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GAME -2010-   作者: 転寝猫
2/12

12月24日 19:00

「あーーーもう!つまんない!!!」

素っ頓狂な声を上げる不知火に…周囲の人の視線が釘付けになる。

思わず俺は…目を背け、呟いた。

「いつもいつも…声がでかいんだっつーの」

「何よ!水月、聞こえてるわよ!?」

聞こえてたらなんだよ…と、今度は心の中で悪態をつく。

『一年前のあの場所に集合』

メールは俺と不知火先輩、それに睦月に向けて、送信されていたのだが。

まさか…俺だけが、わざわざこんな街の真ん中まで…華やかに着飾ったカップル達の奇異の目に晒されるために、のこのこやってきてしまったのだろうか。

ここはいつも遊ぶ街とは違い、俺達にはちと早い感じがする、大人の雰囲気の街だ。

居心地が悪くて堪らない俺の嘆きなど、全く意に介すことなく…大人っぽさのかけらもない制服姿の不知火は、大げさにため息をついて街灯の柱に手を置く。

「ったく。何でせっかくのクリスマスに、あんたと二人でこんなとこにいなくちゃなんないのよ」

「…呼び出したのはお前だろうが」

「もう!あんた『を』呼んだんじゃないってーの!あんた『も』含めてみんなを呼んだの!あれから一年も経つんだよ!?当時の懐かしい話の一つもしたいなぁ、とかって思うじゃない?けど、みんな面倒臭がりだしさ、全然そういうの仕切ろうとしないでしょ?だからメールしてやったのに…」

苛々した様子で、だん!とアスファルトの地面を踏みしめる。

「ぁんの睦月の馬鹿、『仕事』って何よ『仕事』って!!!」

「仕事は…仕方ねーだろ」

「イブの日に大事な彼女をほったらかして仕事!?ありえないっつの!!!あいつ、仕事とお姉ちゃんとどっちが大事なのよ!?」

そりゃ………

やっぱ…先輩なんだろうな。


初めて会ったときは、なんて気障な奴だろうって思ったけど。

そうそう。なんだかんだ言ったって芸能人だし、先輩のことちゃんと大事にするのかよ…って、内心心配だったんだ。

…それが。

確かあれは、クリスマスの翌日の…生放送のラジオ番組だったと思う。

『実は僕、ついに運命の人に出会っちゃいました!』

冒頭の奴の言葉に…俺は思わず飲んでたコーラを思いっきり吹いた。

『馬鹿か…こいつ』

翌日のテレビやスポーツ新聞は…もう大騒ぎで。

冬休み明けの学校も、『KEIの彼女』の話題でもちきりだった(そして、不知火はいつもに増して不機嫌そうだった)。

どこの誰だ、どんな子なんだって…一年経った今でも、芸能ニュースにその話題が上らない日はない。

たまに会っても、口を開けば文、文、文だし、聞きたくもないノロケ話は延々聞かされるし、

大切にしてることは間違いないんだろうけど。

それはそれで…なんつーか…ちょっと心配になることが、時々ある。


そっか。

もう一年も経つのか。

ウンディーネ…元気かな。

精霊の世界は俺達の世界より、時間がゆっくり流れているらしい。

ひょっとしたら、あいつ…俺と別れた時のこと、昨日のことみたいに思ってるかも知れないな。

『仁』

彼女の声が聞こえたような気がして、振り返ってみるが。

雑踏の中に、勿論…彼女の姿はなく。

華やかに着飾った沢山の恋人達が、腕を組んで幸せそうに歩いているだけだった。

思わずため息をついて…ちぇ、と小さく舌打ちする。

そうだな。

クリスマスの街を一緒に歩くなら…やっぱり。

「ちょっと水月、聞いてんの!?」

………誓って、絶対に…こいつなんかじゃない。

「なぁ、不知火。先輩も今日はバイトなんだろ?そんなこと言ってさぁ、本当はどっかで二人っきりで過ごしてるのかも知れないぜ。だから」

『同窓会は後日ってことにして帰ろう』と言いかけた俺を、不知火は鬼のような目で睨む。

「………何だよ?」

「だったら、行ってみる?お姉ちゃんのバイト先」

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