表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/21

シークエンス4:やはり二人も登場し

◆教室

「ん?」

 聖は目を擦った。扉が見えるのだ。

 綺麗な石製の扉だ。

(あー、これが茂の言ってた扉かぁ)

 現在授業中。触りたくても触れない扉が目の前にある。

 しかし彼女の頭の中には茂がどうのと言う思考は無かった。

(何処に繋がってんだろう。うはー早く終わらないかなー、な!)

 同時刻、その左斜め前の方の晶も扉を見ていた。

(ふむ、これが聖の言っていた扉か。何故にダンボール製なのかはさっぱりだ)

 見えているものは皆違うらしい。

(見るからに怪しい扉だな。どうでも良いが眠い)

 そのとき二人の頭に響く声が。

『扉をくぐれ異世界の――よ』

 肝心なところが完璧に聞こえていない。

(うっわあやしー)

(なんか空耳が)

 授業の終了まで後三十分。

 彼等はろくに集中できなかった。

 まあもとより授業を集中して受ける輩ではないのだが……。


◆タナルプの町

「さて、どうするかな」

「どうしましょうか……」

 茂とアリネはは取り敢えずある程度落ち着いた兵士を五人ほど引き連れている。

「こっちは七人。向こうは三百。どう考えてもまともに戦って勝てる数じゃありませんね」

「だからどうしようかな、と考えているんだが……を?」

 兵士の一人が向こうからやってきた。

「勇者殿、住民の避難は終わりました!」

「ご苦労さん。アンタも逃げていいよ」

「いえ、自分も町のために死ぬ覚悟は出来ています!」

 そう言う兵士の足は震えており、今にも泣き出しそうだ。

「うーん、そう言ってくれるのは有り難いが今のアンタじゃ囮にもならないんだよね。それよか逃げて生きてくれ」

 茂はアリネに向き直って

「さて、住民も居なくなったし家が倒壊しようが町が消し飛ぼうが問題なし?」

「ええ、まあ、犠牲が出ないと言う点ではその……問題ありませんけど」

 アリネが言いにくそうに続ける。

「あの、シゲル。どう考えても真っ向から当たっての戦いは敗北しかないような……」

「真っ向から当たれば、だろ?」

 茂はニヤリと笑った。

「なら多少卑怯な手を使えば良い。それじゃ、俺は準備に行ってくる。あ、町中の金属を残らずここに集めといて」

 茂はそう言うと走って村から出ていった。

「だ、そうですので町中の金属をここに集めましょう」

「あのう、あの男は本当に勇者なんですか?」

 兵士のひとりが疑問を言う。

「多分、ですけどね」

「俺達はまだ死にたく無いっす」

 兵士達の顔は恐怖でひきつっている。

「大丈夫ですよ。皆さんは生きて帰れます。ワタクシの名前にかけて」

 アリネは笑顔で返した。

(とはいえどうやって七で三百に勝つき何でしょう?)

 一方茂は町の外で罠を仕掛けていた。

「まあこんぐらいあればいくらか頭数潰せるだろ」

 向こう側を眺めると蜥蜴男達が攻めて来ているのがわかる。

「性懲りもなくまた来やがったか」

 蜥蜴男の影はだんだんと近づいてきている。

 茂は急いで町の中に戻った。

 茂が戻ると色々な金属が集められていた。

「言われた通りに集めましたけど、何に使うんですか?」

「まあなんだ。あいつらを一掃する便利な兵器に変形させるんだ。正攻法で勝てないなら裏技しか無いだろう?」

◆タナルプの町:入り口付近

『あいつらが言っていたニンゲンはあの町に逃げたらしいぜ』

 ノイズがかかったような声。

『俺達の仲間を殺せたのは劣悪種の割にはすげえが、莫迦だろうぜ。本気の俺達に勝てるニンゲンなんかいるわけねぇ!』

 ゲラゲラと笑う蜥蜴男達。

『よし、皆殺しだ。女子供も容赦しねぇ!』

 そう言ってリーダー格の蜥蜴男が踏み出した瞬間、足元から『死』が火を吹いた。

 変わってタナルプの町の広場。

「おーおー掛かった掛かった」

 茂が見た感じを伝える。

「アリネ、向こうさんはいくらか減ってるか?」

「ちょっと待ってください。我が目は、世界見通す空となる!」

 千里眼の魔法らしい。

「三分の一は減ってます!でもどうやって?」

「良いよなあその魔法俺も欲しい」

 茂は欠伸をしながら

「地雷だよ。一つ踏んだら全部一遍に連鎖爆発する特別な仕掛け付きの対人地雷だ」

 ナイフを投げても刺さるのだから十分利くと思っていた茂は勘が当たって素直に喜んでいたが

(うーん、罠とか勇者のやることじゃ無いよなあ)

 心の中はそこそこ微妙な心境であった。

「よし、次だ。全員使い方を覚えたな?」

『はい』

 兵士が返事をする。

 が、茂は

「ちがーう。返事は『サー、イエッサー!』だ」

『さ、いえさー?』

 茂は不機嫌な顔になり

「リテイク」

「あ、あのシゲル、遊んでいる場合では無いのでは……?」

『さ、サー、イエッサー!』

「まあいいや、七十点」

 向こうから何かしらのダメージを負った蜥蜴男達がやって来た。

『小癪な……!』

 呻くように言うリーダー格の蜥蜴男。

「その小癪な手に満身創痍。まあなんだ、お疲れ様?」

 茂が茶化すように言う。

『劣悪種の分際で……!』

「……タブーだよそれは。全軍掃射、全ての敵を纖滅せよ」

 茂が命令を下し

『サー、イエッサー!』

 銃口が一斉に火を吹いた。

 茂は町中から集めた金属をガトリングとその弾にした。

「近代兵器の勝利だね」

 撃っている兵士をも恐怖に陥る一方的な虐殺。

 ドガドガ銃弾が打ち出され弾切れを起こす頃には蜥蜴男達の数は十四まで減っていた。

『き、キサマァ……!』

 しかし至る箇所にも銃弾を受けたあとがあり、血をだらだらと流している。

「悪いね。こっちも生き残るのに必死なんで卑怯な手を使わせてもらったよ」

 茂は《爆裂》の式を組み

「一応聞いとくが最期に何か言い残す事、あるか?」

 まだ喋れる一人の蜥蜴男が茂を睨みつけて

『くたばれ劣悪種』

「……サヨウナラだ蜥蜴野郎」

 残りを吹き飛ばす爆風。

 始まって五分。戦闘とも呼べない戦いは終わりを告げた。

「終わった終わった。全員無傷、だな」

 茂が皆を見回して言う。

 兵士とアリネは呆然自失と言った感じて立っている。

「まあ何だ、皆よく休むといい。こういうのの後は人によっちゃ後味が良くなかったりするが、割り切れ。それが『殺し合い』だと」

 茂は宿に引き上げていった。

「なあ……あれは悪魔か?」

 残された兵士のひとりがぽつりと言った。

 誰も何も言えなかった。


 宿に戻った茂はベットに転がった。

「割り切れ、か。莫迦か俺は。無理に決まってるだろうに」

 自嘲気味に呟く。

 自分の感性が他人とずいぶんと離れているのは判っている。

「いくらなんでも殺したくなるのは異常だよな」

 そんな事を考えながらいつしかまどろんでいた。


◆上空

「ふーんダンボールの。よくそんな扉を開ける気になったわね」

 現在落下中の二人。

「キーワードは扉なんだろう?だったら迷わずくぐるしかない」

 当然晶と聖な訳だが

「あー、何かデジャビュ」

「俺も初めてでは無いんだよ。笑えない事にな」

 感想は三人とも同じらしい。

「お城が見えるよー」

「下は砂漠だな」

 落下地点まで同じ模様。

「どうでもいいけど地雷の痕があるんだけど。何、此処はアフガンかどこか?」

「アフガンには中世ヨーロッパのような城は無い」

 当然だが地面が迫ってきた。

「よし、前と同じ方法で……おや?」

 地面が動いている。

「地中に何かいるよ」

「モグラか?」

 シャチが出てきた。

『は?』

 当たり前だがシャチは砂に住んでいない。加えて肉食獣である。

「ちょうど我々が餌か」

「こんなとこで喰われるのは御免よ!」

 聖が《発雷》を組む。

「やれやれ、着地は俺の役割か」

 晶が《空気層》を組む。

 バチンッと音を立てて数百万ボルトの電流が走った。

 シャチが黒コゲになると同時に着地。

『ゲホゲホッ!』

 砂埃で咽ている。

「さて、これからどうしようか?」

「そうだな、取り敢えず人の住んでいる場所を……む?」

 周りの地面から背びれのようなものが動いている。

「囲まれたね……」

「一人当たり十だ。それにしても暑い」

 シャチの群れがが二人に飛びかかった。


◆タナルプの町

「ん……」

 どのくらい寝たのかいつも太陽が昇っているこの世界だと不明。

「せめて時計が欲しいな」

 伸びをしているとアリネが入ってきた。

「あのシゲル。砂漠で誰かがデザートホエールと戦っているようなのですが」

 眠たい頭を総動員させた茂は

「起きると同時に人が入ってくるなんてどんだけ都合のいい小説だ」

「はい?」

「いや、なんでもない。で、お菓子の鯨が何?」

「いえお菓子じゃなくて砂漠ですけれど……じゃなくてその二人が貴方の着ている服そっくりなものを着ているとかで……」

「……長い赤みがかった髪で妙にあほっぽい女と後ろで灰色っぽい髪括ってるやる気が完全に欠落したような男か?」

 要は聖と晶の事である。

 どうでもいいのだが茂の髪は茶色みがかった黒のショートである。

「ええと、あほっぽいとかやる気が欠落とかは良く分かりませんけど『女の方は上玉だ!男の方は死ねばいい!』って兵士たちが……上玉ってなんです?」

「気にするな。そうかあいつらもこっち来たか」

 茂はニヤニヤ笑って

「さてどっちが暇人だ?」

 出かける事にした。


◆地雷痕付近

「はぁ〜……暑いよ」

「馴れない土地での行動がここまで窮屈とは思わなかったな……」

 二人が倒れている。周りには取り敢えず死んでいるシャチが転がっている。

「あー、私もうだめかも。周りが歪んで見えちゃう」

「俺も意識が朦朧としてきたところだ。この暑い中を厚着で暴れていたのが原因なのか、俺もお前も熱中症だな……」

「冷静に分析は構わないけどあとどのくらい保つのかなあ?私は干物にはなりたくないよ」

「さあな。とにかくこの苦痛さえ無くなるなら……うぷっ」

「ああ、戻さないでよ。貰いゲロしちゃう……」

 二人が不毛な会話を続けていると向かってくる人影がある。

「追い剥ぎする力は……残ってないな。そっちは?」

 首から上以外が動かない晶が割と無茶を言う

「ごっめーん無理。あ、でもお願いすればなんかくれるかも」

 つまり力が残っていれば追い剥ぎの真似事でもするということなのだろうか。

「ちょっとそこの人抱かせたげるから水頂戴!」

 とんでもない事を口にする聖。

「……俺には不可能な技だな」

 げんなりした顔で晶が言う。

「いや、あの人が女とかあっち系の人だったら」

 人が近寄ってきて言う。

「俺は女でもないしあっち系の人でもない。まして聖を抱くのは恐くて出来ないよ」

「……なんだ茂か。来てやったから早く救助しろ」

 晶が安堵したような顔で文句を言う。

「ギヴミー水!!!」

 聖が叫ぶ。

「はいはい、助けてやるからちょっと待て。近くの町に引きずって行ってやる」

「丁重に扱え」

 偉そうに晶が言い

「やさしくして……」

 妙に艶っぽい声で聖が言う。

「お前らなんかおかしいな。熱中症だからか?」

「当たり前だ。だから丁重に運べ」

「酷い!なんかの小説の真似なのに……」

 茂はにこりと笑うと二人の足首を持って本当に町まで引きずって行った。


◆教室

「ん?あいつらは何処へ消えたんだ?」

 担任である科学教師が生徒達に聞く。

「ええと、休み時間に別次元に飛んで行きました……」

「ふむ、成る程つまり」

 出席簿の欄が三つ『死』と書かれた。

「サボタージュだな。まあいい。何次元に行ってもそのうち帰ってくるだろう」

 何の問題もなさげに普通に授業は開始された。

そう言えばメインの人たちの設定も無かったなあと。ダメですね……

多少発想が貧困になりつつあるので更新ペースが更に落ちるかもしれませんがご容赦を

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ