表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GAME -2010-   作者: 転寝猫
11/12

12月24日 23:30

『今そっち向かってるから』

水月からの電話に、私は思わず…おっきくガッツポーズをした。

ついさっきまでとぼとぼ歩いていた私達の歩幅は…段々大きくなってきて。

…となると、足の長い睦月に置いていかれそうになり。

ちょこちょこと小走りになりながら、私は睦月の背中に向かって声をかけた。

「良かったね睦月!やっぱあいつは頼りになる!」

「…そうだね」

どことなく暗い睦月を励ますように、私は背中を思い切り叩いてみる。

「もう、どうしたのよ!?お姉ちゃん無事だったんだよ!?」

「…うん」

「なぁによ、あんた手柄を水月に取られて拗ねてんの!?馬っ鹿ねぇ、お姉ちゃんすごーく喜んでたじゃない」

「…うん」

「ねえ、お姉ちゃんてさぁ、あーんなに甘い顔で笑うんだね!それに『睦月』って呼ぶ、あの声よ、声!」

思い出すだけで恥ずかしくなって、くうぅ…と思わず両手を握りしめる。

「語尾に『はあと』って付けちゃいたくなるくらい、なんてゆーか、猫みたいな声でさぁ…恋って怖いね、私は今日改めて実感した!」

「…怖い、か」

ぽつりと呟いて、睦月はぴたりと立ち止まってしまう。

「ちょっと、どうしたの?」

「俺もさ………今日、心底怖いと思った」

「………何が?」

「………文を…失うこと」

急に強い風が吹いてきて…私はぶるっと、小さく身震いする。

「馬鹿だよな、俺…文が何しようが、どんな奴と会おうが話そうが、どうでもいいじゃんそんなこと。そんなことより…文が生きていてくれて、あんな風に俺の名前呼んでくれて、笑っていてくれることが…何倍も何十倍も大事だって。何でこんなに大事なこと、忘れちゃってたんだろうって。今日…本気で実感した」

「睦月…」

何だか…胸がぎゅうっと絞めつけられるみたいに…苦しくなる。

前世だかもっと前だか、睦月は死んだお姉ちゃんの敵討ちをして、後を追おうとしていて…そこで、風の精霊シルフィードと出会ったのだという。

そして、何度も何度も転生を繰り返して…やっと愛する人に、再会することが出来たのだ。

そっか。

すっかり忘れてたけど、そうだったんだよね。

ちょっとくらいヤキモチ妬きなのも、それじゃ…しょうがないよね。

それだけ睦月にとって…お姉ちゃんは大切な存在なのだ。

ごめんね、睦月。

私もちょっとだけ…反省した。

これからは、あんまり馬鹿だ馬鹿だって言うの…控えよう。

「本当は、鍵掛けて閉じ込めておけたら一番いいんだけど」

「………は?」

「それはさすがに無理だし…そうだ!白鳥さんの代わりに、俺のマネージャーになってくれたら………でも、文はお医者さんになるって夢があるんだもんね。やっぱり、せめて早くお嫁にもらってあげなきゃ。それで…文に似たかわいー女の子産んでもらって」

妄想モードに突入しだした、半笑いの睦月(テレビの『KEI』なら絶対見せないであろう、油断しきった表情)に…私は思わず、呟いた。

「この…うつけ者が」

それでは…結局話が360度回って…元に戻ってきてしまっているではないか。

呆れかえる私の顔を…きょとんとした目で、不思議そうに見つめる睦月。

「…何?それ」

「だぁから、馬鹿っつったのよ、馬鹿!あんた時代劇も出てたでしょ!?なーんでそんな言葉も知らないのよ!?」

「だって…そんな台詞、なかったもん」

「あーもう、駄目駄目!やっぱり、お姉ちゃんにはあんたみたいな馬鹿じゃ駄目!私絶対認めないから!結婚なんてもっての外よ!天国で泣いてるパパに代わって、私があんたのことぶん殴ってやるんだから、覚悟しときなさい!!!」

その時。

「おーーーい!」

平和そうな声が、どこからともなく聞こえてきて。

見ると、遥か遠くに、大きく手を振っている水月の姿があった。

私も両手を振って答える。

「おっつかれー!これからどーするー!?」

「そうだなー!もう遅いし、俺そろそろ帰るよ!先輩によろしくって伝えて…」

「あー待って待って水月!これからみんなでクリスマスパーティーしようよ、睦月んちで!!!」

私の咄嗟の思いつきに、睦月は不意打ちを食らった様子で…なにそれ、と顔を強ばらせる。

「俺、なんにも聞いてないぞ?ていうか、今夜は文と二人っきりで…」

「いいなーそれ!すっげーいい!!!」

事情を知らない水月は、嬉しそうに手を振って叫んだ。

「わかった、俺ちょっと親に電話するわー!」

「おっけー!私お姉ちゃん拾ってくからさぁ、睦月と先行っててー!」

「…ちょっと」

「りょーかいりょーかい!睦月、よろしくなー!」

私達の勢いに負けた睦月は、がくりとうな垂れ…か細い声で言う。

「わかったよ…うちで良ければ…おいで」

見上げると、都会の夜にしては珍しい…綺麗な星空。

そして。

「…あーーー!!!」

「どうした不知火!?」

「流れ星よ、流れ星!ほら、また!!!」

「え!?どこどこ!?」

「ほらほら、あそこ!もー睦月、そっちじゃなくて、こっちだってば!ほら!!!」

今年も、慌ただしいクリスマスになっちゃったけど…

来年は、もっと楽しいクリスマスを、みんなで迎えられますように。

流れる星を見ていたら。

来年も今年以上にいい一年になりそうな…素敵な予感がした。

文が警察に保護されて色々手間どったので、次は2時間後です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ