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シークエンス12:考えれない、勘でごー

スナエムの町:パート・聖

(うわー、面倒な奴に当たっちゃったよ)

 かなり早い。

 異様に強い。

(やっぱり人外って強いのかな〜?)

 意味不明な事を考えながら同時にどうしようかを考える。

(持久戦にはならないだろうから最初から飛ばしてもだいじょぶかな?むう、一対一だから使うか)

 迷っていると死ぬ。

 即断即決。

 聖は《改増》を使うと殴りに掛かった。

『む?』

 ここまで早いと飛道具ばくはつとかはほとんど避けられるだろうと踏んだ結果の行動。

 飛んでくる拳を避け

 撃ち込む拳を躱され

 不意打ちの蹴りを防ぐ。

 常人の目にはよく見えない早さのやり取り。

 実は聖も半分以上を勘に頼っている。

『オマエ、本当に人間か?』

 足払いを放つ男。

「少なくとも私は人間辞めてないよ」

 その足を踏み潰そうと足を振り下ろす聖。

『確かに外見上は人間だがよォ』

 無理なブレーキで足を躱し、これまた無理な体制から踏み降ろされた聖の足を蹴る。

 これを聖は体を横に倒して側転。一回転して躱す。

 けった勢いで体勢を戻した男が睨み付ける。

『普通に人間の動きじゃねぇだろぉがよ!』

 手近にあった石を投げる。

 聖は難なく避ける。後ろに飛んでいった石は家屋を破壊して砕け散る。

「まあ、コレはドーピングのようなものだし」

 走る。

 右、大振りの一撃。

 半歩後ろに下がるだけで避けられる。

『貰っ――!』

「甘い甘い」

 そこからもう一歩、踏み込んだ。

 殴った勢いで肩からぶつかる。

 その華奢な体とは裏腹に、さながらダンプカーが跳ね飛ばした錯覚を覚える。

 まあ、この世界にダンプカーは存在しないのだが。

『ごぼっ』

 口から血の塊を吐いて吹っ飛び、壁に叩きつけられて更に吐く。

「ちょっと反則だったかな?それでは良い夢を♪」

 顎を殴る。

 脳が揺らされて気絶する男。

「お、ちゃんと戻るんだ」

 男の姿が人間に戻っていく。

「さて、こうやって下っ端を叩くかな」


スナエムの町:パート・茂

(しっかし、下水も無いのに便所とかどうしてるんだよ)

 意味不明な事を考えながら次の隠れ場所へと走る。

 町人たちが群がっていた場所には即効性睡眠誘導ガスを大量に蒔いて眠らせて逃げた。

 狙うはかしら

(……アイツが盛大に殺りまくったのが効いたのか?)

 あまり町人が見当たらないのを一応恐怖によるものだと処理しておく。

(まあそうなるとまた化け物とか犬とか出てくるんだよな。いい加減こんな町出てぇ)

 そして正義感から『この町の人々を解放してやろう』ではなく『仲間を見つけたらさっさと出て行こう』と考えている茂は探すのだが

「……一体、何処ほっつき歩いてんだよアイツら」

 捕まっていないと仮定した、まあ一種の信頼で町歩いていたのだが『あ、頭叩けば捜すの楽じゃね?』と思い至った茂は聞き出した場所に向かっている。

 家から人の動く気配

「そもさん!」

「……せっぱ」

 晶が出て来た。掛け声もう少し考えろよ。

「お前も一人か?」

「まあな。もっつーことはそっちもか」

『はぁ』

 二人で溜め息。

「まあアイツならほっといてもなんとかなるだろ」

「単純な戦闘能力だけなら俺らよりも上だからな。さて、次は何処へ?」

「ああ、あっこだ」

 聞き出した屋敷に指を向ける。

「……どうやって聞いた?」

「まあ、ちと拷問紛いをな」

「成る程。しかし此処で雑談している暇は無いだろう」

 そこらかしこから声が聞こてきている。

「……安全地帯なんか無いのかよ」

「神野辺りからゲリラ戦について聞いとけば良かったな」

「まったくだ」


◆魔族の居場所

「どうなっているんだ……?」

 事態は正直予想外だった。

 勇者ともあろう者が町人を殺して脱走。

 放っておいた半魔族すら撃破し此方に向かって来ているというのだから混乱しているのだろう。

 それについて魔王からは『死ぬ気でゴーがんばれ』としか言われなかった。

 町人の暴力で死ぬ筈の勇者が、生きていて此処にくる。

 何より信じれなかったのがその他も誰も死んでいないということ。

「なんて事だ……」

 敵は目の前。

「出来る限りの事をしておかねば……」



「なあ、トラップ多くないか?」

「確かに遺跡レベルの量の罠だが」

 床が抜ける、天井が落ちる、槍が飛び出る、エトセトラ。

 おまけに敵とのエンカウント率も高い。

「いたぞ――うわー!」

「莫迦だろう」

「そうだな、莫迦だ」

 向こう側も罠を把握しきれていないらしく、勝手に掛かって自爆している。

「これっぽくね?」

「そうか。じゃあ行ってこい」

 ドアノブに手を掛けた茂が固まる。

「え、お前は?」

「分かっていないな。此処を通る時に罠に町人が掛かって無くなっただろう。そしたら此処まで来た大量の一般(?)ピーポー第二波が雪崩て来るだろう。だから俺が露払いをしてやる。さぁ勇者よ、行くのだ!我が屍を超えて行け!」

「わ、分かった。面倒な役をさせて悪いな」

「大丈夫だ。早く倒してこい」

 親指を立てる。

「おう、任せろ!」

 茂がバタンと扉を閉める。

「まぁなんだ。得体の知れ無いモノ相手にするより一般ピーポー相手のが楽なんだよ」

 町人が幾らか集まってくる。

「面倒なのに変わりはないがな」



『よく来たな勇者よ。正直予想外だったぞ』

 茂が部屋に入ると以前の中年男のような魔族は居らず、腕が六本ある赤い怪物が居た。

「町人が襲ってくるなんてこっちも予想外だ。敢えて指摘するならパンピーじゃ話にならないぜ?」

 パンピーとは一般ピーポーの略である。

『は?ぱんぴ――おあ!?不意打ちとは卑怯な』

 茂は言い終わるやいな《投剣》を発射した。

「煩い。殺し合いに卑怯もへったくれもあるか」

『勇者なら正々堂々ぉ――!!?』

 コート下に隠してあったマシンガンを乱射する。

「やかましい。俺は非常に腹が立っている。だからな、オマエをコミカルに倒す事にした」

『どういう意味だ?』

「そのまんまだこのミル●ラースめ。楽しく攻略してやるからな」

 ハンマーを取り出す。

『貴様勝手な名前を付けるな!我にはクライエル・ミグ・ヴィオクレイトと云う名が――』

 長くて偉そうな名前である。

「くっく、ワンターンキルされないように気をつけやがれミル●ラース!得意技はイオ●ズンですかぁ!?」

 一文字も名前を当てようとせずに茂はハンマー両手に襲いかかった。

『ぬ、「我が視界、凍てつきて砕ける」!』

 クライエルの焦点が茂に合う、前に。

「視線ね。ほい来た!」

 茂がコート下から何か捨てるように放り出す。

『ム……!』

 火炎瓶だ。ただし火はついていない。

 とっさの事にクライエルの焦点が着火されていない火炎瓶に合う。

 カチンと凍った。問答無用である。

「散弾食らえ!」

 中浮く凍った火炎瓶にハンマーをぶち当てる。

 硝子、凍った中身が適当な破片となって飛ぶ。

 細かい。

 広範囲。

 回避不能。

『こんなモノ!』

「おっとついうっかり落ちていたテーブルを殴っちまったぜ!」

 第二撃だ。

 しかし木でできたテーブルは、殴られた衝撃で大量の粉になってしまった。

『わざとらしいな!?』

「わざとだし! 着火!」

 過術で火を付ける。

 粉に次と火がついて、爆発。

 粉塵爆発だ。

 密閉された空間内に細かい粒子があり、そこに火種が飛ぶと爆弾になる。

 昔坑道が時折爆発していたのはこれのせいだ。

 しかし、こんな事したら茂まで死ぬのでは無いか?

 心配ご無用。こんな時のコートです。

『何という無茶を……』

「コミカルに殺るからな」

『しかし、室内でこんな事をしたら部屋ごと吹き飛びそうなのだが?』

「現に吹っ飛んでねえだろ」

 ハンマーを再装填しながら、茂は言う。

「入る時にドアから木以外の材質だって気付いたからな」

 こつんと剥き出しになった金属だか何だかよく分からない壁を叩いた。

「何しても無問題モーマンタイ。寧ろ壊しちゃえ?」

『可愛く言っても可愛くないぞ。今まで散々やって――だから不意打ちは卑怯だろう!?』

「不意打ち万歳卑怯上等。真っ赤にかぁいくデコレーションしてやるよ」

『真っ赤になるか!』

「ナヌ、血が青いのか!?」

『血まみれは決定なのか!?』

「疑問に疑問で返すなって小学校で木村先生に言われなかったのか!? 俺は言われてないけどな!」

 変な事を言いながらハンマーを振り上げる。

『「我が意志にて切断部を定義、切れ落ちよ」!』

 茂の両腕が『ぷつ』と切れた。

 より正確に表現するのなら、縦に綺麗に細胞が剥離した。

「な?」

 ハンマーを握ったまま飛んでいく腕。

 相手の腕(あー)の射程圏内。

 殺害は困難(腕飛んでったな)。

 だから茂は(だったら足だ)蹴り飛ばした。

 相手を飛ばす為の蹴り。

 両腕が無い茂は蹴った反動でバランスを崩して倒れる。

 その勢いを利用して飛んでいった両腕に近寄る。

『く、両腕の定義が限界だと……?勇者め、本当に人間か?』

「ご生憎と人間サマだ。だが両腕切れてもな……」

 床に倒れて腕を傷口につける。

「くっつくぜ!」

 見事にくっついた。

『そんな莫迦な!』

 そりゃ驚くか。

 切断面が綺麗に斬られていて細胞が死んでいないない場合、上手くやれば癒着する。

 この場合は普通に《再生》を使っているから関係無いが、まあ実際腕や指がちょんぎれても運が良ければくっつくよという話。

 良い子も悪い子も試してはいけません。

『デタラメな』

「それはそっちだ。魔法よりデタラメなものがあるかよ」

 何もせずにただ切れる。過学でも不可能だ。

 光学迷彩による不可視の刃、微細振動による切れ味の向上。いろいろすれば似たような結果は出せるだろう。

 だが似ているだけだ。魔法のように『何も通らずただ綺麗に細胞が垂直に剥離した』なんて事はできない。

異常おかしいって絶対)

 その辺が魔法が魔法という事なのだろう。

(流石は中ボスってか。なかなか潰れないな)

 外面は硬いのか、はたまた便利な『魔法』でガードしているのか、適当な飛び道具は効きにくいようだ。

(だったら)

『「我が腕に、破壊の意志を」』

 踏み込んで

「直接いってみよぅ!」

 狙い、腕。

 肩からバッサリ。

 さっきの仕返し。

「腕にお別れ言っとけ!」

 さっとハンマーをしまい一瞬で箒を取り出す。

 腰に箒を構えて踏み込み、仕込み刀を相手の腕を潜るように抜く。

 抜刀術。居合い。鞘から直接抜かれた刃が、振りかぶられた右腕を捉える。

(んん?)

 手応えと、違和感を覚える。

 あっさり過ぎるのだ。

 肉を断ったという感触がない。

(ま、いっか)

 視界の端に斬り飛ばした腕、そして反撃にきた右腕を収めた。

「な!?」

 完全な意識外からの反撃に、マトモな対応も出来ずに殴られる。

 顔面直撃、鼻血ぶー。

「生えるなんて聞いてないぞ?」

 軽く頭が揺れた茂は右に行ったり左に行ったりとふらふらしている。

『こっちだって化け物みたいな勇者とは聞いてない』

 生えたと言うか以前と同じように在る腕には切断した箇所はおろか血の痕すら見受けられない。

(……学者ってこんな突発的事態に弱いんだよな)

 人魂だろうがうんたら現象だろうがなんでもプラズマで片付ける現代人はオカルトに弱い。

 魔法なんて物が出た時点でパニック起こしてもおかしくはないのだ。

 間合いを取る茂。

 攻略法が見つからない今、正体不明アンノウンに接触するのは危険だ。

『「我がかいなよりいでしは破壊の波」!』

(空気!?)

 直感。

 分析の余裕は無い。

 っ、来る!

 クライエルが腕を振るう。

 よくわからないが床がめくれあがる。

 それは茂に向かって一直線。

 過術を使って指定座標を真空状態にする。

 波という発言から振動を連想した結果だった。

 案の定、真空状態にしたところは進まなくなった。

 しかしその間を埋めるように左右から『波』が延びてきて結合。再び元の大きさに戻る。

「えー、反則ー」

(いや、何でだヲイヲイ)

 声はふざけているが内心動揺。

『お前がそれを言うのか?』

 転がっている木片を蹴ってみる。

 木片は『波』の上を通過する際にぱすっと音を立てて消滅。

(『壁状』岩砕機かよ。ああいや、どうするか考えるか)

 状況はそうよくない。

 打開策も少ない筈。

(でも何かあんべや。でもコミカルに倒そうって宣言どーするよ。取り消しか)

 部屋の隅に行って、真空状態を作る。

 左右からの結合ではなく一方からの修復になる。

 その一瞬で向こう側へ。真空状態は密閉空間内を全てしないと直ぐに戻るのだ。

『ほう、避けたか』

「あったぼうよちっくしょー」

(だああ、あぶねぇ。本日二度目の挽き肉ミンチになるとこだった)

 心臓ばっくばくである。

 だが戦意が失せるわけではない。

(真面目に、ねぇ。舐めてかかんのは失礼か)

 お気楽モードを止める。

「俺は雨宮茂。クライエル・ミグ・ヴィオクレイト。アンタを障害と見て排除する」

だらだら長いですね。すいません。

次でこの町からおさらばの予定です。

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