような事をすらっと言い

「ふむ、『《検閲削除》して《黒幕暗転》を《御都合》』と書いてあるとみた」

 晶に至っては殆ど文が見えない。

『……や〜いえろえろめ〜』

 三人が声を揃えて同時に言った。

 正しくは『連れの娘を返して欲しくばシュナーブ遺跡の最下層まで来い』といったニュアンスの事が書かれているのだが、誰も正解しなかった。

「取り敢えず遺跡に行ってみるか。正直それ以外に方法が見当たらない」

「だよなぁ」

「ねぇ、この地図ってどうやって読むの?」

『………』

 綺麗に固まった。

「……考えるか。やれやれ、頭を使うのは嫌いなんだがな」

「頑張れ賢者〜」

「なにを言っている。勇者も暇人も手伝え」

「暇人って言うなぁ!」

 解読に三十分は掛かった。


◆シュナーブ遺跡:内部

「涼しい。が、乾燥している、か」

 遺跡の内部の状態を声に出す茂。

「句読点が多い台詞だな。つまり水が使えないから無能だと言うことを自白しただけだろう?」

 晶の痛恨の一撃。

「ぐっ!」

 痛いところを突かれた茂は沈黙した。

「ねー。このタイルだけ出っ張ってるけど」

 押してみよーとか言いながらタイルを押した。

「おいおい、適当に押すな――うおっ!?」

 一瞬前に茂が居た箇所の床が思い切り抜けた。

「ふざけるなぁ!」

「ごめんごめん――ん?」

 聖の足下からカチリという音が

「……えへ」

 妙な顔で聖は振り返った。

「次は何だ?」

 天井が降ってきた。

「……今度はプレスか」

 げんなりした顔で二人は聖を見た。

『責任持ってお前がなんとかしろ』

 二人が同時に言うと

「なんとかー」

 聖はすぐさま爆破した。

「うぐぁあ!」

「なにしやがる!」

「なんとかしたよ?」

 しれっと言い訳(素かもしれない)を言う聖。

『殺す気か!?』

「そんなわけ無いじゃないかー」

 こんな所で爆発させるのはいろんな意味で自殺行為だ。

「気を取り直して、次行ってみよー」

 ガチャンという音と共にトラップが作動。

上から遮断するように壁が落ちてきた。

『うおぉおぉああぁぁああ!!!』

 下に居たら軽く死ねるだろう速さの壁を全力で走って逃げる三人。

 騒がしい連中である。


◆????

「……――候は何してるんだ?まったく、一日程度で良くも悪くも結果は出る筈だと踏んでいたんだがな。ふん、些か買い被り過ぎだったか?」

 魔王は呆れたような声で言う。

『はぁ、それですが……』

「どうした?」

『まだ、遺跡に入って少しのところだとか』

「人質も取ったんだろう?当然知らせもした。普通、急ぐものじゃないのか?」

『はい。手紙も置いて参りました』

 魔王はふむ、と足を組んで一言。

「異世界の者なんだろう?字、読めるのか?」

『え、は?』

 男も虚を突かれたようだ。

『でも喋れていたようですし』

「いや、だめだろう。いくら何でも読めない者に期待するのは無茶と云うものだ。有り体に言えば無い物ねだりだろう?」

『ええ、まあ、そうですね……』

「………」

『………』

 二人(カウントの仕方があってるかは不明)はしばしの沈黙の後

「どうするってんだよ!?イベントスキップされたら意味ないだろ!」

 魔王はぷっつんした。

『す、スミマセンッ!』

 平身低頭といった感じで頭を下げる男。

「知らせてこい、とは言わんよ。だがな、いくらなん――」

 扉が開いて何者かが入ってきた。

『どうした――へ?』

 男の耳元でぼそぼそと報告して下がって行った。

「どうした?」

 自分の説法の邪魔をされたのが嫌だったのか少し不機嫌だ。

『そのですね、トラップにかかって勝手にどんどん降りて行ってるそうです』

「は?」

 魔王の目は点になった。


◆シュナーブ遺跡内部:地下?

「はあ、ハァ……!」

「やれやれ……」

「ふぅ。はぁ〜……疲れたよ。ここ何処?」

 それは正直、誰にも分からない

 トラップに追い込まれて遺跡内を走り回った彼らはいわゆる迷子だ。

 すると前方からぬめぬめとした物体が向かってきた。

「おお、ダンジョンらしくモンスターが出たぞ」

「スライムだな」

「なぁんだ雑魚か〜」

 聖が安心した声で言う。

「ドラ●エのし過ぎだ。いいか、スライムと云うのはな

 壱:物理攻撃が効かない。

 弐:その場で分裂し数を増やす事が可能。

 参:こっちが触れたら溶かされてお陀仏。

 つまり非常に厄介な生物だ分かったか?」

「う、うん。分かったよ」

 妙な迫力に押された聖が頷く。

「あ、でもなんで晶がそんなこと知ってるの?」

「……たまに裏山に出るからな」

 晶は小さい声でぼそりと答えた。

「ナヌ?」

「へ?」

「来るぞ」

 形状似合わない俊敏な動きをするスライム。

 ぬらリとした体の一部が飛沫になって飛来する。

「あ、服溶けた」

 被弾箇所から煙が昇っている。

「捕まったら長く保たないな。ち、このコートに対酸の処理はされてねぇ」

 茂が悪態を吐く。

「溶けるからといって酸かどうかは不明だがな」

「どうすれば殺せるがな?」

「蒸発させるか、固めてしまうかが良いだろう。扱いは多分水と同じだから行け茂」

「え゛、俺かよ」

 言いながらも《氷結》をすぐさま組み上げる茂。

「ここは技名を叫ぶところ!」

 聖がアホな事を叫ぶ。

「技名なんかねぇ!」

 茂が叫び返して式が発動する。

 突進してくるスライムの周りがあっという間に絶対零度になり凝固。砕け散った。

「ち、半分逃したか」

 しかし全体を固めるまでには至らなかったらしい。

「追って完全に潰すぞ。後で増えたら面倒だ」

 追っていくとそこは袋小路だった。

「行き止まり……?」

「隠し扉とかは……無いな」

「あ」

 一足遅れて追いついた聖が発見。

「上上!」

 上を見ると幾分か小さくなったスライムが天井に張り付いていた。

「マズ――!」

 奇襲で一網打尽を狙っていただろうスライムは位置がバレると同時に落ちてきた――真下にいる茂目掛けて。

「あづっ!!」

 飛び退いた茂の左腕がスライムに当たったようだ。

 コートが一瞬で溶解して、ずるり、と茂の左腕の皮膚が爛れて滑り落ちた。

 筋肉が露出して血が滴り落ちる。

「一瞬掠っただけでこれかよ」

 空気に触れる事で起こる激痛を無視して茂は式を組み上げる。

 今度こそ、完全にスライムは凍りついて砕けた。

「うわ、グロ……」

 茂の腕の惨状を見た聖のいたわりの欠片もない感想を言う。

「服だけで済んだお前はラッキーだ。痛てて」

 口調は軽そうに聞こえるが額に脂汗が浮いている。

 急いで《治癒》を組み上げる茂。

「いや、それじゃ無理だろう。組織の再構成をしろ」

「うえ、聖よろしく」

 露骨に嫌そうな顔になって聖に頼む茂。

「え、私?しょうがないなぁ」

 しょうがないとか言いながら嬉嬉とした顔で聖が《再生》を組み上げる。

 茂の皮膚組織が新しく作られた。蜥蜴の尻尾の再生を無理矢理高速でおこなっていると思ってくれると簡単である。

 ただ、傷の上を皮膚が這う様に伸びて戻る為、非常に見た目がよろしくない。

「はい、完成〜」

 しかしこの娘はそういった類の現象に強い。

「慣れねぇ……」

「まったくだ」

 二人共げんなりした顔になった。

「そうかな?ところで最初の問いに戻るけどさ」

 聖は袋小路になっているこの場を見回してから

「再度尋ねてみるけど、ここは何処?」

 何処に持っていたのかソーイングセットで溶かされた箇所をちくちくと縫っている聖が最初の問いを繰り返す。

『………』

 それは、やはり誰にも分からなかった。


◆教室

「茂居る〜?」

 教室に現れたのは茂の姉、在処だ。

 現在昼休みである。

 天上大は名前の通り大学もくっついている(本来はこっちが主)ので、大学生が時折現れたりする。

「あ、あの三人は今ちょっと行方不明で」

「へぇ。ありがとね静流ちゃん。あ、そうだ」

 在処は静流という女子生徒に向かって

「僕は今日お財布忘れちゃったからお金を五百円くらい貸してくれると嬉しいな」

「いいですよ」

 静流は財布から五百円玉を取り出して在処に渡す。

「ええと、請求は雨宮君で良いんですよね?」

「うん♪あ、借用書書いとくね」

 何故か持っている借用書にさらさらと達筆な字で書いて判子を押す。

「はい、出来上がり。じゃ、僕はお昼を食べに行くね。ばいばーい」

「はーい」

 茂の知らない所で彼の借金が増えていった。

RPGと言えばダンジョン!定番ですよね?

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