ゲームフェイズ1:『16』塔1
……と、やっている間に他のメンバーも帰ってきた。
帰ってきたのは、デュオとタヌキと七香のチームである。
この3人は色々と話してきたらしく、すっきりした顔をしており……更に、タヌキはすっかりゴージャスな見た目になって帰ってきた!
そう!この3人が入ったのは、宝物がいっぱいのあの部屋だったらしい!
……タヌキが謎収納にたっぷりと宝物を詰め込み、その上で、デュオと七香は一切ものを持たずに出てきた、ということらしい。尚、タヌキを王冠やシルクのスカーフ、それに小さな錫杖などでデコったのは、七香であったらしい。なんかかわいい王様タヌキになったタヌキを見て、七香はどことなく満足気であった!
一方、ヤエと五右衛門はもうちょっと時間がかかった。多分、2人で話すことが沢山あったのだろう。
……少なくとも、さっき、海斗がむつとヤエと五右衛門と一緒のチームだった時、海斗は五右衛門かヤエに、色々と教えているはずなのだ。だったら、2人が話すことは沢山あるはずで……実際、エレベーターが到着して2人が出てきた時、2人とも、やはりすっきりした顔をしていた。
ヤエは途中で泣いちゃったのか、目が赤かったが……むつがそれに気づいて『ヤエちゃん大丈夫?』と尋ねると、ヤエは『うん。大丈夫。五右衛門さんに色々、話し聞いてもらって、それで、勝手に泣いちゃっただけ』と、笑顔で答えていた。
ということは……やはり、ヤエと五右衛門の2人は、上手くいったらしい。バカはこれを嬉しく思うと同時に……『本当なら、海斗が上手くやってたんだけどなあ……』と、ちょっぴり寂しくも思うのだった。
さて。
そうして全員が揃ったところで……。
「……えーと、じゃあ、チーム分けだけれど……樺島君がいる以上、正直、組みたい人と入りたい部屋だけ考えれば、後は如何様にもできちゃうんだよね。あははは……」
デュオが苦笑して、そう言った。
……そう!バカが腕輪を好き放題引き千切れる以上、チーム分けは本当に好き勝手やってよいのである!
「……入りたい部屋、ある?或いは、組みたい人が居れば、それで決めようと思うけど……」
「あっ、だったらアタシ、ヤエちゃんと一緒がいいわ!」
デュオの提案に、早速挙手したのは五右衛門である。
「そっか。2人とも、気が合うならそうしようか」
「あー……いや、気が合う、ってワケじゃなくて……」
デュオが笑顔で返せば、五右衛門はなんとも気まずげに言葉を濁し……しかし。
「はい。あの、私、五右衛門さんに話、聞いてもらえて、嬉しかった、から……五右衛門さんと一緒がいいです」
ヤエが、きゅ、と五右衛門のシャツの袖をつまんだ。五右衛門は目を丸くしていたが、ヤエは笑顔である!それを見て、バカは『仲良くなれてよかった!』とにこにこした!
「じゃあ、五右衛門さんとヤエさんは同じチームで、ってことにしようか。他は……」
「あっ!じゃあ私、七香さんと一緒がいいです!」
続いて名乗りを上げたのはタヌキであった。タヌキは堂々と、七香に抱きかかえられたまま挙手をした。
「文学とピアノの話ができる人は!貴重なので!あと七香さん、撫でるの上手なので!」
「……まあ、今も抱っこされてるもんねえ」
「はい!七香さん、抱っこも上手!」
……タヌキが『最高!』と大喜びな一方、七香はちょっと複雑そうな顔をしていた。だが、デュオが『じゃあ七香さんとタヌキは同じチームでいいかな』と確認したら、『ええ』と返事をしていたため……多分、七香もタヌキのことは嫌ではないのだろう!
「他に希望はある?」
そうして、デュオがそう呼びかけると……次に手を挙げたのは、むつであった。
だが。
「あー……できれば、四郎さんじゃない人と組みたいな……。その、ちょっと怖いから……」
むつは、そんなことを言い出したのであった!まあ、ご尤もである!
……四郎もそれは分かっているのか、舌打ちしつつ、デュオが確認してきた時には、『そうしてやってくれ』とあっさり頷いた。むつはこれに、ちょっと意外そうな顔をしていたが……。
「分かった。まあ、そういうことなら……むつさんは俺と組もうか。それで、残り3人をそれぞれ振り分けて3人組を3つにしよう」
「あ、うん。よろしくね、デュオさん」
むつは、ほっとした顔でデュオと握手していた。デュオも笑ってむつと握手して……それから、『残り3人』であるところのバカと海斗と四郎を見つめて……。
「……えーと、実は俺、戦うのに全く使えない異能なんだよね。だから、チームに入れるなら樺島君かな、と思うんだけど……いいかな」
「俺はいいぞ!よろしくな!」
「えっ……あー、うん、そう、だよね。うん……」
バカは元気にお返事したが、むつはちょっと、渋った。
だが、ここでむつがバカを拒否することは、できない。何故ならば海斗もまた、戦えない人だからだ!むつの氷の異能は、デュオには隠しておきたいのだろうし……となると、バカを受け入れるしかないのである!
「分かった!よろしくね、樺島さん!」
「うん!よろしく!よろしく!」
……そうして、バカは無事、むつと同じチームになれた!バカは、『むつにいっぱい異能使ってもらうぞ!』と意気込んだ!
……結局、チームは『バカ、デュオ、むつ』、『五右衛門、ヤエ、海斗』、『タヌキ、七香、四郎』の3チームになった。
四郎がチーム入りすることに七香はちょっと眉を顰めていたが、バカが『もう服、着てるんだからいいだろぉ!』と弁護したところ、バカにも眉を顰めるようになってしまった!バカ、弁護失敗!
とはいえ、タヌキが『四郎さん!四郎さん!そのボディはどうやって鍛え上げたんですか!?ボディビルの大会とか出てたんですか!?』と興味津々に四郎に寄っていってしまうので、七香としても、四郎を受け入れざるを得なくなってしまったらしい。タヌキは皆の潤滑剤……或いは接着剤である!
また、海斗については、ヤエと五右衛門に快く受け入れられていた。『海斗さんのおかげで五右衛門さんと話せた!』『なんかよくわかんないけどありがとね!』ということらしい。バカは海斗に小さくガッツポーズしてみせたところ、海斗もちょっと笑って、小さくガッツポーズをして見せてくれた!
「さーて……じゃ、誰がどこ入るのか決めるかぁ……」
そうしてチームが決まったら、次は、どのチームがどの部屋に入るのかの相談である。
……バカ式腕輪破壊術があれば、誰がどこの部屋に入っても大丈夫なのである!便利!
「樺島君が居るから、俺達のチームは危険そうなところに入りたいね。うーん……じゃあ、『塔』とかどうかな。16番だけど」
「おう!俺は何でもいいぞ!むつも、それで大丈夫か!?」
「え?うーん……まあ、仕方ないかぁ……。うん、よろしくね、樺島さん、デュオさん」
ということで、デュオの一声によって、バカ達が入る部屋はさっさと決まった!やったね!
「それから、四郎さんと七香さんが居るから、そっちも戦う部屋でも問題無さそうだね。頭脳戦でも、七香さんが居れば大丈夫だろうし……『正義』はどうだろう。何か、裁かれそうな気がするし。……これは『11』だけど」
「はい!私達はじゃあ、それで!パワー担当の四郎さん、頭脳とパワー担当の七香さん、そして賑やかし担当の!私ッ!3人で頑張ってきますからね!」
……続いて、タヌキのちょっとばかり拗ねた一声によって、こちらも無事、部屋が決まった。バカは、『タヌキの賑やかしは大事なんだぞ』と慰めておいた。
「えーと、じゃあアタシ達は……これ、残った腕輪の数字で決めた方がいいわよねぇ?」
「そうだね。となると……46-16-11だから、残りは19か」
「ん!?46ってどこから出てきたんだ!?」
「僕らの腕輪の数字の合計だよ」
バカは『よく分かんねえけどデュオはすごい!』ということだけ理解した。幸せなバカである。
「19、は……『太陽』だね。まあ、他と比べると平和そうに思えるけど、どうかな」
デュオの言葉を聞いて、バカはちょっと思い出す。太陽、というと……確か、ヒマワリいっぱいの部屋だ!成程、あの部屋は確かに、ヤエが入るのにピッタリである!
「ええ。アタシは構わないわよ。ヤエちゃんと海斗も、いいかしらぁ?」
「私は大丈夫です」
「僕も……おい、樺島。お前、何をそんなにニコニコしているんだ……?」
海斗はちょっと不思議そうにバカを見ていたが、バカは、『なんでもない!』とにこにこするばかりであった。海斗は、部屋に入ってからヒマワリ畑でびっくりすればよいのだ!
……ということで。
「じゃあ、行こうか」
「うん。よろしくね!」
デュオとむつと一緒に、バカは『16』の部屋目指して、七香の個室からエレベーターを起動させた。
……『塔』というと、海斗がものすごく走った、と教えてくれた部屋だった気がするが、果たして……。
エレベーターが無事、『16』の部屋の前に到着したところで……バカが先頭になって、ドアを開ける。
すると。
「……本当に、塔だねえ」
「ああー……ストレートに『塔』かぁ。参ったな。ははは……」
……部屋の中はとんでもなく広くて高い空間であった。天井は見当たらず、青空に見えるものが上空に広がっているばかりである。これは『太陽』や『恋人』や『星』の部屋も同様であったし、前回デスゲームの鍋パ部屋もこんなかんじだったので、バカは特に驚かない。
だが……その空間のど真ん中に、でっかく聳える塔がある。バカは、ざっと高さの見当をつけてみたが……恐らく、10階建てのビルぐらいの高さであろう。
「……こういうことを言うのもアレなんだけどね」
更に、そんな塔を見上げて、デュオは……言った。
「多分、この塔、崩れると思うよ」
「……ええっ」
極めて不吉である!大変だ!
だが、バカは考える。
……塔が崩れたとして、それって何か問題だろうか、と。
元々崩れる設計になっているのなら……仕様通りなら、何も問題ないのではないだろうか、と!
「えーと……多分、塔のてっぺんにカードがあるんだよなあ?」
「うーん……まあ、多分、そうなんじゃないかな。それで、頂上に到着してカードを取得した瞬間に塔が崩れ始める、っていう具合だと思う」
「そっか。じゃあ俺、ちょっと行ってくるな!」
バカはそう言うと……『どすどすどすどすどす』と、塔の外壁を走って上り始めた!
「……えっ」
「あー……うん。成程ね。樺島君はこういうかんじか。はははは……」
むつとデュオが見送る中、バカは元気に、塔を上る!
よって、塔の内部に折角用意されていたトラップやパズルといったものは、全て無駄になったのである!




